AIやロボティクスが進めば、自動的に社会制度までひっくり返る、というわけではない。ただ、いまの資本主義が前提にしてきた「労働と価値の結びつき」は確実に変化していくだろう。
労働の必要性が下がり、生存はベーシックインカムで保証され、人は必ずしも働かなくてもいい、という未来像は、マルクスが描いた最終段階の社会に似ている。
生産力が極限まで発展し、必要最小限だけ働けばよい世界。AIがその生産力の爆発を現実味のあるものにしているから、「共産主義っぽい」とも見える。
でもAIはあくまで生産手段であって、制度そのものではない。問題は、それを誰が所有し、利益をどう分配するか。
巨大テック企業がAIを握り、労働の価値が下がり、富がさらに集中する未来も十分あり得る。いわば「テック封建制」で、これは共産主義とは真逆。
AIで生まれた収益に課税し、再分配を強化し、ベーシックインカムを広げる方向もある。これは福祉国家のアップデート版に近い。
AIインフラやデータを公共財として扱うモデルまで進めば、ようやく共産主義的な要素が濃くなる。でもそこまで行くかどうかは、技術の帰結ではなく、政治の選択だ。
資本主義は「労働して賃金を得て、それを消費する」という循環で回ってきたが、AIが知的労働や創造的領域まで代替し始めると、「人間が働くこと=価値を生むこと」という前提が弱くなる。
歴史的には、蒸気機関も電力もITも、資本主義を壊すどころか強化してきた。資本主義はかなり柔軟で、技術を飲み込みながら姿を変えてきた。AIも「資本主義2.0」に吸収される可能性は高い。
現実的な未来像は、全面的な共産主義でも、完全な自由放任でもない。
一部の職種が消え、高度スキル層に富が集中し、社会不安が増し、その圧力のなかで最低所得保障や再分配が少しずつ強まる。つまり、より強い再分配を組み込んだ資本主義に近づく、という線がいちばんありそう。