ポゼッションは高いがシュートに行けない
ボール保持率が高く、パスはつながるが点が取れない――。セルビア戦、ベラルーシ戦と続いたヨーロッパ遠征で、ザック率いるサッカー日本代表は連敗した。特にきのうのベラルーシ戦で目についたのは、まったく同じリズム、同じパターンで攻めてしまっている点だった。
ザック・ジャパンはグラウンダーのボールを丁寧に転がし、低いパスをつないで戦うチームだ。すると中盤と最前線で振り向かせてもらえない(前を向けない)守備をされているときには、つなぐ→つなぐ→つなぐ→つなぐ→つなぐ→シュートみたいなリズムになる。背後にマークに張り付かれた味方にボールを当てては戻し、当てては戻し、を繰り返すことになるからだ。そしてベラルーシ戦では、チャレンジしないこの同じリズムの攻めをずっと続けていた。
敵が同じリズムで動いてくれると、相手は非常に守備しやすい。対戦相手の同じ動きに目が慣れ、「まだチャレンジに来ないな」とか「アーリークロスは使わないぞ」などとカンタンに予測がきくからだ。敵が要求される動体視力も同じで済むし、まったく同じリズムで機械的に対応していればいい。
わかりやすい例を考えてみよう。まずきのうの日本のリズムを最初に再掲し、次にそのリズムを変えた攻撃例をあげてみる。
【同じリズム】 つなぐ→つなぐ→つなぐ→つなぐ→つなぐ→シュート
【例1】 つなぐ→アーリークロス→こぼれたセカンドボールをシュート→敵に当たってコーナーキック
【例2】 つなぐ→ドリブル突破→敵の足に当たりボールがイーブンに→こぼれを拾ってまたつなぐ
音楽でいえば、最上段の【同じリズム】の場合は敵も「タン、タン、タン、タン」と同じ四分音符を刻んでいるだけでいい。だが【例1】や【例2】が途中で混ざると途端に動きが複雑になり、敵はそのつど臨機応変な対応を求められる。当然、敵の肉体的・精神的な疲労度も高まり、そのうちどこかに必ず 「穴」 があく。
90%確実につながる安全なパスを足元に入れ続けるだけでなく、ときには成功率50%の「チャレンジする博打パス」を仕掛けること。もちろん第三の動きを入れながら。
ザック・ジャパンに必要なのは、このチェンジ・オブ・リズムである。
これは試合の中盤も含めての話だが、それでなくとも残り時間と点差を考えれば、少なくともハーフナーが入った後半41分の時点では身長のある彼にアーリークロスを入れまくる、とか、トップに楔を打ち続ける、みたいな攻めがあっていい。なのに相変わらず日本はバックラインで優雅にパスを回し、味方GKにボールを戻したりしている。
残り時間が5分や6分しかないんだから、あそこはブラジル代表でも強引にトップへロングボールを入れるぞ。というかハーフナーが入ったと同時に、なぜそこが自動的に意思統一できないのかよくわからない。
日本はオフト・ジャパンの頃とくらべれば、もちろん強くなった。だがアウェイでセルビアやベラルーシのようなヨーロッパの2.5線級とやり、ラクに勝てるほどの力はまだない。これについては、8年前に書いた自分の記事を以下に再掲しておこう。
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ボール保持率が高く、パスはつながるが点が取れない――。セルビア戦、ベラルーシ戦と続いたヨーロッパ遠征で、ザック率いるサッカー日本代表は連敗した。特にきのうのベラルーシ戦で目についたのは、まったく同じリズム、同じパターンで攻めてしまっている点だった。
ザック・ジャパンはグラウンダーのボールを丁寧に転がし、低いパスをつないで戦うチームだ。すると中盤と最前線で振り向かせてもらえない(前を向けない)守備をされているときには、つなぐ→つなぐ→つなぐ→つなぐ→つなぐ→シュートみたいなリズムになる。背後にマークに張り付かれた味方にボールを当てては戻し、当てては戻し、を繰り返すことになるからだ。そしてベラルーシ戦では、チャレンジしないこの同じリズムの攻めをずっと続けていた。
敵が同じリズムで動いてくれると、相手は非常に守備しやすい。対戦相手の同じ動きに目が慣れ、「まだチャレンジに来ないな」とか「アーリークロスは使わないぞ」などとカンタンに予測がきくからだ。敵が要求される動体視力も同じで済むし、まったく同じリズムで機械的に対応していればいい。
わかりやすい例を考えてみよう。まずきのうの日本のリズムを最初に再掲し、次にそのリズムを変えた攻撃例をあげてみる。
【同じリズム】 つなぐ→つなぐ→つなぐ→つなぐ→つなぐ→シュート
【例1】 つなぐ→アーリークロス→こぼれたセカンドボールをシュート→敵に当たってコーナーキック
【例2】 つなぐ→ドリブル突破→敵の足に当たりボールがイーブンに→こぼれを拾ってまたつなぐ
音楽でいえば、最上段の【同じリズム】の場合は敵も「タン、タン、タン、タン」と同じ四分音符を刻んでいるだけでいい。だが【例1】や【例2】が途中で混ざると途端に動きが複雑になり、敵はそのつど臨機応変な対応を求められる。当然、敵の肉体的・精神的な疲労度も高まり、そのうちどこかに必ず 「穴」 があく。
90%確実につながる安全なパスを足元に入れ続けるだけでなく、ときには成功率50%の「チャレンジする博打パス」を仕掛けること。もちろん第三の動きを入れながら。
ザック・ジャパンに必要なのは、このチェンジ・オブ・リズムである。
これは試合の中盤も含めての話だが、それでなくとも残り時間と点差を考えれば、少なくともハーフナーが入った後半41分の時点では身長のある彼にアーリークロスを入れまくる、とか、トップに楔を打ち続ける、みたいな攻めがあっていい。なのに相変わらず日本はバックラインで優雅にパスを回し、味方GKにボールを戻したりしている。
残り時間が5分や6分しかないんだから、あそこはブラジル代表でも強引にトップへロングボールを入れるぞ。というかハーフナーが入ったと同時に、なぜそこが自動的に意思統一できないのかよくわからない。
日本はオフト・ジャパンの頃とくらべれば、もちろん強くなった。だがアウェイでセルビアやベラルーシのようなヨーロッパの2.5線級とやり、ラクに勝てるほどの力はまだない。これについては、8年前に書いた自分の記事を以下に再掲しておこう。
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日本のサッカー界は関係者、サポーターも含めて世界における日本の立ち位置を再確認すべきだ。以前、「次の目標はW杯でベスト8だ」なんて言ってるおめでたい人がたくさんいて「おいおい」と思ったが、とてもそんなレベルじゃないぞ。
大切なのはくり返しW杯に出続けること。そして「決勝トーナメントの常連」になることだ。
決勝トーナメントに進むのと、そこからひとつ勝つのとじゃ、えらいちがいだよ。その狭間には深くて険しい谷がある。日本はとてもそこまでいってない。ちょっと前までトラップもロクにできない選手がゴロゴロいたんだからさ、日本代表には。
とにかくW杯の決勝トーナメントに足跡を刻み続ける。W杯でいいサッカーを見せ続け、世界の脳裏に「日本」を焼きつける。そうすればサッカー・ネイションとの人的交流や、クラブ単位でのつながりも定着するだろう。これって日本サッカーのレベルアップにとっては大きな財産だ。(中略)
そのためには歴史の蓄積が必要だ。たとえばチェコなんて今でこそ世界の強豪ってことになってるが、世界レベルでは2流国、3流国の時代が長かった。チェコは急に強くなったわけじゃない。ヨーロッパの強国に囲まれて、虐げ続けられた歴史がある。
日本は決勝トーナメントで何度も叩き潰されるだろう。だけどサッカーには負けなきゃわかんないことって多い。だからタメになるんだ。決勝トーナメントで向こう50年間、負け続ける。そのときやっと我が代表は、「次へのパスポート」を手にするのだ。
■2005年5月24日【キリンカップ】けたぐりで転ぶガラスの巨人 ~日本0-1ペルー