強い残留力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 20:33 UTC 版)
詳細は「核力」を参照 宇宙の全てのクォークが、前述のように、距離の影響を受けずに他のクォークと引きよせ合うわけではない。色の閉じ込めにより、強い力が距離減衰なく作用するのはクォークのペアの間のみで、束縛されたクォークの集合(ハドロン)においては、全体の色荷は基本的に打ち消(cancels out)され、その結果、力の作用が限定されてしまう。故に、クォークの集合(ハドロン)はほとんど色荷を持たないように見え、強い力はハドロンの間ではほぼ無かったことになる。しかし、この打ち消しは完全とまではいかず、残留力(後述)が残る。この残留力は、距離により急激に減少し、そのため非常に短い範囲(実質的には数フェムトメートル)のものである。これは「無色」のハドロンの間の力として現れ、強い核力や、あるいは単に核力と呼ばれることもある。 核力は、中間子やバリオンとして知られるハドロンの間に作用する。この「強い残留力」は作用が間接的で、まずグルーオンの集合(これは仮想的なパイ中間子とロー中間子を形作る)が送受され、それにより同一の原子核(プロチウムより大きいもの)を共にする核子の間で力が伝達される。 強い残留力は、前述の通り、強い力がクォークを結合させ陽子と中性子を構成させた後の、わずかな残り物である。同じ力であっても、中性子と陽子の間ではとても弱いものとなるが、それら核子の内部でほとんど無効化されてしまうからである。この状況は、中性原子の間に作用する電磁気力(ファンデルワールス力)が、原子核に電子を結びつけ原子を形成する電磁気力よりも、はるかに弱いことと同じである。 強い力そのものとは異なり、強い残留力は、強度の減衰があり、距離により急速に減衰する。その減少度合いは、近似的には距離の負の指数乗だが、簡単な式は知られていない(湯川ポテンシャル参照)。原子核内の陽子の間において、引力として残留力の急速な距離減衰と、斥力として電磁気力の残留力よりも 控えめな 急速な距離減衰の両方が作用していることは、大きな原子核(例えば、原子番号が82(鉛)よりも大きな全ての原子核)における不安定性の原因になる。 核力は、強い相互作用そのものよりは弱いが、(遷移によりガンマ線が生じるなど)非常に高いエネルギーを持っている。原子核の質量は、核子1つ1つの質量の総和とは有意に異なる。この質量欠損は、核力にともなうポテンシャルエネルギーによるものである。質量欠損の差が、核融合や核分裂の動力源となる。
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