ニチガクの教室閉鎖、生徒に支援の輪…別の予備校などが自習室開放や無償指導
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大学受験予備校「ニチガク」の教室が閉鎖された問題で、運営会社「日本学力振興会」(東京都新宿区)が10日、東京地裁に破産手続き開始の申し立てを行ったことが代理人弁護士への取材でわかった。入試が目前となる中、ニチガクの受験生には他の予備校が個別指導や自習室開放といった「救済」に乗り出している。
突然の貼り紙
「信頼していたのに……」。9日、西新宿にあるニチガクの教室に、参考書を引き取りに訪れた私立高3年の男子生徒(18)はそう言ってうなだれた。
通い始めたのは一昨年夏。自習室で大学生に教えてもらえる環境を気に入っていた。最近は朝晩ここで勉強していたが、4日朝、何の前触れもなく教室閉鎖を告げる文書が正面玄関に貼り出された。「大切な時期に裏切られた。ショックだった」。大学入学共通テストは18日に迫り、男子生徒は「気持ちを切り替えて臨むしかない」と前を向いた。
高校3年の女子生徒(18)は、急きょ近くに自習スペースを借りたという。「悲しいというより、びっくりした」。浪人中の女子生徒(19)は「もっと早く対処できなかったのか」と憤った。
メンタルケア
ニチガクの閉鎖で準備の場を失った生徒らには、別の予備校や学習塾などがサポートに乗り出している。
新宿区の予備校「
家庭教師の派遣事業を手がける「学研エル・スタッフィング」は8日に無料の相談窓口を設置した。高校3年生などに、受験日まで最大4回、無償の個別指導を提供する。大手予備校「河合塾」も受験生向けに自習室の利用や出願先の相談を無料で実施。高校1、2年生には入塾料を減免する方針だ。
少子化、塾の倒産最多53件…昨年
東京商工リサーチによると、日本学力振興会は1983年設立。一時は200人超の生徒が在籍したが、直近は約130人に減っていた。負債総額は約1億円。
少子化で子ども1人にかける教育費が増える中、学習塾業界は新規参入が相次ぎ、オンラインなど学習形態の多様化もあって競争が激化している。昨年の倒産件数は過去最多の53件、負債総額は約117億円(いずれも速報値)に上った。
大学ジャーナリストの石渡嶺司さんは、「生徒への影響を最小限にとどめるため、経営譲渡などを早期に検討すべきだった。ニチガクの対応はあまりに不誠実だ」と批判し、「学習塾は経営状況が不透明なケースが多く、生徒や保護者が優良な塾を選べるよう、情報開示のルールを設ける必要がある」と話している。