学術研究への影響
主要な出来事(時系列):
2025年1月下旬 – トランプ大統領就任直後、連邦政府機関に対し「無駄の削減」を求める大統領令(2月11日付)を発令。これを受け、国立衛生研究所(NIH)は2025年1月に助成金審査会議の開催を一時停止し、新規研究助成の決定が滞る事態となった。大学側は研究資金の流れが「細る」のを感じ始め、博士課程学生の受け入れ抑制やプロジェクト縮小を検討し始めた。
2025年2月~3月 – 連邦研究予算の大幅削減計画が表面化。とりわけNIH予算の削減は大学研究に直接影響し、デューク大学では2024年1~2月に166件だったNIH助成金・契約の採択通知が、2025年同時期には64件に激減したと報告された。3月時点で、NIHから年間5億8千万ドルの研究費を得てきた同大学は、予算削減の差し止めを求める訴訟によって削減が一時凍結されたものの、既に採用凍結や研究計画縮小、資金喪失に備えた緊急計画の策定を余儀なくされている。多くの大学が同様の危機対応に追われた。
2025年3月11日 – 米国立科学財団(NSF)による学部生向け研究プログラム(REU)の中止が相次ぐ。NSF予算の不透明さから「少なくとも12のREUサイトがこの夏の計画を中止した」と報じられ、長年にわたり若手育成の要だった夏季研究プログラムが打撃を受けた (Trump’s cuts threaten key NSF undergrad research program)。これは大学院進学や将来の研究者キャリアへの悪影響が懸念される出来事である。
2025年3月中旬 – 連邦議会は9月末までの予算を現行水準で維持する「継続予算決議」を可決したが、軍事費に60億ドル上乗せする一方、民生プログラムを130億ドル削減する内容となった。このため、NIHの一部長期プロジェクト(BRAINイニシアチブやAll of Usゲノム医学など)は特別基金の枯渇により2025年度予算が合計2億8千万ドル減少し、国防総省の医学研究プログラムも57%(約8億5千万ドル)の大幅減となった。研究現場では資金不足によるプロジェクト縮小・スタッフ解雇の懸念が急速に高まった。
2025年3月下旬 – 研究環境の政治化も進行。連邦政府は「多様性・公平性・インクルージョン(DEI)」関連の取組を排除する方針を打ち出し、NIHの多様性奨学金プログラムも停止された。例えば、ある黒人の博士課程学生は当初NIHの多様性奨励プログラムへの応募を予定していたが、トランプ政権が連邦政府からDEI関連イニシアチブを一掃し始めたため、急遽DEIに関係ない別の助成金を探さざるを得なくなった。研究費配分が政治的理念で左右され、研究テーマの選択にも自己検閲が生じる懸念が高まっている。
国際共同研究への障壁の顕在化(2025年1~3月) – トランプ政権は第1期で導入した入国制限(通称「渡航禁止令」)を大幅拡大する構想を示した。3月17日の報道によれば、対象国は7か国から最大41か国へ拡大される可能性があり、うちエリトリアやミャンマーなど5か国は学生ビザの発給停止を含む部分的渡航禁止の対象に検討されている。また1月20日付の大統領令では「外国人に対する入国審査の強化」が指示され、研究者・留学生に対する審査が厳格化された。2月初旬には一部の外国人研究者が入国審査で長時間拘束される事例も報告され、国際会議や共同研究への参加に支障が出始めた。3月までに大学主導の国際研究プロジェクトの延期・中止が相次ぎ、海外の共同研究者との往来が滞る傾向が強まっている。
政策変更・削減措置の一覧(学術研究分野):
| 日付 | 政策・措置 | 内容・規模(削減額等) | 影響対象・分野 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年1月 | NIH助成金審査の一時停止 | 研究助成金の新規審査を停止。研究費配分が事実上凍結 | 大学の研究プロジェクト全般 | |
| 2025年2月 | 連邦研究費の暫定予算(継続予算決議) | 民生プログラム予算を130億ドル削減。NIH主要計画で2.8億ドル減、国防総省医学研究で57%減など | 医学・科学研究(脳研究、ゲノム研究、防衛医研など) | |
| 2025年3月 | NIH研究費の削減(裁判で一時停止) | 大学への研究補助金大幅削減を計画(例:デューク大で年間5.8億ドル削減通知)※州政府の提訴で一時差し止め | 医学・生命科学研究 | |
| 2025年3月 | NSF学部生研究(REU)プログラムの縮小 | 夏季研究インターン(REU)が資金不安で中止相次ぐ(少なくとも12サイトで実施中止) (Trump’s cuts threaten key NSF undergrad research program) | 若手研究者育成、人材パイプライン | (Trump’s cuts threaten key NSF undergrad research program) |
| 2025年3月 | 研究費の多様性プログラム排除(DEI禁止) | NIHの多様性奨学金を含む、特定人種・属性支援の研究費を停止 | マイノリティ研究者、社会科学研究 | |
| 2025年3月~ | 研究機関の大規模リストラ計画(予告) | 各科学機関が人員削減計画を準備。NSFでは職員の最大50%削減(約800人)との情報。将来的に予算半減(90億→40億ドル台)案も浮上 | 主要連邦科学機関(NSFなど) | |
| 2025年1~3月 | 渡航禁止令の拡大と入国審査強化(計画) | 渡航禁止対象国を最大41か国に拡大検討。一部で学生ビザ停止を含む。入国審査を大幅強化 | 国際共同研究、留学生交流 |
悪影響の要約(学術研究): 研究予算の急激な引き締めと不透明化により、大学の研究体制は混乱し、人員採用やプロジェクト継続が脅かされた。2025年初頭から各大学は研究費削減への緊急対応(採用凍結・計画縮小)を強いられ、若手研究者育成プログラムも中止が相次いだ (Trump’s cuts threaten key NSF undergrad research program)。また、研究の政治化が進み、連邦政府は自らの政治方針に沿わない分野(多様性研究や気候変動など)への資金提供を制限する姿勢を示した。国際的にも査証(ビザ)政策の強化や渡航制限拡大により、共同研究や学術交流に高い障壁が生じている。これらにより米国の研究環境は閉鎖的となり、将来のイノベーション基盤が損なわれつつある。
大学・高等教育への影響
主要な出来事(時系列):
2025年1月~2月: 留学生・国際研究者への圧力強化 – トランプ政権は就任直後から移民・留学生に対する取り締まりを強化した。1月下旬には初期の渡航禁止令拡大の方針が示され、2月に入ると連邦移民当局が大学の寮に踏み込み、留学生のビザを取り消し、キャンパス抗議に参加した留学生の強制退去を警告する事態が発生した (Colleges Fear Decline in International Student Enrollment)。緑カード(永住権)保持者の研究者が逮捕されるケースも報じられ、学術コミュニティに動揺が広がった (Colleges Fear Decline in International Student Enrollment)。さらに科学・工学系分野の留学生や大学院生に多く支給されていたSTEM研究助成金「数億ドル規模」が削減されたため、多くの大学院プログラムで留学生の新規受け入れを一時停止する動きが出た (Colleges Fear Decline in International Student Enrollment)。西バージニア大学で国際戦略担当副学長を務めたWilliam Brustein氏は、「ビザ取り締まりや研究費削減、目立つ逮捕劇によって、今年の留学生減少は2017年(第1次政権時)の比ではないだろう。多くの学生が米国以外(英国、カナダ、アジアなど)に流れると予想する」と述べている。
2025年1月: 大学のDEIプログラム縮小の動き – トランプ政権は全米の大学に対し、過去にバイデン政権下で推進された多様性・公平・包括(DEI)プログラムの見直しを迫る姿勢を示した。特に1月中旬、保守系団体の働きかけにより、ビジネス分野でマイノリティ支援を行ってきた非営利組織「The PhD Project」が標的となり、同団体と提携する45の大学に調査が入った。連邦教育省は各大学に対し、この組織との関係や「人種に基づく奨学金」の提供状況を報告するよう3月31日締切で要求し、違反が認定されれば連邦資金停止も辞さない構えを見せた。この動きに対し、多くの大学は慎重姿勢を取りつつも、一部では当該団体との関係解消に踏み切る例が出た。例えばケンタッキー大学は3月中旬に同団体との提携打ち切りを発表し、ワイオミング大学もビジネススクールによる財政支援を今年度停止すると表明した。DEI推進を掲げてきた学術プログラムや奨学金が次々と終了に追い込まれつつある。
2025年3月19日: 学問の自由への介入(コロンビア大学の事例) – ニューヨークのコロンビア大学は、前年末からのパレスチナ支持デモへの対応を巡りトランプ政権と対立していたが、3月21日、連邦政府の要求する一連の措置を受け入れると発表した。これは政権が同大学に対し「キャンパスの反ユダヤ主義対策」と称して抗議活動への規制強化(マスク禁止や逮捕権を持つ警官の増員)、中東研究プログラムの再編や新高官ポスト設置などを要求し、応じなければ約4億ドルの連邦研究資金を停止すると脅したことによる。コロンビア大学は法的異議や学問の自治への懸念がある中で譲歩し、「250年以上の歴史で前例のない学問への政府介入だ」との批判を浴びた。全米大学教授協会(AAUP)会長のトッド・ウルフソン氏は記者会見で「我々はコロンビア大学が学問の自由と言論の権利を守り、政府の要求に屈しないことを望んでいたが、結果は期待外れだ」と強く非難した。歴史学教授のカール・ジェイコビー氏も「連邦政府が一大学の特定学部を支配しようとしたのは初めてであり、トランプ政権はこれからが本番だ」と警告している。教育政策専門家のロバート・ケルチェン氏は「トランプが望むものを完全にコロンビアから勝ち取った。次は名だたる他大学も従わざるを得なくなるだろう。これは米高等教育史の転換点だ」と述べ、他大学への波及効果を指摘した (Columbia Agrees to Trump’s Demands)。
2025年3月20日: 大学自治へのさらなる圧力 – トランプ大統領は「教育の自由と多様性」を掲げた非営利団体やプログラムにもメスを入れ、特定の思想に基づく教育活動を排除する大統領令を連発した。例えば、「過激な偏向教育の終焉」と銘打った大統領令では、学校教育における「ジェンダー・イデオロギー」や「差別的平等イデオロギー」を“洗脳”とみなし、そうした教育を行う機関への連邦資金を打ち切る計画策定を各省庁に命じた (What's in Trump's New Executive Orders on Indoctrination and School Choice)。この命令には、第1次政権で物議を醸した「1776委員会」の復活も含まれており、アメリカ建国の精神を称える「愛国教育」を推進することが掲げられた (What's in Trump's New Executive Orders on Indoctrination and School Choice)。一方、ジェンダーや人種差別の問題を教育するプログラムは「急進的な偏向」とみなされ、連邦支援から排除される方向となった (What's in Trump's New Executive Orders on Indoctrination and School Choice) (What's in Trump's New Executive Orders on Indoctrination and School Choice)。これらの動きは大学のみならず初等中等教育にも影響し、教育内容への政治的介入として懸念されている。
政策変更・措置の一覧(高等教育分野):
悪影響の要約(大学・高等教育): トランプ政権2期目では、大学の自治と学問の自由が直接的な政治介入の対象となった。留学生・外国人研究者に対する締め付けで国際キャンパスは萎縮し、優秀な人材が米国を避ける傾向が強まった。さらに大学の多様性推進策(DEI)は「逆差別」視され、関連プログラムや提携団体は次々と整理・撤廃に追い込まれた。コロンビア大学が示したように、政府は巨額の研究資金凍結をてこに大学運営に干渉し、抗議活動の規制やカリキュラムの見直しまで要求した。また、教育内容にも踏み込み、「愛国教育」の名の下に歴史認識の誘導やジェンダー・人種教育の封じ込めを図った (What's in Trump's New Executive Orders on Indoctrination and School Choice) (What's in Trump's New Executive Orders on Indoctrination and School Choice)。これらの措置により、高等教育機関は政府の顔色をうかがいながら運営を余儀なくされ、批判的思考や多様性尊重といった大学の基本価値が損なわれつつある。
図書館・情報アクセスへの影響
主要な出来事(時系列):
2025年1月31日: 政府ウェブサイトからのデータ削除事件 – トランプ大統領は就任直後に署名した「ジェンダー・アイデオロギー廃止」に関する大統領令に基づき、各省庁に対し迅速な対応を要求した (Health data, entire pages wiped from federal websites as Trump officials target 'gender ideology' | AP News)。その結果、1月末までに連邦政府の公式サイトから公衆衛生や性別に関するデータが大量に削除され、一部のウェブページは「このページは現在利用できません」というエラーメッセージを表示する状態になった (Health data, entire pages wiped from federal websites as Trump officials target 'gender ideology' | AP News)。例えば、米国国勢調査局サイトの「性的指向と性自認(SOGI)」に関する情報ページは、1月24日時点では閲覧できていたが、わずか1週間後の1月31日にはアクセス不能となり、「メンテナンス中」の表示に差し替えられた。 (Health data, entire pages wiped from federal websites as Trump officials target 'gender ideology' | AP News) (Health data, entire pages wiped from federal websites as Trump officials target 'gender ideology' | AP News)この対応は各機関が大統領令への即応を図った結果で、公衆衛生や統計データに関する重要情報が予告なく消失したことから、市民や研究者の間で強い懸念と混乱を招いた。さらに同日、連邦職員にはEメール署名からの代名詞(プリファード・プロノウン)の削除が指示され、行政内部でも多様性に関する表現が抹消された (Health data, entire pages wiped from federal websites as Trump officials target 'gender ideology' | AP News)。
2025年3月13日: 情報機関の報告からのDEI記述削除 – 国家情報長官(DNI)室の検閲の一環として、DNI監察総監室が議会に提出した2024年9月期の半期報告書から、多様性・公平・包括(DEI)に関する取り組み状況の記述が削除されていたことが明らかになった。トランプ政権は連邦政府全体でDEI関連情報の公表を控える方針を取っており、情報公開の分野でも「政治的に好ましくない内容」は伏せられる傾向が強まった。
2025年3月15日: 独立系機関・図書館への資金断絶(大統領令) – 3月15日、トランプ大統領は「連邦官僚制の継続的縮小」を目的とする大統領令に署名し、博物館・図書館サービス機構(IMLS)をはじめ7つの連邦機関を「可能な限り」廃止するよう指示した。IMLSは米国の博物館・図書館への最大の連邦助成機関であり、全米の大学図書館・公立図書館・ミュージアムで何百件ものプログラムを支えてきた。例えば、この機構の助成金により、ミシガン州の部族大学が図書館改修中もサービスを維持し、バージニア州の歴史的黒人大学が古い女子大学の資料をデジタル化し、フロリダ州の研究者が自閉症の学生を支援する学校司書プログラムに取り組む (Trump Order Threatens University Libraries, Museums)など、重要な教育プロジェクトが進められていた。しかし大統領令発効に伴い、それらの助成事業は一斉に存続の危機に立たされた。この措置には、米グローバル・メディア局(USAGM;ボイス・オブ・アメリカ等を所管)やホームレス問題対策評議会、ウッドロウ・ウィルソン国際学術センター(スミソニアン傘下)なども含まれており、公共の知的インフラと情報発信機関に対する包括的な資金源遮断であった。
2025年3月20日: 図書館・博物館コミュニティの反応 – IMLS廃止の報に対し、大学図書館員や博物館関係者は強く反発した。全米歴史学会(AHA)は3月20日に声明を出し、「この機関(IMLS)は人文学へのアクセス提供に極めて重要な役割を果たしてきた。図書館と博物館は歴史学的営為のインフラの中核であり、教育と研究の場である」として、連邦議会に対し廃止阻止を求めるよう呼びかけた。大学博物館・ギャラリー協会のクリスティナ・デュロシェ会長も「IMLSへの予算カットは学術機関に壊滅的な影響を与えかねない」と述べ、地方の大学やコミュニティで文化遺産を守り教育する取り組みが立ちゆかなくなると警告した(同日付メール声明)。これら声明は、図書館・博物館が単なる娯楽施設ではなく、地域社会に知識と学習の機会を提供するライフラインであることを強調し、IMLS解体に強く抗議するものだった。
政策変更・措置の一覧(情報アクセス分野):
| 日付 | 政策・措置 | 内容・影響 | 対象・分野 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年1月 | 行政サイト上の情報削除(LGBTQ・保健分野) | トランプ政権の指示で性的指向・性自認や公衆衛生データのページが次々削除 ([Health data, entire pages wiped from federal websites as Trump officials target 'gender ideology' | AP News](https://apnews.com/article/trump-gender-ideology-sex-pronouns-order-transgender-2d7e54837f5d0651ed0cefa5ea0d6301#:~:text=Public%20health%20data%20disappeared%20from,back%20protections%20for%20transgender%20people)) | 連邦政府公式サイト(国勢調査局等) |
| 2025年1月 | 職員のEメール署名からの代名詞削除指示 | トランプ大統領の大統領令に対応し、省庁職員が署名のhe/she等を除去 ([Health data, entire pages wiped from federal websites as Trump officials target 'gender ideology' | AP News](https://apnews.com/article/trump-gender-ideology-sex-pronouns-order-transgender-2d7e54837f5d0651ed0cefa5ea0d6301#:~:text=Public%20health%20data%20disappeared%20from,back%20protections%20for%20transgender%20people)) | 行政内部の公用コミュニケーション |
| 2025年3月 | 博物館・図書館サービス機構(IMLS)の廃止命令 | 大統領令によりIMLS含む7機関の廃止を指示。「不要な機関の撤廃」が目的 | 大学図書館、公共図書館、ミュージアム | |
| 2025年3月 | IMLS助成プログラムの停止 | IMLSの予算凍結で数百件の助成事業が危機(大学図書館の改修支援・資料デジタル化等) | 地方大学・コミュニティの教育サービス | |
| 2025年3月 | 米グローバル・メディア局(USAGM)の廃止命令 | VOAなど国際放送への連邦資金を打ち切り、関連組織を閉鎖 | 国営メディア(対外情報発信) | |
| 2025年3月 | 歴史・文化団体からの抗議声明 | AHA等が「図書館・博物館は教育インフラの要」と議会へ存続要請 | 学術コミュニティ、文化遺産分野 |
悪影響の要約(図書館・情報アクセス): 第2次トランプ政権下では、公共データと知的資源へのアクセスが制度的に制限され始めた。政権のイデオロギーに反するとみなされた情報(例:LGBTQ関連データ、気候変動や公衆衛生に関する情報)は公式サイトから突如消去され (Health data, entire pages wiped from federal websites as Trump officials target 'gender ideology' | AP News)、政府による情報検閲の様相を呈した。また、図書館・博物館といった知的自由の砦への予算が一方的に断たれ、多くの教育・保存プロジェクトが中断の危機に陥った。知のインフラ縮小に対して学術界・文化界は強く抗議したが、政権は「官僚機構のスリム化」の名の下に動きを進めている。これらの措置により、市民と研究者は政府発の信頼できるデータにアクセスしにくくなり、民主社会に不可欠な情報の透明性と歴史的記憶の共有が損なわれつつある。
科学機関・研究者への影響
主要な出来事(時系列):
2025年2月11日: 連邦機関の大規模リストラ計画の指示 – トランプ大統領は2月11日付の大統領令で「無駄・肥大化・惰性の排除」のため連邦各機関に再編案の提出(3月13日締切)と人員整理(RIF)計画の策定を命じた。この命令を受け、科学技術系機関でも極めて大規模な人員削減案が検討された。例えば米国立科学財団(NSF)では、職員の最大50%(約800人)を削減する可能性が内部で取り沙汰され、予算規模も現在の約90億ドルから半分以下(40億ドル弱)に圧縮する試算が関係者から示唆された。この水準では「NSFは法定の使命を果たせず、事実上現在のNSFは存在しえなくなる」と科学政策研究者が警鐘を鳴らす事態となった。
2025年2月14~19日: 科学者・職員の抗議集会 – 2月中旬、連邦各省庁で解雇通知が相次ぐ中、科学機関の職員たちはワシントンD.C.で連日の抗議行動を展開した。2月14日には保健社会福祉省(HHS)前でNIHや疾病予防管理センター(CDC)職員らが集結し、「トランプ政権と(HHS長官に就いた)イーロン・マスクによる予算削減と職員解雇は、公衆衛生に対する脅威だ」と訴えた (Anger, chaos and confusion take hold as federal workers face mass …)。続く2月19日には数百人規模の科学者・研究者がHHS本部ビル前に結集し、医療・科学研究予算の削減と大量解雇に抗議するデモを行った (Hundreds rally against firing of federal workers, emphasizing threats to public health | AP News)。参加者は「民主主義を守れ(Defend Democracy)」と書かれたプラカードを掲げ、科学に基づく政策決定を軽視する政権の方針転換を求めた。 (Hundreds rally against firing of federal workers, emphasizing threats to public health | AP News) (Hundreds rally against firing of federal workers, emphasizing threats to public health | AP News)このように、科学コミュニティ自身が声を上げる異例の事態となり、現場の士気低下と政権との深刻な対立が表面化した。
2025年3月17日: 環境保護庁(EPA)研究部門の廃止計画が露呈 – 各機関の再編案締切直後、EPAの内部計画の一部が報道で明るみに出た。それによると、EPAは研究開発局(ORD)の完全廃止を検討していた。ORDはEPAの科学的中核部門であり、職員数1,540人(非常勤含まず)を擁するが、計画書では「過半数(50~75%)の職員は解雇し、残りは他部局に配置転換する」と記載されていた。しかしORDの設置は法律で定められており、「これを廃止するのは違法である」と下院科学技術委員会の与党幹事ゾーイ・ロフグレン議員は指摘した。同議員は「EPAが科学的根拠に基づく政策決定を行う法的義務を果たせなくなるのが狙いだ」と厳しく批判している。EPA報道官は「最終決定はまだなく、職員の意見を聞きながら効率向上策を検討中」と釈明したが、内部から計画が流出したことで職員らの不安は一層高まった。
2025年3月20日: 科学機関トップ人事と政策転換 – 上院は3月20日、EPA長官にリー・ゼルディン氏を承認した。ゼルディン長官は以前より「EPAの支出削減」を公言しており、気候変動研究や環境規制科学に否定的な立場で知られる。就任早々、同長官はORDの将来について「組織改編の一環としてあらゆる選択肢を検討中」と述べ、研究者からは「科学的専門知識の大幅流出につながる」と懸念された。また同日、ホワイトハウスはCDC長官人事をめぐり、指名承認寸前で候補者を差し替えるという異例の対応を取った(公聴会数時間前に撤回)。政権が自らに忠実な人材を据え、科学機関の独立性よりも政権方針への従属を優先する姿勢が浮き彫りとなった。
2025年3月22日: 科学的知見の軽視(気候協定離脱など) – トランプ大統領は就任初日に発令した気候変動関連の規制緩和に続き、国際的な科学協調からの離脱にも踏み出した。1月20日、米国は再びパリ気候協定からの離脱手続きを開始する大統領令が出され (Trump signs order directing US withdrawal from the Paris climate agreement | AP News)、3月22日までに国連に正式通知が行われた(離脱完了は1年後予定)。この決定は「地球温暖化対策への世界的取り組みに打撃を与え、同盟国とも再び距離を置くもの」と報じられた (Trump signs order directing US withdrawal from the Paris climate agreement | AP News)。また、トランプ政権はWHO(世界保健機関)からの脱退も決定し、1月21日に脱退通知を発出、米国人職員の引き上げと資金拠出の即時停止に踏み切った。国際的な科学・公衆衛生ネットワークからの米国の孤立は、パンデミック対応や地球規模課題の研究に深刻な影響を与えると専門家は懸念している。
政策変更・措置の一覧(科学機関分野):
| 日付 | 政策・措置 | 内容・規模 | 影響対象 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年2月 | 連邦機関リストラ計画の指示(大統領令) | 各省庁に大規模人員削減を伴う再編案を提出命令。NSF等で職員半減案も浮上 | 連邦全体の行政機関(NSF等科学機関含む) | |
| 2025年2月 | 科学者・研究者による抗議デモ | HHS本部前で数百人の職員・科学者が医科研予算削減と解雇に抗議 ([Hundreds rally against firing of federal workers, emphasizing threats to public health | AP News](https://apnews.com/article/federal-workers-firings-protest-workforce-public-health-5119d6b7f39aad1bce2dc904075b34e4#:~:text=Scientists%20and%20researchers%20protested%20the,AP%20Video%3A%20Serkan%20Gurbuz%2FNathan%20Ellgren)) | NIH・CDC・FDAなど保健・科学機関職員 |
| 2025年3月 | EPA研究開発局(ORD)の廃止計画浮上 | EPA研究部門を全廃し職員の50~75%を解雇(1500人規模)。民主党議員「違法でありEPAの使命放棄」と批判 | 環境科学研究、EPAの科学的意思決定 | |
| 2025年3月 | 科学機関トップ人事の政治化(EPA・CDC) | 気候規制に否定的な人物をEPA長官に起用。CDC長官候補を公聴会直前に差し替え(政権の掌握強化) | 環境政策、感染症対策 | |
| 2025年1月 | パリ協定からの再離脱 | 気候変動枠組みの国際合意から米国が離脱通告 ([Trump signs order directing US withdrawal from the Paris climate agreement | AP News](https://apnews.com/article/trump-paris-agreement-climate-change-788907bb89fe307a964be757313cdfb0#:~:text=WASHINGTON%20,from%20its%20closest%20allies)) | 地球環境(気候変動対策) |
| 2025年1月 | 世界保健機関(WHO)からの脱退 | WHOへの資金拠出停止・職員引き上げを決定 | 国際公衆衛生協力、疫病対策 |
悪影響の要約(科学機関・研究者): 第2次トランプ政権は科学行政の大規模な解体と政治的支配を進め、科学者コミュニティとの緊張がかつてなく高まった。EPAの研究部門廃止計画に象徴されるように、政策決定に科学的根拠を用いる姿勢が後退し、「利用したい情報だけを選ぶ」(Cherry-pick)ことを可能にする体制づくりが懸念されている。実際40年以上EPAで勤務した元局長代理は「これほどの研究費カットは見たことがない」と述べ、環境法が求める「最良の科学」に基づく判断が形骸化する恐れを指摘した。また、研究者・専門家の大量解雇と人事介入により、官民問わず科学者の士気は低下し、有能な人材が流出するリスクが高まっている。政権の科学軽視は国際協調の場にも及び、気候変動や公衆衛生といった地球規模課題で米国は主導権を放棄し、世界的取組を弱体化させた (Trump signs order directing US withdrawal from the Paris climate agreement | AP News)。情報発信面でも、例えば気候やワクチンに関する政府専門家の発言が抑制されるなど、研究成果の自由な公開・共有が制限されつつある(現職科学者による自己検閲の報告が増加)。総じて、第2次トランプ政権下では科学的知見が政策から疎外され、知的基盤が揺らぐ悪影響が各所に広がっている。
各分野にわたるこれらの動向は、学術・研究・知的自由・情報公開・公教育インフラ全般に深刻な打撃を与えている。研究費と人材の削減により米国の科学技術競争力は低下し、大学や教育機関では思想統制的な圧力が強まった。図書館・メディア・国際協力の分野でも開かれた知の環境が後退している。主要大学から歴史学会に至るまで、幅広いコミュニティがこれら一連の動きを「民主社会の根幹への挑戦」と位置づけ、警戒と抵抗の声を上げている。
References: 政策変更や発言の引用・データについては、米国主要メディア(AP通信、ロイター通信、PBS/NPR)、有力大学の公式発表、専門誌(Science誌、Inside Higher Ed、Chemical & Engineering News等)、および議会関係者の声明など信頼性の高い情報源に基づいて記述した。各出典は本文中に示した通り。 (Colleges Fear Decline in International Student Enrollment)
1933年5月10日、Aktion wider den undeutschen Geist(反ドイツ的精神に抗する行動)と称され、ベルリンの国立歌劇場前や、ボンやミュンヘン、ゲッティンゲンなどドイツの全国34の大学都市で行われた焚書の対象となった著者のリストである。
1933年4月6日、ドイツ学生協会(Deutsche Studentenschaft)が新聞やプロパガンダの手段により、全国的に「非ドイツ的な魂」に対する抗議運動を行う宣言をし、運動は火による書物の「払い清め」(Säuberung)によってクライマックスを迎えた。地方局はこの宣言や委託論文付きの新聞を発行し、スポンサーである著名なナチスの人物に集会での演説をさせ、ラジオの放送時間を得るための交渉を行った。学生協会も4月8日に、マルティン・ルター を意図的に連想させた12ヶ条の論題 (en:Twelve Theses) を起草し、ルターの95ヶ条の論題が投稿されて300年を記念したヴァルトブルク祭 (en:Wartburg festival) に合わせて、「非ドイツ的」な本の焚書の計画を練った。「純粋な」国語と文化が、12ヶ条の論題によって提唱された。貼り紙などにより、この論題が宣伝された。論題は「ユダヤ人の知識の偏重」を攻撃し、ドイツ語とドイツ文学の純化の必要性が断言され、大学がドイツのナショナリズムの中心となることを要求していた。学生らは、焚書運動を、全世界のユダヤ人によるドイツに対する 「組織的中傷」 への答えとし、伝統的なドイツ的価値を肯定した。
1933年5月10日、学生たちは、25,000巻を上回る「非ドイツ的な」本を燃やし、このことが国家による検閲と文化の支配の時代の到来を告げる不吉な予兆となった。5月10日夜、ドイツのほとんどの大学都市において、国家主義者の学生がトーチを掲げながら「非ドイツ的魂への抵抗」の行進を行った。この周到に準備された儀式では、ナチスの高官、教授、教区牧師、学生のリーダーが、参加者や観衆に向けて演説を行った。会場では、学生達が押収された好ましくない本を、まるで喜ばしい儀式であるかのように、かがり火の中に投げ入れ、「火の誓い」の歌がバンド演奏され、儀礼的な文が読み上げられた。ベルリンでは、40,000以上の人がヨーゼフ・ゲッベルスの演説を聞きに、オペラ広場 (Opernplatz) に集合した。ゲッベルスは、
「退廃やモラルの崩壊にはNo」
「家族や国家における礼儀や道徳にはYes。
私は、ハインリヒ・マン、エルンスト・グレーザー、エーリッヒ・ケストナーの書物を焼く」
などと演説した。
出典:(2013)「ナチス・ドイツの焚書」『ウィキペディア日本語版』,(2014年6月8日取得,Link.)
10. Mai 1933 - Bücherverbrennung auf dem Berliner Opernplatz
「Dort, wo man Bücher verbrennt, verbrennt man am Ende auch Menschen.
(焚書は序章に過ぎない。本を焼く者は、やがて人間も焼くようになる)」(ハインリヒ・ハイネ)
「火中からの書物」(Bücher aus den Feuer)とは、かつて火の中へと投じられた書物を火の中から取り戻すことであり、焚書を忘却しなかったことにする動きに抗する、現在進行中の運動である。
リスト中のすべての著者を紹介したかったが、浅学故に断念した。オリジナル版(http://www.buecherlesung.de/liste.htm)を是非ご覧頂きたい。
しかし日本語ウィキペディアに載ってる程の人物は拾い出すことにした。証拠としてウィキペディア該当記事にリンクを付けた。見知らぬ人物について確認の一助になれば幸いである。
このブログでは、過去に日本、アメリカ、ローマ・カトリックの、人に本を読ませないことに関するリストを紹介している。比較から興味深い気づきが得られるかもしれない。
(日本)日本の発禁書一覧2000冊 読書猿Classic: between / beyond readers

(アメリカ合衆国)人から本を奪う者はどんな報いを受けるか/当世米国「禁書」目録 読書猿Classic: between / beyond readers

(ローマカトリック)これがほんとの禁書目録/INDEX LIBRORVM PROHIBITORVM -- 1948 読書猿Classic: between / beyond readers

Liste der "verbrannten" Autoren(焼かれた著者リスト)
アルフレッド・アドラー
Alfred Adler
オーストリア出身の精神科医、心理学者、社会理論家。
ショーレム・アッシュ
Schalom Asch
ポーランドのイディッシュ語作家。
イサーク・バーベリ
Isaak Emmanuilowitsch Babel
ロシアの作家。代表作に『騎兵隊』『オデッサ物語』。
ミハイル・バクーニン
Michail Alexandrowitsch Bakunin
ロシアの思想家で哲学者、無政府主義者、革命家。
アンジェリカ・バラバーノフ
Angelica Balabanova
ロシアの女性革命家。ウクライナ出身のイタリア・ユダヤ人。
バラージュ・ベーラ
Béla Balázs
ハンガリーの映画理論家、美学者、作家、詩人。
アンリ・バルビュス
Henri Barbusse
フランスの作家、社会運動家。
エルンスト・バルラハ
Ernst Barlach
20世紀ドイツの、表現主義の彫刻家、画家、劇作家。
オットー・バウアー
Otto Bauer
オーストリアの社会主義者・政治家・社会学者・哲学者。
ヴィッキイ・バウム
Vicki Baum
オーストリアの作家。代表作に『グランド・ホテル』。
アウグスト・ベーベル
August Bebel
ドイツの社会主義者。ドイツ社会民主党の創設者の一人。
ヨハネス・R・ベッヒャー
Johannes Robert Becher
ドイツの表現主義詩人。
パウル・ベッカー
Paul Bekker
ドイツの音楽評論家、指揮者、劇場支配人。
ヴァルター・ベンヤミン
Walter Benjamin
ドイツの文芸評論家、哲学者、思想家、翻訳家、社会学者。
エドゥアルト・ベルンシュタイン
Eduard Bernstein
ドイツの社会民主主義理論家・政治家。
エルンスト・ブロッホ
Ernst Bloch
ドイツのマルクス主義哲学者。
ヨアヒム・リンゲルナッツ
Joachim Ringelnatz
ドイツの詩人、作家、画家。 ケストナー、メーリング、ブレヒトなどとともに新即物主義(ノイエ・ザハリヒカイト)の代表的詩人。
アレクサンドル・ボグダーノフ
Alexander Alexandrowitsch Bogdanow
ロシアの内科医・哲学者・経済学者・SF作家・革命家。
ワルデマル・ボンゼルス
Waldemar Bonsels
ドイツの作家、児童文学作家。
ベルトルト・ブレヒト
Bertolt Brecht
ドイツの劇作家、詩人、演出家。
ヘルマン・ブロッホ
Hermann Broch
オーストリアの作家。
マックス・ブロート
Max Brod
チェコ出身のユダヤ系の作家、作曲家。カフカの友人、紹介者。
ニコライ・ブハーリン
Nikolai Iwanowitsch Bucharin
ロシアの革命家、ソビエト連邦の政治家。
エドガー・ライス・バローズ
Edgar Rice Burroughs
アメリカの小説家。代表作に「火星シリーズ」『ターザン』。
エリアス・カネッティ
Elias Canetti
ブルガリア出身のユダヤ人作家、思想家。
リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー
Richard Nicolaus Eijiro Coudenhove-Kalergi
東京生まれのオーストリアの政治活動家。汎ヨーロッパ連合主宰者。別名、青山 栄次郎。
フョードル・ダン
Fjodor Iljitsch Dan
ロシアの医師、労働運動家、政治家。メンシェヴィキの有力者の一人。
チャールズ・ダーウィン
Charles Darwin
イギリスの自然科学者。自然選択説による進化論を提唱。
オットー・ディクス
Otto Dix
ドイツの新即物主義の画家。
アルフレート・デーブリーン
Alfred Döblin
ドイツの小説家。
ジョン・ドス・パソス
John Dos Passos
アメリカ合衆国の小説家、画家。
セオドア・ドライサー
Theodore Dreiser
アメリカ合衆国の作家。
イリヤ・エレンブルグ
Ilja Grigorjewitsch Ehrenburg
ソ連の作家。代表作『トラストD. E.』。
アルベルト・アインシュタイン
Albert Einstein
ドイツ生まれのユダヤ人の理論物理学者。光量子説・ブラウン運動の理論、相対性理論などの提唱者。
クルト・アイスナー
Kurt Eisner
バイエルン王国の政治家、作家。ミュンヘン革命の中心人物。
フリードリヒ・エンゲルス
Friedrich Engels
ドイツ出身の思想家、ジャーナリスト、実業家。K.マルクスとともにマルクス主義の創設者。
アレクサンドル・ファジェーエフ
Alexander Alexandrowitsch Fadejew
ソ連の作家。
リオン・フォイヒトヴァンガー
Lion Feuchtwanger
ドイツ系ユダヤ人の小説家、劇作家。
ヴェーラ・フィグネル
Wera Nikolajewna Figner
ロシアの女性革命家、ナロードニキ。
ブルーノ・フランク
Bruno Frank
ドイツ系ユダヤ人の作家。
アンナ・フロイト
Anna Freud
イギリスの精神分析家。ジークムント・フロイトの娘。
ジークムント・フロイト
Sigmund Freud
オーストリアの精神分析学者。精神分析の創始者。
アルフレート・フリート
Alfred Hermann Fried
オーストリアの法学者。1911年にノーベル平和賞。
エゴン・フリーデル
Egon Friedell
オーストリアの批評家・哲学者、俳優、作家。
エドゥアルト・フックス
Eduard Fuchs
ドイツの風俗研究家・収集家。代表作『風俗の歴史』。
アンドレ・ジッド
André Gide
フランスの小説家。
マクシム・ゴーリキー
Maxim Gorki
ロシアの作家。
ジョージ・グロス
George Grosz
ドイツ出身の画家。諷刺画家。
エミール・ユリウス・ガンベル
Emil Julius Gumbel
ドイツの数学者。ガンベル分布の名の由来。
エルンスト・ヘッケル
Ernst Haeckel
ドイツの博物学者、医者。ドイツで進化論の普及に尽力。主著に『生物の驚異的な形』。
ヤロスラフ・ハシェク
Jaroslav Hašek
チェコのユーモア作家、風刺作家。
ラウル・ハウスマン
Raoul Hausmann
オーストリアの画家・デザイナー・詩人。ベルリンダダの創立者の一人。
ジョン・ハートフィールド
John Heartfield
ドイツの写真家、ダダイスト。
ヴェルナー・ヘーゲマン
Werner Hegemann
ドイツ出身の都市計画家。
ハインリヒ・ハイネ
Heinrich Heine
ドイツの詩人、作家。
アーネスト・ヘミングウェイ
Ernest Hemingway
アメリカの小説家・詩人。
テオドール・ホイス
Theodor Heuss
ドイツのジャーナリスト、のちに西ドイツの初代連邦大統領。
シュテファン・ハイム
Stefan Heym
ドイツの作家、詩人。
ルドルフ・ヒルファーディング
Rudolf Hilferding
オーストリア出身の政治家、マルクス経済学者、医師。
マグヌス・ヒルシュフェルト
Magnus Hirschfeld
ドイツの内科医、性科学者、同性愛者の権利の擁護者。
ゲオルグ・イェリネック
Georg Jellinek
ドイツの公法学者。
フランツ・カフカ
Franz Kafka
チェコ出身のドイツ語作家。
ワレンチン・カターエフ
Walentin Petrowitsch Katajew
ソビエト連邦の小説家。
カール・カウツキー
Karl Kautsky
ドイツのマルクス主義政治理論家、革命家。
ヘレン・ケラー
Helen Keller
アメリカ合衆国の教育家、社会福祉活動家、著作家。
ハンス・ケルゼン
Hans Kelsen
オーストリア出身の公法学者・国際法学者。
アーサー・ケストラー
Arthur Koestler
ハンガリー出身のユダヤ人のジャーナリスト、小説家、政治活動家。
アレクサンドラ・コロンタイ
Alexandra Michailowna Kollontai
ロシアの女性革命家、共産主義者。
ユリウス・コルンゴルト
Julius Korngold
チェコ出身のユダヤ系の音楽評論家。
カール・コルシュ
Karl Korsch
ドイツ出身のマルクス主義理論家。
ジークフリート・クラカウアー
Siegfried Kracauer
ドイツのジャーナリスト、社会学者、映画学者。
エルゼ・ラスカー=シューラー
Else Lasker-Schüler
ドイツ出身の詩人。
フェルディナント・ラッサール
Ferdinand Lassalle
ドイツの政治学者、労働運動指導者。 ドイツ社会民主党の母体となる全ドイツ労働者同盟(ドイツ語版)の創設者。
ウラジーミル・レーニン
Wladimir Iljitsch Lenin
ロシアの革命家、政治家。
レオニード・レオーノフ
Leonid Maximowitsch Leonow
ロシアの小説家、劇作家
テオドール・レッシング
Theodor Lessing
ドイツ系ユダヤ人の哲学者。
オイゲン・レヴィーネ
Eugen Leviné
ロシア出身の革命家、ドイツ共産党(KPD)の政治家。
カール・リープクネヒト
Karl Liebknecht
ドイツの政治家で共産主義者。ヴィルヘルム・リープクネヒト の子。
ヴィルヘルム・リープクネヒト
Wilhelm Liebknecht
ドイツの政治家でドイツ社会民主党の創立者の一人。
ジャック・ロンドン
Jack London
アメリカ合衆国の作家。
エーミール・ルートヴィヒ
Emil Ludwig
ドイツ出身のユダヤ人作家。
ルカーチ・ジェルジ
Georg Lukács
ハンガリーの哲学者、マルクス主義者。
アナトリー・ルナチャルスキー
Anatoli Wassiljewitsch Lunatscharski
ロシアの革命家、ソビエト連邦の政治家。
ローザ・ルクセンブルク
Rosa Luxemburg
ポーランド出身、ドイツで活動したマルクス主義の政治理論家、哲学者、革命家。
ウラジーミル・マヤコフスキー
Wladimir Wladimirowitsch Majakowski
ソ連の詩人。ロシア未来派(ロシア・アヴァンギャルド)。
アンドレ・マルロー
André Malraux
フランスの作家、冒険家、政治家。
ハインリヒ・マン
Heinrich Mann
ドイツの作家。トーマス・マンの兄。『ウンラート教授』(映画『嘆きの天使』の原作)
クラウス・マン
Klaus Mann
ドイツの作家。トーマス・マンとカタリーナ・ マンの子。
トーマス・マン
Thomas Mann
ドイツの小説家。『ヴェニスに死す』『魔の山』など。
カール・マルクス
Karl Marx
ドイツ出身の哲学者、思想家、経済学者、革命家。
フランツ・メーリング
Franz Mehring
ドイツのマルクス主義者、歴史家。
エーリヒ・メンデルゾーン
Erich Mendelsohn
ドイツ出身のユダヤ系建築家。
ヴィクトル・マイヤー
Victor Meyer
ドイツのユダヤ系化学者。
グスタフ・マイリンク
Gustav Meyrink
オーストリアの小説家。『ゴーレム』、『緑の顔』など。
モルナール・フェレンツ
Ferenc Molnár
オーストリア出身の劇作家・小説家。
ヘルマン・ミュラー
Hermann Müller
ドイツの政治家。ドイツ社会民主党(SPD)所属。
ロベルト・ムージル
Robert Musil
オーストリアの小説家、劇作家。『特性のない男』『夢想家たち』など。
フランチェスコ・サヴェリオ・ニッティ
Francesco Saverio Nitti
イタリアの政治家、経済学者。
グスタフ・ノスケ
Gustav Noske
ドイツの政治家。ドイツ社会民主党(SPD)。
フランツ・オッペンハイマー
Franz Oppenheimer
ドイツのユダヤ系社会学者、政治経済学者
カール・フォン・オシエツキー
Carl von Ossietzky
ドイツのジャーナリスト。1935年のノーベル平和賞受賞者。
アントン・パンネクーク
Anton Pannekoek
オランダの天文学者、マルクス主義理論家。
アルフレート・ポルガー
Alfred Polgar
オーストリアのジャーナリスト、批評家。カバレット(文学キャバレー)の管理者。
フーゴー・プロイス
Hugo Preuß
ドイツの公法学者。「ヴァイマル憲法の父」。
マルセル・プルースト
Marcel Proust
フランスの作家。『失われた時を求めて』。
グスタフ・ラートブルフ
Gustav Radbruch
ドイツの法哲学者、刑法学者。
ヴァルター・ラーテナウ
Walther Rathenau
ドイツの実業家、政治家。
ジョン・リード
John Reed
アメリカ合衆国出身のジャーナリスト。
ヴィルヘルム・ライヒ
Wilhelm Reich
オーストリア・ドイツ・アメリカ合衆国の精神分析家。オルゴン理論の提唱者。セックス・ポル(性政治学研究所)を主宰し、プロレタリアートの性的欲求不満が政治的萎縮を引き起こすと主張。社会による性的抑圧からの解放を目指したが、その極端な思想や行動は唯物論的な共産党(殊にコミンテルン)から「非マルクス主義的ゴミ溜め」と批判され除名された。
エーリッヒ・マリア・レマルク
Erich Maria Remarque
ドイツの作家。『西部戦線異状なし』。
カール・レンナー
Karl Renner
オーストリアの政治家。第一次世界大戦終了直後の共和国の初代首相と第二次世界大戦終了直後の共和国の臨時首相・初代大統領を務めた。
ヨアヒム・リンゲルナッツ
Joachim Ringelnatz
ドイツの詩人、作家、画家。
ロマン・ロラン
Romain Rolland
フランスの作家。
アルトゥル・ローゼンベルク
Arthur Rosenberg
ドイツの歴史家・政治家。
オイゲン・ロート
Eugen Roth
ドイツの叙情詩人。
ヨーゼフ・ロート
Joseph Roth
オーストリアのユダヤ系作家。
ネリー・ザックス
Nelly Sachs
ドイツの詩人、作家。
フェーリクス・ザルテン
Felix Salten
ハンガリー出身のオーストリアのジャーナリスト・小説家。『バンビ』
マーガレット・サンガー
Margaret Sanger
アメリカ合衆国の産児制限活動家。
アルトゥル・シュニッツラー
Arthur Schnitzler
オーストリアの医師、小説家、劇作家。
ミハイル・ショーロホフ
Michail Alexandrowitsch Scholochow
ロシアの小説家。『静かなドン 』。
ブルーノ・シュルツ
Bruno Schulz
ポーランドのユダヤ系作家・画家。
クルト・シュヴィッタース
Kurt Schwitters
ドイツの芸術家・画家。
アンナ・ゼーガース
Anna Seghers
ドイツの小説家。
カール・ゼーフェリンク
Carl Severing
ドイツの政治家。
イニャツィオ・シローネ
Ignazio Silone
イタリア出身の小説家、政治家。
ゲオルク・ジンメル
Georg Simmel
ドイツ出身の哲学者、社会学者。ドイツ系ユダヤ人(キリスト教徒)。
アプトン・シンクレア
Upton Sinclair
アメリカ合衆国の小説家。
グリゴリー・ジノヴィエフ
Grigori Jewsejewitsch Sinowjew
ロシアの革命家、ソビエト連邦の政治家。
アグネス・スメドレー
Agnes Smedley
アメリカ合衆国のジャーナリスト。
フョードル・ソログープ
Fjodor Sologub
ロシア象徴主義の詩人・小説家・戯曲家。
ミハイル・ゾーシチェンコ
Michail Michailowitsch Soschtschenko
ソ連の作家。
ヨシフ・スターリン
Josef Stalin
ソビエト連邦の政治家、軍人。同国の第2代最高指導者。
ルドルフ・シュタイナー
Rudolf Steiner
オーストリア出身の神秘思想家 。アントロポゾフィー(人智学)の創始者。
カール・シュテルンハイム
Carl Sternheim
ドイツの作家。表現主義の代表者の一人。
ベルタ・フォン・ズットナー
Bertha von Suttner
オーストリアの小説家。ノーベル平和賞を受賞した最初の女性。
パウル・ティリッヒ
Paul Tillich
ドイツのプロテスタント神学者。
レフ・トロツキー
Leo Trotzki
ウクライナ生まれのロシアの革命家、ソビエト連邦の政治家。
クルト・トゥホルスキー
Kurt Tucholsky
ドイツのユダヤ系諷刺作家、ジャーナリスト。
シグリ・ウンセット
Sigrid Undset
ノルウェーの小説家。1928年ノーベル文学賞受賞者。
ハインリヒ・フォーゲラー
Heinrich Vogeler
ドイツの画家、建築家。
ヤーコプ・ヴァッサーマン
Jakob Wassermann
ドイツのユダヤ系作家。
フランク・ヴェーデキント
Frank Wedekind
ドイツの劇作家。ドイツ表現主義の先駆者、不条理演劇の先駆者。
オットー・ヴァイニンガー
Otto Weininger
オーストリアのユダヤ系哲学者。主著『性と性格』は今日では性差別主義的、反ユダヤ主義的とされ、ヒトラーの『わが闘争』にも影響を与えたことが知られる。
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
Herbert George Wells
イギリスの小説家、社会活動家、歴史家。ジュール・ヴェルヌとともに「SFの父」と呼ばれる。
フランツ・ヴェルフェル
Franz Werfel
オーストリアの小説家、劇作家、詩人。
カール・ウィットフォーゲル
Karl August Wittfogel
ドイツ出身の社会学者、歴史学者。
フリードリヒ・ヴォルフ
Friedrich Wolf
ドイツの医師、作家、共産党の政治家。
クララ・ツェトキン
Clara Zetkin
ドイツの政治家・フェミニスト。社会主義の立場による女性解放運動を主導し、女性解放運動の母と呼ばれる。
エミール・ゾラ
Émile Zola
フランスの小説家で、自然主義文学の代表者。
カール・ツックマイヤー
Carl Zuckmayer
ドイツの劇作家・脚本家。
アルノルト・ツヴァイク
Arnold Zweig
ドイツの作家。
シュテファン・ツヴァイク
Stefan Zweig
オーストリアのユダヤ系作家・評論家。伝記、歴史小説で知られる。池田理代子はツヴァイクの「マリー・アントワネット」を叩き台に『ベルサイユのばら』を描き、倉多江美は「ジョゼフ・フーシェ」を元に『静粛に、天才只今勉強中』を描いた。
この諮問委員会はこの諮問委員会は19名の委員と20人のスタッフとから成り、2年間の時間と200万ドルの費用をかけて報告をまとめた。
『日本大百科全書』には「報告に基づいてポルノグラフィーの販売・陳列・配布の禁止に関する法律をすべて撤廃した」とあり、『世界大百科事典』でも「成人に対するポルノグラフィーの販売、陳列、配付の禁止に関する法律をすべて撤廃するように勧告した。デンマーク、スウェーデン、イスラエル、イギリスなどの研究も同様な結論に達し、日本以外の先進諸国は1960~70年代にポルノグラフィーを解禁した。」と勧告・研究がポルノ解禁につながったような書きぶりであるが、我妻洋『社会心理学入門』(講談社学術文庫、1987)では、次のように書いてある。
1970年、委員会は700ページに及ぶ膨大な報告書をニクソン大統領に提出し、「成人についてはポルノをほぼ全面的に解禁すべきである」とのべた。ニクソン大統領は激怒して、この報告書をはねつけた。(p.104)
「はねつけた」報告書に基づいて「法律をすべて撤廃」することなどありそうにないが、本当のところはどうなのか?
だいたいジョンソン大統領が設置した諮問委員会が、何故ニクソン大統領に答申しているのか? アメリカ合衆国大統領にはリコールはなく任期は決まっており、任期内に答申の提出が行われるのが当然であり普通でもあるのに。
以下では、諮問委員会が提出した1巻の要約(これだけで700ページある)と9巻の研究報告書(Technical report)が「闇に葬り去られた顛末」を簡単に紹介する。
『世界大百科事典』(平凡社)の「ポルノグラフィー」の項では、このCommission on Obscenity and Pornography(猥褻とポルノに関する諮問委員会)が設置に至った経緯が次のように記されている。
「ポルノグラフィーを取り締まるためには,それが反社会的行動を誘発して有害であることを証明しなければならぬという世論が1960年代に高まった。そこで,アメリカではジョンソン大統領の諮問をうけて,19名の権威者と20名のスタッフが〈猥褻とポルノグラフィーに関する委員会〉をつくり,68年から2年間に200万ドルを費やして実証的研究を行ったが……」
しかし実際には、
「わいせつ文書及びポルノグラフィーの流通の実態はもはや放置しえない段階に至っており、連邦政府はそうした文書や書物が国民、特に青少年にとって有害な影響を及ぼしているのかどうか、またそれらをより効果的に取り締まる方法があるのかということについて、早急に検討を始めるべきである」との決議案が連邦議会で採択され、これに基づき諮問委員会の設置を大統領に求める法案もまた可決されたことによる。
1950年代末から60年代にかけては、これまで「わいせつ」とされ検閲されてきた文学作品が勝訴していった時代であった。たとえば1930年代から再三にわたって検閲・没収・出版者の逮捕にさらされてきたD・H・ロレンス『チャタレイ夫人の恋人』は1959年に、発送中の書籍を没収した郵政省が裁判の結果敗訴し、結局この年のベストセラーリストの2位となる売上げをあげた。1934年にパリで出版されて以来、アメリカ国内では禁書扱いだったヘンリー・ミラー『北回帰線』は1961年に無削除版が出版、多くの書店経営者が逮捕され発行元のグローブ・プレス社は60もの訴訟にさらされたが、1964年に最高裁の判決によりこの小説の合法性が確定した。同年には1820年以来発禁扱いであった、最初の近代的ポルノグラフィーされるジョン・クレランド『ファニー・ヒル』が出版され、当局はすぐさま没収する手段に出たが、これも裁判が行われ、1966年には最高裁判決により合法であるとの決着がついた。1965年に出版されたウィリアム・バロウズ『裸のランチ』が1966年に勝訴したのを境に書籍についてのこうした取り締まりは鳴りをひそめ、性表現の日常化と氾濫の時代が幕を開けた。
Allyn, David, Make Love, Not War – The Sexual Revolution: An Unfettered History. New York 2000,
これに対して「猥褻とポルノに関する諮問委員会」の設置はもともと、「より効果的に取り締まる」ことを狙ったものであり、実のところを目指すというよりむしろ、訴訟を通じてすでに達成されつつあった「ポルノ解禁」に対する反動の意味が強かったと見るべきであろう。
この設置意図からして、「ポルノは無害である」との諮問委員会の答申は受け入れ難いものであり、後に連邦議会は、ニクソン大統領とともに激しい言葉で非難し、答申の受諾を拒否することになる。
もともと政府の指示に基づき政府予算で作成された諮問委員会報告書であるにも関わらず、そのイラストレイデッド版の編者が「わいせつ物郵送謀議」で逮捕され有罪判決をうけるといった事件まで起こる始末であった。
Michael Hemmingson(2004). "An Interview with Earl Kemp of Greenleaf Classics" in
Lunch, L., & Parfrey, A. (2004). Sin-a-rama: Sleaze sex paperbacks of the sixties. Los Angeles, Calif: Feral House.
諮問委員会の設置にまで、時間を戻そう。
ジョンソン大統領は、この諮問委員会の設置にあまり乗り気でなかったらしい。ポルノの規制にせよ解禁にせよ、いずれの結論が出ても、それを巡る論争や政治的揉め事が持ち上がることが予想されたからだ。
このためジョンソン大統領は結論を引き伸したい動機があり、任期内に答申提出を求めることすらしなかった、と諮問委員会で影響力検討小委員会(effect panel)の委員長をつとめたLarsenは述懐している。
Larsen O. N.(1975). The Commission on Obscenity and Pornography: Form, Function, and Failure. in Komarovsky, M. (ed.) Sociology and public policy: The case of Presidential commissions. New York: Elsevier.
ともあれ1968年1月には18名の委員が任命されることとなった。法学者・裁判官6が名、宗教関係者4名、それに社会学者が4名、精神科医が2名が入っていた。
議会が予算を承認し、1968年7月にインディアナ大学の性化学研究所で最初の会合がもたれた。憲法学者でミネソタ大学の法学部長だったウィリアム・ロックハートが議長に選出された。
委員会には4つの小委員会(panel)が設置され、同時並行で議論は進められることになった。
(1)わいせつ文書やポルノグラフィーの取引、流通の実態を調査するtraffic and distribution panel
(2)わいせつ文書やポルノグラフィーの影響の有無を検討するeffect panel
(3)性教育をはじめとする社会政策について検討するpositive-approaches panel
(4)法律上の諸問題を検討するlegal panel
これら小委員会の報告を元に答申がまとめられた。答申には10項目あったが、いずれも委員全員の一致をみた者ではなく、多数委員の意見として採択されたものであった。
答申の中で最も強調されたことは、大規模な性教育の実施であった。
これに対してポルノグラフィーについての法的規制に関しては、「ポスのであろうが何であろうが、成人が読みたいものを読み、見たいものを見るという個人の自由は何人も鑑賞することができない」「そうした自由を制限する法律は、国法であろうと州法であろうと直ちに廃止されなければならない」と提言した。
その理由として、
(1)これまでの研究成果をみるかぎり、ポルノを見たり読んだりすることが犯罪や非行、性的逸脱、情動障害といった社会問題及び個人レベルでの不適応の主たる原因とはみなされないこと
(2)成人の間では、ポルノは娯楽や情報源として利用されている実態があること
(3)ポルノの法的規制が実効をあげていないこと
(4)世論調査の結果、国民の多数はポルノの法的規制に賛成でなかったこと
があげられた。
この答申が最終的に連邦議会と大統領とに手渡されたのは1970年9月30日だった。
10月13日、上院は60対5という大差で答申の受諾を拒否することを決議し、「諮問委員会は議会が求めたことについて適切な回答をしなかった。そのうえ、答申内容も十分な研究の裏付けを得たものではなかった」と批判した。
10月24日、ニクソン大統領もまた「答申内容を仔細に検討した結果、これは国民の道徳心を堕落させるものであり、私としては決して受け入れることができないものである」「諮問委員会は本来の任務を遂行しなかったと言わざるを得ない」というコメントを発表した。
文献 bibliography
猥褻とポルノに関する諮問委員会 報告書
(要約)
Barnes, C., & United States. (1970). The Report of the Commission on Obscenity and Pornography. New York: Bantam Books.
(研究報告書)
United States. Commission on Obscenity and Pornography. (1970-1971). Technical report of the commission on obscenity and pornography 9 vols.
v. 1. Preliminary studies --
v. 2. Legal analysis --
v. 3. The marketplace: the industry --
v. 4. The marketplace: empirical studies --
v. 5. Societal control mechanisms --
v. 6. National survey --
v. 7. Erotica and antisocial behavior --
v. 8. Erotica and social behavior --
v. 9. The consumer and the community.
(イラストレイテッド版)
United States., & Kemp, E. (1970). The illustrated presidential report of the Commission on Obscenity and Pornography. A Greenleaf classic, GP555. San Diego, Calif: Greenleaf Classics.
Komarovsky, M. ed.(1975) Sociology and public policy: The case of Presidential commissions. New York: Elsevier.
![]() | Sociology and Public Policy: The Case of Presidential Commissions (1975/09) Mirra Komarovsky 商品詳細を見る |
影響力検討小委員会(Effect Panel)の委員長Otto N. Larsenの述懐を含む
Lunch, L., & Parfrey, A. (2004). Sin-a-rama: Sleaze sex paperbacks of the sixties. Los Angeles, Calif: Feral House.
![]() | Sin-a-rama: Sleaze Sex Paperbacks Of The Sixties (2004/11) Brittany A. Daley、 他 商品詳細を見る |
逮捕されたイラストレイテッド版編者Earl Kempのインタビューを含む
三井宏隆(1990).「社会科学と社会政策 : ある大統領諮問委員会の顛末」『哲學 』90, 165-197.
その他
![]() | チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫) (1996/12) D.H. ロレンス 商品詳細を見る |
![]() | 北回帰線 (新潮文庫) (1969/01) ヘンリー ミラー 商品詳細を見る |
![]() | ファニー・ヒル (河出文庫) (1997/08) ジョン クレランド 商品詳細を見る |
![]() | 裸のランチ (河出文庫) (2003/08/07) ウィリアム・バロウズ 商品詳細を見る |
![]() | Make Love, Not War: The Sexual Revolution: An Unfettered History (2001/04/30) David Allyn 商品詳細を見る |
抜粋
ポルノグラフィー(ぽるのぐらふぃー)
pornography
人間の性または性的興奮の誘発を目的とする小説、絵画、映画、写真などの総称で、略してポルノともいい、伝統的な好色文学とは区別して現代的、西洋的なものについていうことが多い。西洋では18世紀にジョン・クレランドJohn Cleland(1709―89)の『ファニー・ヒル』(1748~49)、マルキ・ド・サドの『ジュスチーヌ』(1791)などが出てサドやカサノーバの快楽主義が流行し、ポルノグラフィーの黄金時代といわれたが、もっぱら一部の貴族や大ブルジョアのものであった。19世紀になり、印刷技術の発達と、中産階級が読書の能力と経済力をもつようになって市場が広がり、また写真が発明されるなどして、『蚤(のみ)の自伝』(1887)、『インドのビーナス』(1889)、『フロッシー』(1897)、『わが秘密の生涯』(1885ころ)などのほか、雑誌も『パール』『ブードア』など数多く発刊されておびただしいポルノグラフィーが氾濫(はんらん)したが、良風秩序を害するというので検閲制度も設けられるに至った。20世紀に入り、検閲は依然として行われたが、1960年代にアメリカでは、大統領ジョンソンの諮問を受けた19名の有識者の報告に基づいて、成人に対するポルノグラフィーの販売・陳列・配布の禁止に関する法律をすべて撤廃し、ついでデンマーク、スウェーデン、イスラエル、イギリスその他の諸国も1970年代にそれぞれ解禁した。(後略)
[ 日本大百科全書(小学館) ]
ポルノグラフィー
pornography
一般に,性的行為のリアルな描写を主眼とする文学,映画,写真,絵画などの総称。略してポルノporno ともいい,伝統的な好色文学などと区別して近・現代的なものを指すことが多い。語源はギリシア語の pornographos で〈娼婦 porn* について書かれたもの graphos〉を意味する。それはやがて,英語でいう obscene(猥褻(わいせつ))な文学のことになった。obscene の原義は,〈scene(舞台)からはずれたもの〉つまり舞台では見せられないもののことであるという。表に出せるものに対して,裏のものをポルノグラフィーというわけである。とすれば,〈裏本〉〈裏ビデオ〉などという現代日本におけるいい方もポルノグラフィーにふさわしいことになる。
しかし両者を分ける絶対的な規準はない。両者は検閲によって分けられるが,この検閲は時代と社会によって相対的に動いてゆくものである。したがってポルノグラフィーは,時代が定める検閲の境界と読者層との関係のうちにとらえられるべきなのである。検閲と読者層という面からポルノグラフィーを眺めると,その歴史は19世紀以前と,19世紀以降の二つに大きく分けることができるだろう。18世紀は過渡期である。この世紀は〈ポルノグラフィーの黄金時代〉ともいわれている。たしかに快楽主義が流行し,サドやカサノーバが性のユートピアを追い求めた。J. クレランドの《ファニー・ヒル》(1749),サドの《ジュスティーヌ》に対抗して書かれたレティフ・ド・ラ・ブルトンヌの《アンティ・ジュスティーヌ》(1798)などのポルノグラフィーの傑作がこの時代に書かれている。それにもかかわらず,ポルノグラフィーが社会的な問題となるのは19世紀になってからである。なぜなら,18世紀までは,ポルノグラフィーはもっぱら一部の貴族や大ブルジョアのものだったからである。
19世紀になって,中産階級の上層部が本を読む能力と経済力をもつようになったとき,ポルノグラフィーの検閲が問題になってくる。たとえば,《ファニー・ヒル》は出版されたときは,なんの規制も受けなかったが,1820年にアメリカでこの本を売っていた書籍商が処罰された。ニューヨーク州でこの本が解禁になったのは1963年であった。皮肉なことに,1964年になって,イギリスでこの本の処分をめぐって裁判があり,没収破棄の判決が出された。これからもわかるように,検閲に関しては,19世紀から20世紀の60年代まで連続した見方がつづいていたのである。
19世紀には複製技術の発達と市場の拡大によって,おびただしいポルノグラフィーがあふれた。また,写真の発明もいち早く利用され,19世紀半ばにはポルノ写真がかなり出回りはじめた。ビクトリア朝のイギリスの中産階級の間で特にポルノグラフィーが栄えたのは,この時代が表と裏を厳しく分けていたせいであった。ビクトリア朝の人々は,表では性的なものがまったく存在しないかのようにふるまっていた。特に女性や子どもは性的なものに触れないように守られていた。一般の女性は性的なことに無知で,子どものように無邪気であるのがいいとされていた。性的な言葉は家庭では使うことが禁じられ,〈脚 leg〉という言葉さえ無作法であるとされていた。表と裏を分ける指標の一つは陰毛であった。ビクトリア朝の芸術展にはおびただしいヌードが出品され,ひじょうにエロティックなものもあったが,陰毛を描かないという規則によってポルノグラフィーと区別されていた。現代においても,陰毛が見えるか見えないかが猥褻の規準となっているのも,われわれがビクトリア朝以来の性的道徳のパースペクティブの中にいることを示している。
あるものをないようなふりをして,表面から隠すというビクトリア朝の偽善的な道徳は,逆にすべてを裏側に押しこんだために,裏側の世界が巨大にふくれあがった。表面はまじめなビクトリア朝の紳士は,裏で娼婦とポルノグラフィーを愛好したのであった。I. ブロッホの《イギリスの性生活》(1912)によれば,19世紀では,1820‐40年,1860‐80年に特にポルノグラフィーが多く出版された。これははじめの時期は,ブルックス,ダンコンブ,次の時代に W. ダグデールという出版者が活躍したせいであったという。また,イギリスでのポルノグラフィーの需要が多かったので,パリやブリュッセルで印刷されて輸入されたものも大量にあった。《蚤の自伝》(1887),《インドのビーナス》(1889),《ローラ・ミドルトン》(1890),《フロッシー》(1897)といった本のほかに,ポルノ雑誌もたくさん出された。《パール》(1879‐82),《ブードア》(1883)などが有名である。ビクトリア朝の時代相をよく物語っている自伝的ポルノグラフィーの代表として,《わが秘密の生涯》(1885ころ,匿名),F. ハリス《わが生涯と恋》(1925‐29)をあげておこう。なお,19世紀はポルノグラフィックな芸術においても多産な世紀であった。A. ビアズリー,F. ロップス,F. von バイロスなどの作品がすぐれている。
20世紀に入っても,ビクトリア朝的検閲のある部分はそのままであった。1928年に D. H. ロレンスの《チャタレー夫人の恋人》がイタリアで出版されたとき,イギリスは国内での発売を禁止した。ポルノ産業は20世紀にますます大きくなった。現代の一つの特徴は,文学や芸術が表と裏の境界を意識的に利用してポルノグラフィックな想像力を刺激・消費しようとしていることである。ビクトリア朝からつづいたポルノの検閲は,1960年代に一部が解禁され,80年代にはさらに新しい段階にさしかかっている。
海野 弘
[特徴と社会への影響] W. アレンによると,猥褻性が美学的概念なのに対して,ポルノグラフィーは道徳的概念であるという。ポルノグラフィーは,偽善や上品ぶる感情の内面を暴露したものにほかならない。以下,その現代的意味について,アメリカを中心に記述する。
P. C. クロンハウゼン夫妻は,ポルノグラフィーの特徴をとらえるのに次の12項目を挙げている。全体の構成,誘惑,破瓜(はか),近親相姦,性行動を放任・奨励する両親,涜聖行為,淫(みだ)らな言葉,精力絶倫型男性,色情狂型女性,性の象徴としての黒人や東洋人,同性愛,鞭打ち。ポルノグラフィーの構成は,不道徳な影響を及ぼすような強烈なエロティック場面の連続で作られており,エロティックでない,気を散らす部分がない。ハード・コア・ポルノグラフィーは性交をあからさまに描いたものであり,ソフト・コア・ポルノグラフィーは性交シーンの偽装,フレンジー・ポルノグラフィーは異常性愛を扱ったもの,と分類されている。ポルノグラフィーの目的は,人間生活の基本的現実を描写するよりも,むしろ読者を性的に興奮させるために,エロティックな心像をひきおこさせることにあり,心理的催淫剤の役割をつとめる点にある。
ポルノグラフィーを取り締まるためには,それが反社会的行動を誘発して有害であることを証明しなければならぬという世論が1960年代に高まった。そこで,アメリカではジョンソン大統領の諮問をうけて,19名の権威者と20名のスタッフが〈猥褻とポルノグラフィーに関する委員会〉をつくり,68年から2年間に200万ドルを費やして実証的研究を行ったが,その報告書の中で委員会は〈性への興味はごくあたりまえの,健康で善良なものであり,ポルノグラフィー問題の大部分は人々が性に対して率直でおおらかな態度をとりえないことが原因をなしている〉と述べ,成人に対するポルノグラフィーの販売,陳列,配付の禁止に関する法律をすべて撤廃するように勧告した。デンマーク,スウェーデン,イスラエル,イギリスなどの研究も同様な結論に達し,日本以外の先進諸国は1960~70年代にポルノグラフィーを解禁した。ポルノグラフィー解禁運動は人間性解放や差別撤廃,精神・言論自由化の運動の一つであるが,国家権力が国民の要求によって解禁に譲歩することによって国家の本質についての問い直しを避け,その要求を無力化した,と考える見方もある。
ポルノグラフィーの心理的影響も科学的に調査されるようになった。ポルノグラフィーを見ても全員が興奮するとは限らず,研究者によって数値は異なるが,近年の調査によれば,男性の23~77%,女性の8~66%が性的興奮を示すにすぎない。その刺激は短時間しか持続せず,抑制によって反応を抑えることもできる。性映画の性的刺激効果は48時間以内に急速に弱まり,性生活に影響を与えない。毎日ポルノグラフィーを見せると興味はしだいに薄れ,1週間後には〈見あきた〉といい出し,3週間後には〈もう見たくない〉という飽和現象が認められる。嫌悪感を抱くかどうかについては,ランニング,割礼,ポルノグラフィー(性交)の各映画を見せて反応を調べると,快適な気分になるのは性交シーンが最高得点であり,不快感は性交シーンが最低得点である。デンマークでは,ポルノグラフィーが広まるとともに性犯罪が激減し,解禁後は3分の1に減った。アメリカの性犯罪者は,10歳代でポルノグラフィーを見る機会がなかった人に多いという。強姦者は,性をタブー視する家庭に育ち,その18%はエロティックな物品を持っていて親に叱られた経験者である。
性的な文書をポルノグラフィーだと考える傾向は,性行動に罪悪感を抱いている人ほど強い。欧米のポルノグラフィーには性交シーンを悪魔がのぞき見しているなどの形で罪悪感がつきまとっていることが多いが,日本の浮世絵春画や春本には罪悪感がみられない。これは,宗教や民俗のちがいによると思われる。
小林 司
1968年、ジョンソン大統領は「ワイセツとポルノに関する諮問委員会」を設置してそれにポルノ解禁問題をはかった。この諮問委員会は19名の委員と20人のスタッフとから成り、2年間の時間と200万ドルの費用をかけて、あらゆる種類のポルノの実態と、その社会に及ぼす影響を調査した。委員会の依頼を受けたノルウェーの心理学者カチンスキー(Katchinskey)は、ポルノが解禁になったデンマークにおいて、のぞき見とか幼児への性的な悪ふざけのような性犯罪は年々めだって減少したのに対して、強姦やサディズム的行為はぜんぜん変化しなかったことを認めた。つまり、ポルノ映画とかポルノ雑誌を鑑賞することは、ある種の性行動の代償にはなっても、他の性行為の代償にはならなかったわけである。ただし、ポルノに刺激されて性犯罪が増えたと言う事実は、まったく認められなかった。カチンスキーはこの点をはっきりと報告書に書いた。1970年、委員会は700ページに及ぶ膨大な報告書をニクソン大統領に提出し、「成人についてはポルノをほぼ全面的に解禁すべきである」とのべた。ニクソン大統領は激怒して、この報告書をはねつけた。(我妻洋『社会心理学入門』(講談社学術文庫,1987)上pp.103-104)
![]() | 社会心理学入門〈上〉 (講談社学術文庫) (1987/10) 我妻 洋 商品詳細を見る |













