せっかく入った新人高校3年生がダブルワークの成人男性(33歳)に潰されて飛んだ挙句、良かれと思って若者を潰した当の成人男性(33歳)は仕事だか家庭だかの事情で4月まで出勤できないということで、とうぶんは穴埋めのために店長が夕方シフトに入るっぽい。
そうなるとベテランのコンビニ労働者で派遣から引き抜かれてパートになったNさんのフラストレーションがより一層溜まりそうだなぁと思う。Nさんは夕方の5時から7時の間、フライヤー什器の中に揚げたての商品を充実させたいという欲求がめちゃめちゃ高いのだ。
この間も店長が5時前にフライヤーは〆でって言ったのでNさんが悶々としていた。私はNさんから長大な愚痴を聞かされた。この店は去年オーナーが交代するまでの長きにわたって「揚げ物が固い」という悪評が立ちまくっていて、それがやっと改善の兆しが見えて来たのに近頃店長がケチな事を言うせいで元の木阿弥になってしまいそうだと。
一応、店長には店長の考えがあるらしい。揚げ物については、店長も当店は立地がそこそこいいので什器の中に商品があれば売れるという事は分かっている。なのでセール期間中はフライヤーを遅くまで稼働するよう言ってくるし、パート・アルバイトが自発的に沢山調理するのを止めないんだけど。しかし何もない日には渋りがちになる。
理由は主に二つあって、一つは昼の部の損失との釣り合い問題で、もう一つは夜勤の人手不足の影響だ。
前者については、早朝から昼にかけての責任者であるオーナーが強権を発動し大量の揚げ物を揚げさせるものの売れ残って大量の廃棄が出るということ。当店は立地がいいので揚げ物が売れるとしつつ、昼は客の入り数自体がそんなに多くないし前オーナー時代と比べてもあまり増えていない。それで賞味期限の短い揚げ物で大きな損失を出してしまうので、夕方から商品の数を絞ってバランスをとっているらしい。
後者については、夕方から夜にかけてでフライヤーとフライヤー什器を掃除するので人手不足極まっている今、遅くまでフライヤーを稼働させると夕勤夜勤の仕事に差し支えがありまくるので仕方ないのだ。
ということを店長はNさんにも説明すればいいのにしないので、Nさんは一人でもんもんとしてしまうのだ。若輩者の私から説明されても気分悪いみたいだし。だが私は、Nさんが話せば分かる人だと知っているので、そうはいっても気は悪くされてるだろうなと思いつつNさんにあえて話している。
十年くらい前だったらそんな事を言えばただただ偉そうな奴だと嫌われるだけだったけれど、最近は昔ほどは嫌がられない。Nさん個人がいい人であるというだけでもなく、他の人と話しても怒らず聴いてもらえる事が増えた。そういう時歳を取るのも悪くないもんだなぁと思う。
……それにしても、Nさんが謎に私に一目置いてるっぽいのは何故なんだろうかと思ったら、私の居ない午前中にオーナーが私の事を夕勤に必要不可欠の人だとかおだてているのだと、ある時Nさんが言っていた。ゆってオーナー、私と同じ時間にシフトに入った事がないから粗も何も見えないだけじゃないか。
私は、勤続年数が長いだけの、バイトの癖に曜日時間固定の面倒臭い奴で、店への貢献度だったら明後日で退職する高専7年生や去年辞めた元バイト仲間のAさんに遠く及ばない。夕勤で歴が長いのが私だけになってしまったというのは地味に危機的状況の様な気がするが。お客様達にしたって、何でよりによってコイツが残るのか? と思うか、私が6年以上も勤めていることにすら気づかず知らない人だけになってしまったなぁーと思っていそうだよ。
ともあれ、もはや自分の勤務時間に1時間だけシフトのかぶるNさん以外に先輩も頼れる人も一人もいなくなり、新人が入れば私が教えなきゃいけない立場になってしまったことはどうにもならない。勤続年数ばかり嵩んで能力がないとか嘆いていても仕方ないのだ。
コンビニバイトごときに本気になり過ぎ 仕事内容に対して給料低いし 別行けよ別