ただ単純に、脳が通常モードでは満足できない欠陥品として産まれてしまっただけだ。
だからこそ、普通の状況を退屈という毒物扱いし、その毒を中和するために自己放尿レベルの行動へと手を伸ばす。
これがサイコの初期症状だ。
刺激が足りない。だから倫理を破る。倫理を破ると、刺激が少し入る。
すると脳は「お、これが正解か?」と自己放尿する。
恐怖も罪悪感もリスク感覚も、本来は行動を止めるために存在しているのに、サイコの脳内回路ではそれが逆方向に接続されている。
危険だからやめるではなく、危険だからこそやる価値があると勘違いする。
まるで電気配線がショートした家電みたいに、本来止まるべき場面でアクセルを踏むという壊れ方をしている。
しかもその壊れ方は、自己放尿みたいに本人にとっては妙に快感を伴う。これが最悪だ。
さらにサイコが厄介なのは、この刺激欲求が際限なく強度を要求してくる点にある。
最初の刺激が10なら、次は15、さらに20と、エスカレートしていく。
サイコ本人がそろそろやばいかなと感じるようなラインは存在しない。
なぜなら、そのやばさこそが刺激になり、自己放尿として処理されてしまうからだ。
普通の人間なら恐怖の信号として回避行動に繋がるものが、サイコの内部では報酬信号に置き換わっている。