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アースと漏電ブレーカー


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前回の記事では、家電のアースと、漏電についてお話しました。

“アースによって、感電の危険は減らせるが、電流の遮断はできない” という結論で終わっています。

今回は、“漏電ブレーカー (漏電遮断器)” のお話です。

漏電と一般的なブレーカー

漏電していても、流れる電流が過大でなければ、一般的なブレーカー (配線用遮断器) は動作しません。

家庭で使われるブレーカーは、20A (アンペア) を超えると動作 (遮断) するものが多いです。

しかし、人体は、50mA (ミリアンペア) (0.05A) の電流でも危険とされます。

人体に危険な電流が流れたからといって、ブレーカーの動作電流に達しなければ、動作しないのです。

漏電ブレーカー

ここで、“漏電ブレーカー (漏電遮断器)” の登場です。

漏電ブレーカーは、大地に電流が流れる “地絡 (ちらく)” を感知し回路を遮断するブレーカーです。

漏電ブレーカー

これが漏電ブレーカーです。テストボタン (写真の緑の) が特徴。

テストボタンを押すと、回路が正常に遮断されることを確認できます。(間違って押さないように……)

漏電ブレーカーは、製品によって、感知する漏電の電流値 (感度電流) と動作に要する時間 (動作時間) が違います。

感度が良く、動作が速いほど安全ですが、不用な動作をすることがあり、使用する機器やほかの漏電ブレーカーとの兼ね合いで選びます。

また、漏電による地絡のほか、過電流や単相3線式の中性線欠相 (断線) を感知して遮断する製品もあります。

漏電ブレーカーは 漏電しただけでは動かない

漏電ブレーカーは、電流が大地に流れる “地絡” を感知して動作します。

決して、ケーブルや家電からの漏電そのものを感知するのではありません。
漏れた電流が大地に流れなければ、漏電ブレーカーは動作しないということです。

次のようなケースでは、漏電ブレーカーが動作しないので注意が必要です。

  1. 家電の内部で漏電し、外装が充電 (のちほど詳しく)
  2. ケーブルやコードが損傷し、非接地側と接地側が短絡 (ショート)
  3. コンセントとプラグの間に積もったホコリが炭化して、非接地側と接地側が短絡 (いわゆるトラッキング現象)

漏電ブレーカーという名前ですが、地絡が発生しなければ、漏電していても動作はしません。(これだけは覚えて)

漏電ブレーカーがない分電盤もある

漏電ブレーカーは、分電盤についていることが多いです。

分電盤

↑この写真なら、真ん中のやつが漏電ブレーカーです。(緑ボタンの)

漏電ブレーカーのない分電盤

ただし、古い分電盤では、漏電ブレーカーがないこともあります。

ないよりはあったほうが安全です。

漏電ブレーカーの原理

使う上ではどうでもいいですが、漏電ブレーカーの原理としくみを書いておきます。
ちょっと難しいので、興味のある人だけ読んでください。

電気の性質のひとつに、“回路中の任意の分岐点に流れ込む電流の和と、そこから流れ出る電流の和は等しい” というのがあります。(キルヒホッフの第一法則)

漏電なし

↑つまり、行きの電線と、帰りの電線の電流の大きさが同じでないとおかしいのです。

漏電あり

もし、行きと帰りで合わないということになれば、それはもう間違いなくどこかに漏れ出ていることを意味します。これが漏電による地絡です。

漏電ブレーカーは、この電流の差を電磁的に検知することで、漏電を見つけます。

漏電ブレーカーのしくみ

漏電ブレーカーの特徴は、“零相 (れいそう) 変流器” です。

零相変流器のイメージ

零相変流器のイメージです。

零相変流器は、輪っか状の鉄心にコイルが巻いてあり、その輪の中を電線が通っているという構造です。

電線の本数は、単相2線式では2本、単相3線式なら3本です。(どちらかは、家によって違います)

上で説明したとおり、漏電がなければ、行きと帰りの電流は等しくなります。

それらの電流の向き (ベクトル) は逆ですから、足し合わせるとゼロになるはずです。

この状態では、何も起こりません。(正常)

で、漏電によって、行きと帰りの電流のバランスが崩れると、ベクトルの和がゼロになりません。

そうなると、鉄心が電磁石みたいになり、巻いてあるコイルに電圧が発生します。(中学校で習った電磁誘導です)

コイルから流れた電流を検出することで、漏電を感知しています。

テストボタンは、零相変流器を迂回 (うかい) する回路のスイッチとなっており、これが閉じると、電線間の電流バランスが崩れるしくみです。
漏電ブレーカーが正常であれば、回路は遮断されます。

また、こういうしくみのため、電流の大きさと向きが常に一定である直流では動作しません。
ソーラー発電などへの導入には注意が必要です。

こんなの覚えなくていいです。

漏電ブレーカーとアース

漏電ブレーカーがあっても、家電が接地 (アース) されていなければ、作動 (遮断) しません。

この場合、漏電している家電に触れて感電してから、初めて動作します。

これ、重要です。

アースと漏電ブレーカーの有無で、4つのケースに分けて考えます。

図中の “E” は、“Earth-leakage circuit breaker (ELCB)” の略で、漏電ブレーカーのことです。

1.アースも漏電ブレーカーもなし (非推奨)

これがもっとも危険なケースです。

アース・漏電ブレーカーなし

漏電している家電に触れて感電しますが、漏電ブレーカーがないため感電しっぱなしになります。

身体を流れる電流が20mA (ミリアンペア) (0.02A (アンペア) ) を超えると、筋肉がロックして動けなくなるそうです。

2.アースあり。漏電ブレーカーなし

このケースは、感電はほとんどしません。

アースあり・漏電ブレーカーなし

ただし、漏電の電流は流れ続けるため、発熱や故障,火災の原因となります。

また、電気代も余計にかかります。

3.アースなし。漏電ブレーカーあり

これは、感電してから回路が遮断されます。

アースなし・漏電ブレーカーあり

漏電の電流が、身体を通って大地に逃げた瞬間に、漏電ブレーカーが動作します。

4.アースも漏電ブレーカーもあり (推奨)

家電から漏電したときに、回路は遮断されます。

アースも漏電ブレーカーもあり

家電から漏電して、アースから大地に電流が逃げたときに漏電ブレーカーが動作します。

もちろん、感電はしません。

漏電ブレーカーが落ちたら

漏電ブレーカーを上げる前に、“漏電表示ボタン” を確認します。(ない製品もあります)

ボタンが飛び出ていれば漏電による遮断、そうでなければ過電流による遮断です。

上げるときは、ボタンを押します。

つまみがニュートラルになっているときは、いちど “切” 方向に下げてから上げます。

漏電箇所の探しかた

漏電の箇所を見つけるには、以下のようにします。

  1. 分電盤の子ブレーカー (配線用遮断器。電力会社のやつ以外) をすべて “切” にする
  2. 漏電ブレーカーを “入” にする
  3. 子ブレーカーをひとつずつ “入” にしていく
  4. 漏電している回路が “入” になると、漏電ブレーカーが遮断
  5. その回路を確認する

とくに、水回りや屋外のコンセントは、漏電につながることが多いです。

まとめ

  • 漏電ブレーカーは、漏電による地絡 (電流が大地に流れ出る) を感知して回路を遮断する
  • 過電流保護や中性線の欠相保護がついた製品もある
  • 直流では使えないものがほとんど
  • アースを取り付けないと、漏電ブレーカーは動作しない!

閲覧ありがとうございました。

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プロフィール

しゅう

Author:しゅう
1991年北海道三笠市生まれ。プロフィール

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