国会図書館 電子書籍収集は時代の要請だ
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電子書籍・雑誌などの電子出版物も、国民の知的活動の貴重な資産だ。デジタル時代に見合った形で、納本制度のあり方を見直していくのは自然な流れだろう。
国立国会図書館は、国内で刊行された全ての書籍や雑誌を所蔵することになっている。出版社が納本することが、法律で義務づけられているからだ。
ただ、国立国会図書館法ができた1948年当時、電子出版物の出現は想定されていなかった。
2013年から、無料の電子書籍などが納入対象になり、今月1日からは法改正によって、出版社が一般に販売している有料の電子出版物の納入も義務化された。
出版科学研究所によると、2021年の日本の電子出版物の推定販売金額は4662億円で、前年よりも18・6%増えた。紙を含む出版市場全体の3割に近い。
電子版のみで売られている書籍や雑誌も増えているが、これらは電子書店が販売を終了したり、システム障害が起きたりした場合、閲覧できなくなる恐れがある。
電子出版物の散逸を防ぎ、適切に保存することは、デジタル化の進展で新たに生まれた課題だ。
国会図書館は納入された出版物を国民の共有財産として保存・継承し、利用者に提供している。電子出版物の収集や書誌データの整備でも中心的役割を果たすことが期待される。
出版業界からは、国会図書館に納入すると、そこからインターネットを通じて内容が外部に流出し、著作権が侵害されかねないとして危惧する声が出ていた。
新たな制度の運用にあたり、国会図書館は電子出版物の閲覧を館内の端末に限定し、複数の人が同時に閲覧することもできないようにしている。国会図書館のサイトに公開する出版物は、著作権者が許諾したものに限るという。
納本制度は、図書館と出版社側の信頼関係がなければ成り立たない。双方が議論を重ね、より良い制度にしてもらいたい。出版社団体が独自に持つ電子書籍保存システムとの連携も重要だろう。
国会図書館は既に、公的機関のウェブサイトの資料収集を進めている。私立大学や政党などのウェブサイトについても協力を呼びかけている。
民間企業のサイトや小説などの投稿サイトも、時代を映す価値があるとして、保存対象になるかもしれない。ネット上にあふれる情報から何を収集していくか、今後も検討を重ねる必要がある。