放射能の消滅処理が不可能ならば・・
記事【放射能の消滅処理】2023/04/03 にも書きましたように、放射能の消滅処理は、理論的に不可能で無いとしても、実質不可能です。
その場合、原子力は石油の代替になるのか、また生態系や人間社会にとってどの様な意味があるのかを考えてみようと思います。
猛毒の濃度に比例するように、ガン、奇形、出産異常を引き起こし、その濃度が高くなると、固有の急性障害を起こし、死にも至らしめるような物質といえば、ダイオキシンやPCBのような化学物質かまたは放射性物質でしょう。 猛毒の化学物質は、十分に低濃度でも無い限り、生産・移動・使用・廃棄の全てが禁止されています。 しかし一方放射能に関しては、生産・移動・使用・廃棄に関しての扱いは、猛毒の化学物質と同程度のリスクに対して、不当に緩い扱いがされています。原発稼働中には、毎日大量に放射能が生産され、運搬され、使用され、廃棄されているのです。猛毒の放射性物質を、ダイオキシンのような猛毒の化学物質と同程度に厳しく制限すれば、それだけで原発は禁止されるべきものです。
一方、放射能の消滅処理が不可能ならば、原発のバックエンド処理(発電が終わった後の原発の処理)のうち、廃炉処理などを除いた放射性廃棄物の処理処分だけで、投入エネルギーが産出エネルギーを上回り、エネルギーの浪費(石油の浪費)になるだけです。
室田武氏の『原子力の経済学』には、アメリカの研究開発局のデータを用いて行った試算結果が載っています。それをもっと原発に有利になるように緩く見積もってみます。 出力100万kwの原発で、耐用全期間にわたって産出する電力は、多めに見積もって140兆kcal。放射性物質管理用エネルギーを、0.02兆kcal /年 としても 140/0.02=7000年 管理すれば、その原発で産出されたエネルギー以上のエネルギーを投入しなければなりません。プルトニウム239の半減期は2万4千年ですから、仮に半減期の10倍の24万年間管理するなら、240000/7000≒34 すなわち、産出されたエネルギーの30倍以上のエネルギーを投入しなければならない計算になります。 EPR:エネルギー産出比[産出エネルギー/投入エネルギー]はなんと0.03程度です。馬鹿馬鹿し過ぎます。エネルギーを浪費して化石燃料の枯渇を早めるだけです。
以上、放射性元素の消滅処理が不可能な場合、
放射性物質の毒と、放射性物質のバックエンドに関して論じました。放射能の消滅処理はほぼ間違いなく不可能です。だからそれだけでも原発はやる意味が無いばかりか、人類、生態系に害毒を及ぼす悪魔の科学技術である事がわかります。これを推進する連中は、人類の殲滅を考えているとしか思えません。
参考文献:
放射能の毒性に関して:原発安楽死のすすめ 槌田敦 学用書房(1992)
放射性廃棄物の処理に要するエネルギーに関して:原子力の経済学 室田武 農日本評論社(1986)
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