| Home |
2025.05.22
5年ぶりの読書猿の新刊が出ます→『ゼロからの読書教室』5/23刊
5年ぶりに新しい本が出る。
200ページと少し、厚さ17ミリメートル、読書猿初の「薄い」本である。

本書は、2022年4月から2年間、NHKの『基礎英語レベル1』で連載した、本についての対話篇をまとめたものである。
これが、これまで書いてきた単著、3冊の『大全』との大きな違いだ。
手元においておくと、どこまでも文章を修正し続けて、いつまでも書き終わらない悪癖があることは自覚している。
毎月書いたものを手放さなくてはならない連載は、この悪癖を封じるのに効果的だった。おかげで、こうして一冊の本が世に現れることができた。
もう一つの違いは、これまでに書いた3冊の『大全』はどれも、決めたテーマが演繹的にすべてが決めていった。
「そのテーマなら何と何を書かなくてはならないか」が決まり、どんな順序であるべきかが決まり、それがそのまま構成になり、目次になった。次に、それぞれの項目が何を備えていなくてはならないかが決まり、あとは、ひたすら完成させていくことになる。つまり、すべてを自分で設計して、自ら施工した感じである。
今回は本は違う。
連載1回の分量は2000文字くらい。よく書きたいことがあふれて、次回へ持ち越しになった。それが毎回、次回への引きになったのだが、結局その時に一番書きたいこと、いや「書かなくてはならない」と感じたことを書いた。
なんというか、図面を引いてその通り作り上げるというより、走り抜ける感覚であった。
だから今も、書き終えた(完成させた)というより、走り終えた感慨でいっぱいである。
連載のお話があったときに、「一冊にまとめることを前提に」という話だったが、実を言うと、あまり意識せずに走りつづけた。気がつけば、2年間の連載(全24回)が終わり、書籍化の作業に取り掛かり(例によってここで遅筆癖が炸裂し)、完成させるまでに随分時間が経ってしまった。
こうして連載された記事をまとめて読み直してみると、意識していなかった本の姿が浮かび上がってきた。
自然と、本とのつき合い方を見直す話題が並ぶ第1部と、本との出会い方について具体的に扱った第2部という構成になっていた。
この本はおそらく、この通りにしかならない/それ以外の姿にすべきでない本なのだろう。
そう合点がいくまでに、また時間が必要だったけれど。
「読書猿」などという筆名だから、「読書について書いてください」というお話は何度もいただいたが、その度に固辞してきた。
理由は筆名の由来と同じ、自分が「読書家には遠く及ばない」、読書について語る資格なんかないと、ずっと思ってきたからだ。
その気持は実は今もあまり変わらない。
でもまあ、「資格」などなくても本はできてしまうのである。
必要なのは、何かの機運とか機会のようなものだ。
『大全』シリーズでは、そのテーマに必要なこと、発想法、問題解決、学び方や知識のあり方など、必要な技術や知識は、どの分野の由来しようと、誰が考えたものだろうと、すべて詰め込むことを目指した。
今回の本は、かなり違う。
読書について書くべきことは、確かにまだまだたくさん残っている。
けれど、書かなかったこと、書けなかったことたちが、この本を、もっと気楽で、もっと軽くて、もっと自由なものにしていると思う。
それこそがこの本が目指すところ、そして読み手に手渡したいものだ。
本と付き合うには「しなければならないこと」など本当はなく、「しなくてもいいこと」の方がずっと多い。
これがトップダウンに設計して知識を凝縮する『大全』という形では、書けなかったことだ。
あちこちで繰り返し話していることだが、自分自身、本を読むことが得意ではない。
読むのが遅く、すぐに疲れてしまし、飽きてしまう。
「全部読まなくてもいい」「途中でやめてもいい」「わからないことがあってもいい」というメッセージは、いつも自分を甘やかし救い出すために繰り返している「言い訳」だ。
けれど、そんな「言い訳」で開くドアがあるのなら、開けよう。
本を前に気負ってしまうすべての人に、このドアを開け放とう。
読書はきっと、本当はもっと自由であるはずだから。
この本は薄いけれども、濃縮したエッセンスやノウハウ集の類ではない。
本を開いて少し読んだら、すぐ本を閉じて、自分が本当に読みたい本を探しに行ってほしい。
『ゼロからの読書教室』は開け放たれた扉だ。
その向こうにはたくさんの出会いを待つ書物が待っている。
明日(5/23)、書店に並ぶ『ゼロからの読書教室』を、ぜひ手に取ってみていただければうれしい。
その手触りが、気持ちまで軽くしてくれることを願っている。
では、本屋さんかポストの中で、お会いしよう。
『ゼロからの読書教室』
著者:読書猿
出版社:NHK出版
発売日:2025年5月23日
定価:1760円(本体1600円+税)
判型:四六判並製(208ページ、厚さ17mm)
ISBN:978-4-14-081995-1
全国書店およびオンライン書店にて取り扱い

目次構成
第1部 本となかよくなるために──しなくてもいいこと、してもいいこと
1. 全部読まなくてもいい
2. はじめから読まなくてもいい
3. 最後まで読まなくてもいい
4. 途中から読んでもいい
5. いくつ質問してもいい
6. すべてを理解できなくてもいい
7. いろんな速さで読んでいい
8. 本の速さに合わせてもいい
9. 経験を超えてもいい
10. 小説なんて読まなくていい
11. 物語と距離をおいていい
12. 小説はなんでもありでいい
第2部 出会いたい本に出会うために──してみるといいこと、知っておくといいこと
13. いろんな本を知ろう
14. 本の海「図書館」へ行こう
15. レファレンスカウンターに尋ねよう
16. 百科事典から始めよう
17. 百科事典を使いこなそう
18. 書誌はすごい道具
19. 書誌を使ってみよう
20. 件名を使いこなそう
21. 上位概念を考えよう
22. リサーチ・ナビを活用しよう
23. 青空文庫に浸ろう
24. デジコレにもぐろう
---
「あとがき」より──読書猿からのメッセージ
こんなペンネームなのに、本を読むのは苦手だ。
小さな頃から、本を読むのはあまり好きでなかったし、得意でもなかった。何より集中が続かない。本を開いて読み始めても20分もすれば力尽きてしまう。なので、たくさん読むことは難しい。
何かのきっかけがあって苦手な読書が楽しめるようになったとか、素晴らしい方法を発見してスラスラ本が読めるようになったとか、そういう話ができればいいのだけれど、残念ながら私にはそういう幸運は起こらなかった。
この本に書いたのは、そんなささやかな工夫や気の持ち方、たとえば読書についての考え方のようなことだ。
唯一良かったのは、本を読めない理由はすべて自分の中にあって、忙しすぎるとか本屋がないとか周囲に読書家がいないせいではなかったし、「読書すると冷たい人間になる」「本なんてぜいたく品だ」などと誰かに邪魔された訳でもなかったことだ。
自分だけのことだから、必要なのは自分だけの工夫とか気持ちの持ち方であって、社会や他人のせいにしなくて済んだ。
この本に書いたのは、そんなささやかな工夫や気持ちの持ち方、例えば読書についての考え方のようなことだ。
読書は誇るべき立派な行いではない。どちらかというと後ろ暗いことだ。こっそり楽しむ楽しみだ。
そう思っておけば、誰かに無理やり読むことを勧めて、その人を読書嫌いにしなくて済む。
我々の誰もが好きな本を読んでよいのと同じように、読まないことを好きに選んだって構わない。
私やあなたが読まなくても、誰かがきっとあなたの代わりに読んでくれる。
もちろん好きでこの本や他の本を読んでくれるなら、とても嬉しい。
あなたが「好き」で書物のページをめくることで、知らない誰かに書物が届き、世界のどこかで本が生まれる。
- 関連記事
| Home |




