2021-10-23(土)
家電のコードを交換するときの選び方です。
家電のコードというのは、見た目や機能のほか、安全性や経済性,廃棄時の環境負荷など、いろんな要素を考えて選択されています。
ひとつのニッチな研究分野とも言えましょうか。
ということで、研究発表です。
さて、家電のコードは消耗品であり、切れてしまうことがあります。
たかだか数百円のコードのために、家電の本体をなげるのは非常にもったいないですし、惜しいものです。
コード自体は、ホームセンターに売っていますから、自分で直してしまうのもひとつの選択肢でしょう。
ちょっと見にくいのですが、コードにはこのような表示があります。
ここには、コード選びに必要な、種類と太さが記載されています。
上のコードなら、種類が "HHFF" で、太さが "1.25mm^2" です。
コードの種類
家電にもともとついていたのと同じ種類のコードを選びます。
……とは言っても、わかりにくいので、コードの種類と使われる家電の例を紹介します。
まずは、平形系です。
VFF (ビニル平形コード)
もっとも一般的なコードで、安いです。
絶縁被覆に塩化ビニル樹脂が使われ、耐熱温度は60℃です。
扇風機やテレビ,空気清浄機,蛍光灯器具,電気ケトル,石油ストーブなど。
このコードは熱に弱いので、ケトルとストーブは意外でした。(あまりオススメできません)
H-VFF (二種ビニル平形コード)
VFFの耐熱型で、耐熱温度が75℃のコードです。
除湿機,換気扇,蛍光灯器具,古い電子レンジなど。
NNFF (クロロプレンゴム絶縁平形コード)
被覆にクロロプレンゴム (ネオプレン) を用いたコードです。
耐熱温度は75℃です。
電熱器具に使われましたが、近年は、次の "HHFF" が使われるので、NNFFは見当たりませんでした。
HHFF (クロロスルホン化ポリエチレンゴム絶縁平形コード)
クロロスルホン化ポリエチレンゴム (ハイパロン) を用いたコードです。
耐熱温度は90℃となっています。
ドライヤー,電気ポット,ホットプレート,コーヒーメーカー,電気ストーブなど。
平形コードは、どれも似たような形で見分けにくいです。
種類が記載されていない場合、自分で見当をつける必要があります。
例えば、"Lead Free", "LF", "LFV", "Pb Free", "PbF" などとあるのは、塩ビ (鉛フリー安定剤を使用) のVFFまたはH-VFFと考えられます。
また、“タイネツ” 表記は、耐熱型塩ビのH-VFFでしょう。
ゴム系は、ゴムっぽい肌触りが特徴です。
NNFFとHHFFの違いは、断面の形だったり、中に色付きの糸が入っていたりと、区別は少し難しいところがあります。(製品によります)
とりあえず、どちらのゴムかわからないなら、より耐熱温度の高いHHFFを選ぶというのも方法です。
次は、キャブタイヤ系です。
キャブタイヤコードは、被覆と外装の二重構造になっており、機械的な強さが特徴です。
また、洗濯機など、塩ビの耐水性をいかした使い方もあります。
形状によって、大きく2つに分けられます。
VCTF (ビニルキャブタイヤ丸形コード)
断面が丸型をしています。
被覆,外装ともに塩ビで、耐熱温度は60℃です。
VCTFには、2心と3心があり、接地線または接地ピン付きのプラグには3心を使います。
掃除機,音響機器など。
VCTFK (ビニルキャブタイヤ長円形コード)
上のVCTFと同じ構造ですが、こちらは長円形 (小判型) です。
2心のものしかないので、接地付きプラグの家電には使えません。
テレビ,洗濯機,温水洗浄便座など。
H-VCTF (二種ビニルキャブタイヤ丸形コード)
VCTFの耐熱型で、75℃まで使えます。
巻き取りドラムのある掃除機,温水洗浄便座など。
H-VCTFK (二種ビニルキャブタイヤ長円形コード)
VCTFKの耐熱型で、75℃までです。
洗濯機と、スティックタイプの掃除機に使われていました。
なお、ものによっては、VCT, VCTKなどのケーブルが使われることもあります。
コードであるVCTF, VCTFKとかと似たような構造ですが、ケーブルのほうが強固な作りですので、屋外用の製品に多いです。
最後は、編組系です。
表面が木綿とかで覆われているあれです。
袋打ちコード
アイロンやこたつに使われるコードです。
丸打ちコード
吊り下げ式の照明器具 (ペンダント) に使われるコードです。
エコケーブル
特殊なコードになりますが、塩素などのハロゲンを含んだ樹脂やゴムを使用していないものを “エコケーブル” といいます。
これは、"EM-CCTFK"(架橋ポリエチレン絶縁耐燃性ポリエチレンシースキャブタイヤ長円形コード) です。
"EM" は、"Eco-Material" の略です。
シャープ製のテレビに使われていました。
これは、"PPCTFK"(エチレンプロピレンゴム絶縁耐燃性エチレンゴムシースキャブタイヤ長円形コード) です。
電気ストーブに使われていました。
ここらへんは非常に特殊なので、ホームセンターに売っていません。
コードの太さ
太さというのは、コードの仕上がりの太さではなく、中の導体の太さです。
もともとのコードと同じ太さ以上を選ぶのが基本です。
コードの太さには、主に、0.75, 1.25, 2 (mm^2) の3種類があります。※
何が違うかというと、コードの許容電流です。
太いコードほど、流せる電流も大きくできるのです。
また、コードを長いものに交換する場合、コード内での “電圧降下” も大きくなります。
あまりに電圧降下が大きいと、家電が正常に動かないこともあります。
その場合、より太いコードを選びますが、値段は高いです。
※ACアダプターの2次側 (コンセントじゃないほう) には、0.3, 0.5 (mm^2) というのもあります。
ということで、コードの種類と太さ,長さは、もともと付いていたのと同じものを選ぶのが基本です。
これを間違うと、家電の発する熱で被覆が融けたり、コード自体が発熱して燃えたりします。
安けりゃいいというものでもないんですね。
最後に、家電の改造には危険が伴います。
また、保証が効かなくなったり、余計に壊れる可能性もあります。
閲覧ありがとうございました。
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