高層マンションに引越したとして火災が起きたら、あなたはどのように対処すべきか知っていますか?高層マンションの火災に対する構造的な問題とはどんなものか、火災が起きた時の正しい避難の仕方や火災保険が適応される状況など火災は身近ではないせいか意外と忘れがちです。そこで今回はマンション火災の基礎知識について紹介します。
火災が起きてもパニックにならないように考えられた、高層マンションの耐火構造
全国における共同住宅での火災件数は2020年で約3300件起きており、そのうち、建物火災の原因の1位~3位(全体の約30%)がコンロ、タバコ、放火という人災である以上、高層マンションでも火災のおそれはあります。
高層マンションで火災が起きた時に危険なのはパニック状態になることですが、知っておきたいのは、マンションなどの高層建造物は建築基準法や消防法で「耐火構造」が義務付けられていることです。
例えば、コンクリートの内側に断熱材を施工する内断熱工法では壁、外壁、柱、床、梁、屋根、階段において石膏ボードや鉄鋼モルタル、グラスウールなどの材料を組み合わせることで耐火性を高めています。これら耐火構造で造られた内部は30分~3時間といった耐火時間が定められており、逃げ遅れや延焼を防ぐようになっています。
●火災被害を最小限にするための「防火区画」
また、火災や煙を一定の範囲内で食い止めるための「防火区画」の設置も建築基準法によって義務付けられています。防火区画は高層マンションの11階以上には必ず設置されており、防火区画の面積は200㎡以内とし、仮にマンション内で火災が発生しても、限られた面積の焼損で食い止められるようになっています。
さらに、高層マンションでは室内のカーペットやカーテンなども難燃性のものを設置することが消防法で定められています。その他、11階(または高さ31m)以上の建物にはスプリンクラーや非常用エレベーターの設置が義務付けられるなど、あらゆる対策が施されています。
高層マンションでは仮に火災が起きても初期段階で冷静になれば被害を最小限に抑えられるようになっています。パニックにならず冷静に対処、避難することを心がけましょう。
マンションで火災が起きた際に行うべき初期行動とは?
火災に強いとされるマンションですが、それだけに火災が起きた時にどのように対処すれば良いか理解できていない人も多いのではないでしょうか。マンションに引っ越した際には、以下の対処法について事前に確認しておきましょう。
●火災を発見した際に行うことは4つ
1.大声で叫んで火事が起きていることを伝える
一番初めにできることはこれです。まずは周囲に火事が発生していることを知らせましょう。
2.消防に通報する
火が見える、煙が発生しているという時には迷わず消防に電話をしましょう。一刻も早く対処することが延焼を防ぎます。
3.火災報知器を鳴らす
普段からマンション内の火災報知器がどこにあるかチェックしておきましょう。火災報知器を鳴らすことで、確実に周囲に火災を知らせることができます。
4.初期消火活動を行う
消火器は共用部の廊下など、歩行距離20m以内ごとに設置されています。防災訓練で消火器を使ったことのある人も多いはずなので、小さな火であれば消火器で消すことができるでしょう。
状況によってはすぐに避難すべき場合もありますが、マンションは上記のように延焼を防ぐ耐火構造でできているので、余裕があれば、他の人の命を守るためにも、身の安全を確認した上で上記4つの行動をしましょう。
マンションで火災が起きた時の正しい避難方法
マンションで火災が起きた場合に一番怖いのは煙を吸い込むことです。これを念頭に以下の避難方法を覚えておいてください。
●避難の際には鼻と口をマスクなどで覆う
マンションの高層階に住んでいる際は下階から煙が上がってくることがあります。煙をなるべく吸わずに避難するには、防煙マスクがあると一番良いですが、ない場合はタオルやハンカチ、マスクで鼻、口を覆って避難します。水で濡らすとより効果的です。
●黒い煙が出たら要注意!姿勢を低く!
火災での死亡原因のほとんどが煙による有毒ガスの吸引です。火災の初期の段階では白い煙ですが、だんだんと黒い煙に変わってきます。この煙には主に一酸化炭素と呼ばれる有毒ガスが含まれており、吸い込むと非常に危険です。しかも一酸化炭素は無色・無臭なので注意が必要となります。
煙は上に溜まっていきますので、煙が見えたらマスクなどで鼻と口を覆い、這うくらいの低い姿勢で素早く避難しましょう。
●避難の際には窓やドアは閉める
近くで火災が発生して避難する場合には余裕がないかもしれませんが、部屋の窓、ドアは閉めてから避難しましょう。窓やドアを閉めることで空気がなくなっていくので延焼を防ぐ効果があります。
●避難は非常階段または避難ハッチから
高さが31mを超える高層マンションには非常用エレベーターが設けられていますが、火災発生時には避難階で自動停止するようになっています。そのため、避難時にはエレベーターは使用せず、基本的には避難階段を使いましょう。またベランダ中央付近に設置されている避難ハッチを使いましょう。避難ハッチは下階に降りられるハシゴが設置されています。
意外と知らない火災保険の適用条件とは?
住宅ローンを利用する際には強制的に火災保険に入りますが、賃貸マンションの場合は火災保険に入っていない人もいるのではないでしょうか。もし、賃貸の場合で火災保険に加入していない場合は、加入しておく方が無難です。
例えば火災の被害者になった際、「失火責任法」という法律によれば、失火者(火事を起こした人)に重大な過失がない場合、失火者に損害賠償の責任はありません。「重大な過失」とは、放火や寝タバコといった明らかな落ち度であり、例えば出火原因が、近年よくある「スマホの充電器からの出火」など製品に原因がある際は過失とされない可能性があります。その場合、失火者に損害賠償の責任はありません。また、近隣の火事が風で煽られて延焼した際なども同様にあなたの自宅が燃えたことの責任はないので損害賠償の責任はなしとなります。
また、タバコの不始末など自分の過失で火災の加害者となった時には、火災保険のオプションにある個人賠償責任保険に入っていればカバーされます。
火災保険は自動車保険と同様、損害保険に該当し、カバー範囲は火災だけではなく、風災、水災、落雷、雹(ひょう)、雪災などの自然災害、盗難による損害も含まれます。建物の所有者であれば建物と家財、賃貸の場合は家財の損害分がカバーされます。ただし、地震を原因とする火災は地震保険でないとカバーされないので注意が必要です。
マンションは火災に強いと高をくくらず用心を
「耐火構造」で建てられた高層マンションですが、決して用心を怠ってはいけません。
引っ越す際には、マンション防火対策や避難の仕方、火災保険の適用範囲などについて見直して適切な対処ができるようにしておきましょう。
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