巻頭特集は「アメリカンV8に点火せよ!」 『CG classic Vol.10』絶賛販売中

2024.10.03 From Our Staff 今尾 直樹
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『CG classic Vol.10』
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巻頭特集に「アメリカンV8に点火せよ!」を据えた『CG classic Vol.10』が発売されました。その見どころを同誌の今尾直樹副編集長にアピールしてもらおうと思ったのですが、やはりいつもの調子になってしまい……。ご一読後にぜひお買い求めいただけますと幸いです。

巻頭を飾るのは、フォード製7リッターV8ユニットを搭載する「シェルビー・コブラ427」。
巻頭を飾るのは、フォード製7リッターV8ユニットを搭載する「シェルビー・コブラ427」。拡大
スティングレイの愛称を持つ「コルベットC2」はアメリカのスポーツカーの象徴的存在。GM製5.4リッターV8エンジンは350PSを生み出す。
スティングレイの愛称を持つ「コルベットC2」はアメリカのスポーツカーの象徴的存在。GM製5.4リッターV8エンジンは350PSを生み出す。拡大
“ポニーカー”の2台。1967年製「フォード・マスタング ファストバック」と1969年製「シボレー・カマロ」。
“ポニーカー”の2台。1967年製「フォード・マスタング ファストバック」と1969年製「シボレー・カマロ」。拡大
イタロ-アメリカンの快作、「デ・トマゾ・パンテーラ」のデザインはカロッツェリア・ギア。フォード製V8ユニットをミドシップする。
イタロ-アメリカンの快作、「デ・トマゾ・パンテーラ」のデザインはカロッツェリア・ギア。フォード製V8ユニットをミドシップする。拡大

アメリカンV8を乗り尽くし語り尽くす

「フェラーリを打ち負かすって? フォードで?」

「そうだ」

「開発にどれだけかかる? 200年、いや300年か?」

「90日だ」

というのは、2020年1月に日本で公開された映画『フォードvsフェラーリ』での、クリスチャン・ベイル演じるケン・マイルズとマット・デイモン演じるキャロル・シェルビーとのダイナーでのやりとりである。1960年代半ばに繰り広げられたルマン24時間耐久レースでの激闘を、ハリウッド流に再現したこの映画をドキドキ興奮しながらご覧になった方もいらっしゃることだろう。

フェラーリは競争のために生まれたサラブレッドにして、高級スポーツカーの代名詞。生まれながらの貴族的なクルマだ。対するフォードは、自動車を流れ作業によって大量に生産し、フォードの工場労働者でも買える低価格を実現した大衆車の代名詞であり、人類史上初めて豊かな大衆社会を生み出した本人である。駄馬がサラブレッドを、平民が特権階級を打ち負かす! というストーリーはアメリカンドリームそのもの。『ロッキー』しかり、チャンスはだれにでも与えられている。それがアメリカの建前なのだから。

その打倒フェラーリを任されたキャロル・シェルビーが、イギリスの中型スポーツカー「ACエース」に手を加え、フォードV8を押し込んでつくったのが「シェルビー・コブラ」である。1962年に260ci(キュービックインチ)、すなわち4261ccのフォード製スモールブロックV8を搭載した「コブラ260」がまずは誕生し、75台が生産された。ついで、排気量を4.7リッターに拡大した「コブラ289」に発展。同時代の「フェラーリ250GT」や「ジャガーEタイプ」と同等の最高速と、これらをしのぐ加速性能を誇ったコブラ289は、FIAスポーツカーチャンピオンシップに参戦し、1965年に念願のチャンピオンの座を獲得。合計580台が生産されるヒット作となる。

キャロル・シェルビーはさらにNASCAR用の427ユニット、6997ccを搭載した「コブラ427」を開発し、そのコンペティション仕様を1965年の早々に100台つくってFIAのグループ3 GTのホモロゲーション取得を目指す。ところが期日の4月29日までに51台しか完成しておらず、GTとしての公認はかなわなかったという。

詳細は、絶賛発売中の『CG classic Vol.10』の巻頭特集「アメリカンV8に点火せよ!」を熟読していただくとして、この51台のうちの1台が、Vol.10の表紙にも登場している「コブラ427コンペティション」、シャシー番号CX3005である。

2024年7月下旬、モビリティリゾートもてぎレーシングコースの東コースで行われたこのレース仕様のコブラ427の取材を筆者も見物に行った。晴れたり曇ったりの取材日和で、猛暑の夏としてはわりかし過ごしやすかった。操るは2018年夏の創刊以来、『CG classic』の編集長として獅子奮迅する吉田 匠さん。490HPの最高出力を絞り出す6997ccのフォードV8 OHVは落雷のようなサウンドをサーキットにとどろかせ、60年も前の自動車とは思えぬ加速っぷりで目の前を駆け抜けていく。

レース用に仕立てられたエンジンとはいえ、基本的には大衆車ブランドであるフォード製V8である。シボレーの低価格6気筒に対抗すべく、フォードがアフォーダブルなV8を送り出したのは1932年のことで、200万台目のV8フォード車は1935年6月に組み立てラインを出たというから驚く。フォードはV8モデルを「カローラ」みたいに量産していたのだ。ちなみにこのV8は1953年まで生産され、次の世代にバトンを渡している。

デイヴィッド・ハルバースタムの『ザ・フィフティーズ』(新潮社)によると、ゼネラルモーターズ(GM)がフォードに負けじと、エド・コールをリーダーに指名して新規V8の開発プロジェクトをスタートさせたのは1952年5月だった。のちに問題作の「コルヴェア」を手がけ、GMのトップに就任する異才エンジニアのエド・コールは、このときシボレーの技術者を850人から3000人に増やし、当時のアメリカのGNPの5分の1に匹敵する莫大(ばくだい)な予算を投じて、軽量で高出力を発生する、最高の4.3リッターV8を完成させる。

アメリカのフツウのひとびとは、大排気量、大馬力で、静かでスムーズなV8を搭載する、よその国から見れば、ものすごく大きくて豪華でぜいたくなフォードやシボレーで通勤通学していた。そのV8はフェラーリを打ち負かすポテンシャルをも持っていた。

秋の夜長、そんな時代にちょいとばかしトリップしてみるのはいかがでしょう。『CG classic Vol.10』の「アメリカンV8に点火せよ!」では、コブラ427コンペティションのほか、「シボレー・コルベット スティングレイ(C2)」「フォード・マスタング」&「シボレー・カマロ」「デ・トマゾ・パンテーラ」「ブリストル410」、そして「フォード・ブロンコ」と、アメリカ車に限定することなく、アメリカンV8搭載車を取り上げている。

私自身は、これらのうち、C2コルベットの助手席と、1967年型マスタングと1969年型カマロの運転席を体験した。この時代のアメリカ車は大味というより、繊細でエレガントで、純朴だと個人的には思った。

特集以外にも「ランチア・フラヴィア クーペ1.8」「ランボルギーニ・イスレロ」「ロールス・ロイス・コルニッシュ クーペ」「メルセデス・ベンツ300SEL 6.3」「プジョー504」の試乗記が並んでいる。定価は2420円(税込み)。ネットでポチリ。寝室に1冊。リビングに1冊。蔵書用に1冊。贈り物に1冊。『CG classic』で夢のひとときを。

(CG classic副編集長 今尾直樹)

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『CG classic vol.10』

発行:株式会社カーグラフィック
定価:2420円
A4変形/平綴じ/132ページ

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