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2009.12.23
時々うまくいくこと/人がギャンブル、小悪魔、ジンクスから逃げられない、その理由
ハトを箱に入れて、箱の中のレバーを押すと水が出て、ハトは水を飲める。いわゆるスキナー箱。ほんとは箱の中よりも外の方に自動的に実験結果を記録する記録紙をつけることで実験の一人当たり効率がめちゃくちゃ上がったことが革新的なのだけれど、それはさておき。
ハトがレバーを押すと水が出る。するとハトがレバーを押す頻度は高まる。「レバーを押す」という行動を水というごほうび(強化子とか好子という)が強化した、という。
ハトがレバーを押すと必ず水が出る。この場合、ハトがレバーを押す頻度はどんどんと高まる。これを連続強化スケジュールという。
ハトがレバーを押すと時々水が出る。つまり部分的にしかごほうびをあげない。これを部分強化と言う。これでもハトがレバーを押す頻度は高まるけれど、連続強化のときほどじゃない。
話はここからである。
ある時点から、ハトがレバーを押すと必ず水が出る、というのをやめてしまう。
それでもしばらくはハトはレバーを押し続ける。やめた直後はやたらとレバーを押す(これを消去バーストといったりする)。けれども時間が経つと、レバーを押す頻度は減っていき、やがてはハトはもうレバーを押さなくなる。水というごほうび(強化子、好子)をとりあげたから。
もう一匹のハト、レバーを押しても毎回水が飲める訳じゃない、時々しか水が出なかった方はどうだろうか。
「時々」といっても、いろいろある。一定回数レバーを押したら水が出るやり方もあれば、10回に1回の割合で、しかしランダムに、水が出る、なんてこともある。
さて、問題は、レバーを押すと水が出るのをやめてしまった場合である。
その際にも、レバーを押す頻度は減る。けれども、連続強化のときほど急激に押す頻度が減る訳じゃない。水が出なくても、ずーと、押し続けるハトもいる。あの、一定割合でランダムに水にありつけたハトだ。
連続強化に対して部分強化、なかでも一定割合でランダムに強化されたハトが、ごほうびがなくなっても、ずーっとレバーを押す行動を止めない。
こういうことは、いろんなところである。
一番有名なのはギャンブルの例である(最近、ギャンブルは実はちがうんじゃないかという研究もある)。ギャンブルに当たることは、かなり低いが一定の割合のようでもある。ときどき当たるので、当たらない場合の方がずっと多いのに、なかなかやめられない。
次に有名なのは、いわゆる「小悪魔」だろう。相手のアプローチにとても低い確率で、しかも気まぐれにしか喜ばない。この方が、いつも喜ぶよりも、相手は離れられなくなる。いろんなところで「恋愛テク」として出て来るが、本になってるものでは『ルールズ』というのが有名。
経験だけに頼る危険がここにある。人は経験で得た「時々うまくいくこと」を、よほどのことがない限り変えたりしないだろう。「時々うまくいくこと」を疑い検証し、よりよいものに改変する(または置き換える)ことは、まず起こらないだろう。
最後にもう一度、レバーを押し続けるハトに戻そう。
今度は全くランダムに(確率さえも一定せず)レバーを押すと水が出たり出なかったりするようにした。
つまり、レバーを押すことと、水が出ることは、まるで関連がない。
ところで、実験されるたくさんのハト(何しろ何匹でも箱さえあれば記録がとれるのだ)の中には、たまたまレバーを押すと3回連続で水にありつけたものがいた。
ハトはレバーを押すことを学習する。ハトはレバーを押す。すると水が出る時もあれば出ない時もある。なにしろレバーを押すことと、水が出ることは、まるで関連がないのだ。
けれど、ハトにとっては、水が出たりでなかったりすることは、部分強化になる。
かなりの回数、レバーを押しても水が出なくても、それでもハトはレバーを押すことをやめないだろう。
研究者は、これをハトの「迷信行動」と名付けた。人間のジンクスの行動的起源がここにある。
まったく偶然の成功であっても、人はその時やっていた無意味な行為をなかなか止めようとはしないだろう。
レバーを押すことと、水が出ることは、まるで関連がなくとも、レバーを押し続けるハトのように。
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ハトがレバーを押すと必ず水が出る。この場合、ハトがレバーを押す頻度はどんどんと高まる。これを連続強化スケジュールという。
ハトがレバーを押すと時々水が出る。つまり部分的にしかごほうびをあげない。これを部分強化と言う。これでもハトがレバーを押す頻度は高まるけれど、連続強化のときほどじゃない。
話はここからである。
ある時点から、ハトがレバーを押すと必ず水が出る、というのをやめてしまう。
それでもしばらくはハトはレバーを押し続ける。やめた直後はやたらとレバーを押す(これを消去バーストといったりする)。けれども時間が経つと、レバーを押す頻度は減っていき、やがてはハトはもうレバーを押さなくなる。水というごほうび(強化子、好子)をとりあげたから。
もう一匹のハト、レバーを押しても毎回水が飲める訳じゃない、時々しか水が出なかった方はどうだろうか。
「時々」といっても、いろいろある。一定回数レバーを押したら水が出るやり方もあれば、10回に1回の割合で、しかしランダムに、水が出る、なんてこともある。
さて、問題は、レバーを押すと水が出るのをやめてしまった場合である。
その際にも、レバーを押す頻度は減る。けれども、連続強化のときほど急激に押す頻度が減る訳じゃない。水が出なくても、ずーと、押し続けるハトもいる。あの、一定割合でランダムに水にありつけたハトだ。
連続強化に対して部分強化、なかでも一定割合でランダムに強化されたハトが、ごほうびがなくなっても、ずーっとレバーを押す行動を止めない。
こういうことは、いろんなところである。
一番有名なのはギャンブルの例である(最近、ギャンブルは実はちがうんじゃないかという研究もある)。ギャンブルに当たることは、かなり低いが一定の割合のようでもある。ときどき当たるので、当たらない場合の方がずっと多いのに、なかなかやめられない。
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最後にもう一度、レバーを押し続けるハトに戻そう。
今度は全くランダムに(確率さえも一定せず)レバーを押すと水が出たり出なかったりするようにした。
つまり、レバーを押すことと、水が出ることは、まるで関連がない。
ところで、実験されるたくさんのハト(何しろ何匹でも箱さえあれば記録がとれるのだ)の中には、たまたまレバーを押すと3回連続で水にありつけたものがいた。
ハトはレバーを押すことを学習する。ハトはレバーを押す。すると水が出る時もあれば出ない時もある。なにしろレバーを押すことと、水が出ることは、まるで関連がないのだ。
けれど、ハトにとっては、水が出たりでなかったりすることは、部分強化になる。
かなりの回数、レバーを押しても水が出なくても、それでもハトはレバーを押すことをやめないだろう。
研究者は、これをハトの「迷信行動」と名付けた。人間のジンクスの行動的起源がここにある。
まったく偶然の成功であっても、人はその時やっていた無意味な行為をなかなか止めようとはしないだろう。
レバーを押すことと、水が出ることは、まるで関連がなくとも、レバーを押し続けるハトのように。
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