人口バブルと食料バブル
現実的には、現在も何億人もの人々が飢えているのは、世界人口の増加に食料増産が追い付かないからでは無く、食糧分配の偏りによるものだと言う方が的確でしょう。即ち、一人あたりの食料は明らかに増えているのです。それなのに富の分配の不公平によって、食料を十分に買えない貧しい層が沢山現れ、さらに悪い事に、その貧しい層…小作人達・・が、産業による土地の囲い込みによって土地を追い出され、自給的農業も出来なくなって、食料は購入しなければ買えなくなったからです。
しかしそれ以前に、「増加する人口を養う為に食料増産は必要だ」と言う事はかなりおかしな発想ではないでしょうか?百歩譲って、人口の増加に食料生産が追い付かないと言う、政府や多国籍農業ビジネス企業などの言う通りだとしても、食料の増産によってますます人口は増えるばかりでしょう。そして、更に食料生産を増やせばまた人口が増える・・と言うイタチごっこを繰り返すでしょう・・・悪循環です。しかしそれも永久に繰り返すわけではありません。地球は有限ですから、ある一定量・・・限界の量からは、人口も食料生産も増やす事は出来ません。増加する人口に追いつく為に集約的化学農業に移行すると言う事は、人口と食糧増産の発散的スパイラルに陥り、最後は限界に達して、非常に大量の食料不足と数多くの飢餓をもたらす事になりましょう。更に悪い事に、化学農業は、持続可能ではありませんから、土地の生産量は落ちてきます。生産性が落ちないように化学肥料や農薬を使えば使うほど、農地は疲弊します。その場限りの「一時凌ぎ」で生産性が上がっても、そのうちに生産性も下がってきて、最後に耕地は砂漠化するのです。
この典型的な例が「緑の革命」でしょう。途上国を中心に、高収量品種を植えて、肥料を大量に投入し、従来よりも遥かに土地の生産性を上げて、作物の増産に成功しましたが、これによって途上国の農業は世界市場の中に組み込まれました。そして、毎年毎年より強い化学肥料、より強い農薬を用いなければ土地の生産性は下がる一方・・と言う悪循環に陥っています。緑の革命は「一時的な食料増産バブル」だったのです。この「一時的な食料増産バブル」を再び起こそうとしているのがモンサントを始めとした多国籍農業ビジネス企業と言えましょう。
永遠の経済成長が不可能なように、当然、限りない人口増加も不可能で、限りない食料増産も不可能です。持続可能な社会の条件は、食料も人口も安定している事でしょう。「増加する人口を養う為に食料増産は必要だ」等と言う詭弁に惑わされないようにしなければなりません。
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