オシロスコープ用の変圧器
- 2024/02/06
- 22:19
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オシロスコープ『DSO138』を買いました。(本体84円,電源4円)
オシロスコープは、電圧の変化を波形として表示する機械です。
さっそくコンセントの電圧の波形を測ろうと思ったのですが、このDSO138は、耐圧が50Vまでということで、100V (最高141Vくらい) のコンセントにダイレクトに差し込むと壊れます。
コンセントの100Vを50V以下にする方法で、最もオーソドックスなのは変圧器 (トランス) を使う方法でしょう。変圧器を使えば、元の波形を崩さずに電圧を下げることができます。
で、変圧器をどこから入手するかですが、残念ながら、変圧器はホームセンターに売っていません。(海外旅行用の変圧器はありますが、高価でもったいないです)
なんと、変圧器は、家電やACアダプターの中に入っています。こういうときのためにメーカーが用意してくれているのです。
ということで、使わなくなったACアダプターから変圧器を入手しましょう。
ここからは、変圧器の選び方と注意点です。
間違った変圧器を選んだり、使い方を誤ると、恐ろしいことになります。
- 60ヘルツ専用の変圧器は、50ヘルツでは使えません
- 高周波トランスは使えません
- 1次側と2次側を逆につないではいけません
- 短絡・感電に注意してください
それぞれ、ちょっと詳しく説明します。
60ヘルツ専用の変圧器は、50ヘルツでは使えません
変圧器は、鉄心 (コア) にコイルを巻いた構造をしています。60Hz用を50Hzで使うと、コイルが焼けます。
一般に、電源の周波数 (ヘルツ) が大きいほど、変圧器のコアを小型化できます。実際、60Hz専用の変圧器は、50Hzのやつよりも小型で軽量です。
一方で、60Hz専用は、小型なぶん、磁力のエナジーを蓄える能力が低いという短所があります。結果、次のような現象が起こります。
- 60Hz専用変圧器に50Hz
- コイルの電流が60Hzより1.2倍 (電流は周波数に反比例)
- 磁束が1.2倍 (磁束は電流に比例)
- 鉄心の断面積が不足し、それ以上は磁束がとおらなくなる (磁気飽和)
- 鉄心の透磁率が急激に下がる
- コイルのインダクタンスが低下 (インダクタンスは透磁率に比例)
- インピーダンスが低下 (インピーダンスはインダクタンスに比例)
- コイルの電流が急激に増える
- コイルが発熱し焼損
上の理屈はどうでもいいので、“60Hz専用の変圧器は50Hzでは使えない” ということが伝わってほしいです。
逆に、50Hz用の変圧器は、60Hzでも使えます。
50Hz用と60Hz専用の変圧器の見分けるには、ACアダプターや家電の定格周波数の表示を見ます。
このACアダプターは、“50/60Hz” の表示があり、50Hzと60Hzの両方で使えることがわかります。
定格周波数の表示の例と、50Hz・60Hzの使用の可否をまとめます。
定格周波数の表示 | 使用できる周波数 |
50Hz | 50Hz・60Hzの両方 |
60Hz | 60Hz専用 |
50/60Hz | 50Hz・60Hzの両方 |
家電やACアダプターから変圧器を取り出す場合は、その家電が50Hzに対応、または50・60Hzの両方に対応しているか確認してください。
60Hz専用の家電に使われている変圧器は、50Hzでは使えません。
高周波トランスは使えません
高周波トランスは、商用電源の周波数 (50Hzと60Hz) よりも大きい周波数 (1万Hz〜100万Hz程度) で使う変圧器です。
具体的には、スイッチング方式のACアダプターに使われています。
スイッチング方式のACアダプターは、高速でオン・オフを繰り返すことで、周波数が高い状態を作り、高周波トランスで電圧を下げるしくみです。
上にも書きましたが、周波数が大きいほど、変圧器の鉄心 (コア) を小型化できます。
高周波トランスの鉄心は、鉄 (ケイ素鋼) ではなく、より軽いフェライト (酸化鉄を混ぜたセラミックの一種) などとなっています。
で、高周波トランスに50Hzや60Hzをダイレクトで入力すると、磁気飽和により焼損します。
一般的な変圧器と高周波トランスの見分け方は、回路を見る方法と、変圧器の鉄心を触る方法があります。
左のような回路なら一般的な変圧器、右の回路なら高周波トランスです。
グレーの部分が変圧器の鉄心です。一般的な変圧器の鉄心は、薄い板を重ねて作られているので、細かい凹凸があります。(積層鋼板といい、渦電流による損失を減らす効果があります)
鉄心の表面に細かい凹凸があれば一般的な変圧器、つるつるならフェライトの高周波トランスです。
ちなみに、ケイ素鋼もフェライトも磁石に着きますので、磁石で見分けることはできないです。
1次側と2次側を逆につないではいけません
変圧器は、電源を入力するほうを1次側、変圧した電気を取り出すほうを2次側と呼びます。
100ボルトの入力に対して、何ボルトが出てくるかは、変圧器のコイルの巻き数の比によります。
例えば、1次側が100回巻き、2次側が10回巻きなら、2次側からは10Vが出てきます。
この変圧器の1次側と2次側をアベコベにすると、1次側が10回巻き、2次側が100回巻きとなり、100Vの入力に対して、2次側から1,000Vが出てきます。
結果、発生した1,000Vで感電したり、コイルの絶縁体が耐えられず絶縁破壊し短絡 (ショート) したりと、非常に恐ろしいことになります。
短絡・感電に注意してください
変圧器に限らず、電気で遊ぶ際は、短絡 (ショート) や感電に注意してください。
100Vのところ (充電部) を露出させず、絶縁体で覆うと安全です。
なお、コンセントから先の工作になるので、資格などは不用です。
家電から取り出した変圧器で遊ぶというのは、なかなかない貴重な経験ですが、失敗して火を噴いたり、ビリっときたり、オシロスコープが壊れたりしたら、途端につまらなくなります。
安全で楽しいオシロライフを。
閲覧ありがとうございました。
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