区役所を出るときに、ロビーにある掲示板の「ゆずります」と「ゆずってください」の貼り紙が目に付いた。パソコン関連の品物を探していると、プリンタをゆずるとの掲示が写真を添えて在った。記入用紙の大きさは手のひら大である。連絡先は最初から公開されており、素性を疑うものはないように思われた。脳裏に「ゆずられ パソコン」が貼り付いて、インターネットに潜り込むことが不健全であるかのように思われた。
公の通り道に貼られた掲示を見るともなしに見るのか、それとも見ようとして見るのか、それさえも分からない人間が文字でしか探し出せない掲示を見ることなど至難の業と思われた。簡単なことは簡単にインターネットに移し替えることはできない。複雑さを装ったものがバーチャルな存在としてある世界は疎ましいものでもある。
こうして貼り続けられる限り、掲示板は存続するであろう。たとえそれが人間生活のミスマッチから来る行いであっても。
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