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Saturday, September 30, 2000

Mi primer viaje 初めての旅行 [第1章] 準備~リスボン

大昔の卒業旅行の話。90年代前半の話。

初めての一人旅、初めての海外旅行、初めての飛行機。

私にとっては大胆な旅行計画だったのです。 というのも、私は飛行機が嫌いだったのでね。ジェットコースターにさえ乗らない主義だから。「ジェットコースターの事故なんて滅多に聞かないじゃないか」と思ってみても、また、他人からそのように言い聞かされても、「いや、私が乗った時に限って落ちるのだ、事故は起こるのだ、きっとそうだ」と、心底嫌ってた。飛行機に対する思いも同じ。乗りたくなかった。

だけど、私よりも1年早く就職しちゃっていた友人に「Reineちゃん、今しか行けないよ、就職しちゃったらまとまった休みなんて取れないよ」とはっきりと言われ、ようやく決意しました。「ポルトガルを1ヶ月かけてまわりましょう」。

緊張でぷるぷるしながら準備を進めました。


行程
・出発は2月21日の21:55くらいの、時刻は忘れたがとにかくエールフランス最終便。
・パリ着が2月22日早朝、ドゴール空港で仮眠して乗り換え
・リスボン着が2月22日朝10時くらい  

だったと思う。

ところで、ちょうど同時期に大学同期M子さんと一学年下のK子さんという二人組はスペイン旅行を計画していた。それで私の出発前に彼女達から電話があった:
「私達ちょうどその頃スペインを周ってますから、Reineさん、あなた、どっかで落ち合いましょう / そうだ、Reineさん、あなた、セビーリャまで来てくださいよ / 時間的には、そうねぇ……うまく合わせるとしたら……2月24日だね / その頃なら私達もスペインの北をまわってそろそろ南部に入ってる頃だと思うから」

私は「まぁ、22日朝にリスボンに着いて、24日夕方セビーリャ入りなら……やってやれないこともないでしょう」と思って承知した。


待ち合わせ確認
・24日の17時から19時
・セビーリャ、黄金の塔の前
・とにかくお二人はその2時間はその近辺で私の到着を待っていてください


スペイン語事情
・K子さんはスペ語の授業を取っていたからある程度わかっていただろう。
・M子さんはお父さんが南米勤務なのでわかっていただろう。
・私は英語は忘れたし、ポルトガル語もおろそかだ。ポルトガル語なんてブラジルの歌しか知らない。スペイン語は全く知らない。本を開いたこともなかった。


旅行経験
・2人は旅なれていた
・私は初めての海外
・というか初めての飛行機
・本州から出たのっていったら、初島に行ったとき以来?


さて、2月22日、現地時間の朝10時に私はリスボンになんとか着きました。

そこで全くポルトガル語が聞き取れないことに気づいて蒼ざめた。タクシーの運転手さんの言っていることがわからない。何語??? 日本から予約しておいたホテルに着いたが、今度はボーイの言ってることがわからない。何語??? 

呆然としていると彼はゆっくりと言い直してくれた。「Is … it … cold?」と綺麗な英語で発音していたのだった。ブルブルッなんて唇を震わせながら、「おーさむ!」と身を縮めるジェスチャーまで混ぜて。こっちが「ポルトガル語で来る」と思って身構えてんのに英語なんかでしゃべってくれるから……。

それにしても「Is it cold?」が聞き取れないとは! 部屋を出て行く時のボーイさんの、気の毒な人を正視しづらいみたいな、憐憫の情にあふれたあの目つきは今でも忘れない。


お腹が空いたのでホテルを出たが、何も買えない。いくらなのかを尋ねることができたとしても返答が聞き取れない。パン屋で小銭入れを見つめて為すすべもなく突っ立っていると、隣にいたおじさんが「これとこれね」と言いながら硬貨をつまんで選んでくれた。それでやっとパンは買えた。

私はとんでもないことに身を投じてしまったことを悔いた。
「こんなことなら卒業旅行なんて思いつかなければよかった / あと1ヶ月なんて私はきっと死むー、死んでしまう / FIXチケットだけど、もう帰国してまえ」と。 私はホテルに小走りに戻るや、毛布をかぶってふて寝をしていた。泣きベソです。泣き寝入りとはこのことか。

そのとき枕元の電話が鳴った。 「……は、はろぉ?」とビクビク出ると、M子・K子だった。


「Reineちゃん? 着いた?」

―――……着いたよ…… (かなり弱々しく)

(すごく元気) 「あのさぁ、私達さぁ、1日早くセビーリャに着いちゃったのね。もう今日着いちゃったのぉ。 それでね、Reineちゃんにも1日早く来て欲しいのよ」

―――1日早く…って…………あしっ、明日ってことっ?

(快活に) 「そぉっ!」

―――あた、あたしさぁ…すっごく弱気なんだけど…。(かぼそく)……もう、街の人何言ってるかわかんないしさぁ、英語もわかんないしさぁ…。……行けるのかなぁ…? 行けるのかなぁ? 怖いよ、無理だよぉ…… (消え入るように涙声で)(これがいけなかったのだ)……まぁ、頑張ってはみるつもりだけど…

「あのねぇ、私達が泊まってるのはねぇ、サンタ・マリア・ラ・ブランカ通りだから。 んとねぇ、カテドラルのそばっ」

―――宿の名前は?

(電話口でゴニョゴニョしゃべってる) 「わかんないや」

―――わかんないって、ちょっとっ

「ごめーん、宿のカード持ってくるの忘れちゃった」

―――電話番号はっ?

「知らない、カード持ってきてないもん」

―――あの、あのっ、それじゃぁ、宿の場所とかなんか、えっと、なんk…

「あー、ごめんっ、小銭なくなっちゃうや。切るね!」

―――ちょ、ちょっと待って、待ってっ! (悲痛な叫び)

「サンタ・マリア・ラ・ブランカ通りだからっ。じゃあねーん」

―――もしもしっ、もしもしっ

……(ツーツーツー)…… (第2章へつづく)


卒業旅行顛末
1章: リスボン着 
2章: セビーリャを目指す
2章の補足 位置関係
3章: セビーリャ 朝~昼
4章: セビーリャ 夕~夜
5章: 余談
6章: セビーリャを去る
7章: ポルトガルへ

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