すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【ロシアW杯最終予選】スタイルをめぐりチームに不協和音が?

2017-06-16 07:14:44 | サッカー日本代表
選手と監督の考えが一致しない?

 今回の召集で、練習中に監督のやり方と選手の考えに「食い違いが表面化した」と報道されていた。引き分けに終わったイラク戦後には、本田がそれを補足するような発言をしている。

 想像するに、たぶん「アレ」だろう。

 ハリルはロングフィードを有効に生かしタテに速い攻めをしたい。一方、選手は放り込みでなくパスをつなぎたいーー。まあ、例のやつだ。特にタメを作るのを好みバックパスを厭わない本田あたりは、ハリルの方針と真逆なのだ。

 本田は、マイボールになったら何度でもバックパスを繰り返し後ろから細かく組み立て直す「バルセロナ教」の遅攻の信者だ。彼はそのスタイルを変えるつもりはない。タテに速いショートカウンターを志向するハリルと考えが合うはずがない。

 そして本田の危うさは、そんな自分の考えるサッカーをチームメイトに説き、布教しているフシがあることだ。特に自身が代表でレギュラーをつかみかけている今だけに、彼の口が滑らかになりすぎる可能性は高い。そんな感じで選手と監督の認識のちがいがさざ波のように大きくなれば、チームは空中分解する可能性すらある。

マニュアル思考の日本人は「指示を待つ」

 日本人はマジメな上にマニュアル思考だから、監督に言われたことをそのままやろうとする。自分の頭で考えず、試合の状況がどうあれ愚直なほどに監督の指示一辺倒になる。自分の中で咀嚼し、状況に応じて別の対応をするということが苦手だ。「指示を守らなければ外される」というプレッシャーもそれを後押しする。

 そもそもハリルはこれまで、口を酸っぱくして言い聞かせても無視して指示を聞かないような「個の強い」人々がいる国で監督を務めてきた。そんな彼らに言うことを聞かせるには、自然と口調も強くなり、指示を守るまで同じことを何度も言うハメになる。

 言葉は悪いが「ムチを入れること」が必要だ。

 だがいろんな意味で個が弱く、むしろ指示待ちになる日本人にそこまで強くやる必要はない。なのにハリルは過去の経験で身についた指導法をそのまま実践している。で、その迫力に押されて選手が機械的に指示を守りすぎる状況が生まれる。これはハリルの監督就任当初から起きていた問題だ。

状況に応じてやり方を変えろ

 要はバランスの問題なのだ。

 本田の考えるサッカー一辺倒だと、必ず遅攻になる。ボールを奪えばいったんバックパスしてひと休み。味方の上りと、敵が守備の態勢を立て直すのを十分に待ってやってから攻める「ザックジャパン現象」が起きてしまう。

 だがそのスタイルが世界に通用しないことは、ブラジルW杯ですでに結論が出た。で、横や後ろにボールをつなぎ時間を作るのでなく、逆にハリルが主張する「タテへの速さが必要だ」という話になる。

 だがハリルの言うことばかり聞いていると、今度は状況がどうあれすぐタテに長いボールを放り込む、性急でアバウトなフィジカル勝負のサッカーになる。こうなるとむやみに競り合いが続いて体力が消耗し、タメがなく絶えずボールに追われてスタミナが削られる……。

 てなぐあいで事態は限りなく無限ループする。要はそのときの敵味方の配置など「状況に応じて対応を使い分ける」ことが必要なのだ。

オーストラリア戦はつないで攻めろ

 例えば10回、マイボールになったら「10回ともロングボールを入れる」などというのはおかしい。敵の守備隊形が完全に整っているのに、そこへボールを放り込んでも弾き返されるだけだ。

 だが逆に「10回すべてショートパスで攻める」のも不合理である。せっかく敵の陣形が崩れているのに、速く攻めずに時間を使うのでは相手に立て直しの余裕をあたえてしまう。

 特に相手チームが前がかりになり、意図的にバランスを崩して攻めてきたときボールを奪えたら? そのときは素早く攻守を切り替え(ポジティブ・トランジション)、敵の体勢が整わないうちにタテに速いショートカウンターをかけるのが有効になる。こんなふうに「そのときの状況はどうなのか?」を考え、状況に合わせたベストなプレイの選択が必要だ。

 例えば次節のオーストラリア戦などは、ハリルが考えるタテにロングボールを入れて競り合うような戦い方をすれば絶対に日本が不利だ。

 オーストラリアはそういうイングランド・スタイルが得意な上、そのやり方では彼らの強靭なフィジカルが生きる。逆に本田が考えるようなていねいにつなぐサッカーをベースにし、もしスキを見つけたら状況に応じてタテに速いショートカウンターを織り交ぜる、という戦い方がベストだ。

 サッカーはとにかくシチューション次第。ハリルも本田も、そのことを肝に銘じてほしい。
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