気候訴訟

 いやあ、今年の夏も熱い… 地を焦がし血が沸騰するような猛暑・酷暑・溽暑・炎暑です。煙草を吸うために玄関から外へ出ると、去年と同様、奥にあるアパートの階段で飼い猫のたまちゃんが、まるで「くたくたジャガー」のように平べったくなって昼寝をしていました。彼女なりに工夫をして、接地面が暑くなると頭の位置を入れ替えたり、違う段に移動したりしています。
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 なお今年は新機軸として、もう少し涼しい場所を見つけたようです。そこは…わが家の郵便受けの下。素人目にはたいして変わらないのではと思うのですが、鋭いセンサーで感知しているのでしょう。ただ難点が一つあって、アパートの階段よりも人の出入りが多いことです。私が一服するためにドアを開けると、すぐに脱出して階段へと逃避していきます。「邪魔しないから逃げないでいいよ」といつも言うのですが、人間に対する不信感からか猫耳東風です。いつか分かり合える日まで気長に待つことにしましょう。
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 それはさておき、この猛暑は温室効果ガスによる地球温暖化が原因なのではないでしょうか。何度でも書きますが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の提言によると、温暖化を1・5℃未満に食いとめるためには2030年までに世界の炭素排出量を半分に削減せねばならず、また2050年までには炭素排出量ゼロを達成する必要があります。それなのに日本政府の動きはまるで蛞蝓のように遅く、岸田文雄政権は無策で、総裁選のイシューになりそうな気配もありません。
 こうした日本の体たらくに対して、世界では裁判によって気候変動対策を政府に促そうとする市民の動き、いわゆる「気候訴訟」が起きています。『しんぶん赤旗 日曜版』(24.8.11/18)から引用します。

世界各地あいつぐ気候訴訟
 世界各地では、気候訴訟が相次いで起こされています。
 オランダでは環境NGOが政府に、温室効果ガス排出量の削減目標引き上げなどを求め提訴。2019年、オランダの最高裁判所は「未来のリスクではなく現在の危機であり、差し迫った命と人権の問題」だとして、政府に温室効果ガス削減の強化を命じました。
 ドイツでは若者グループの訴えに応じて、ドイツ連邦憲法裁判所は21年に政府の気候保護法が将来世代の権利を侵害していると判決を出し、その2週間後に「気候保護法」の改正案が閣議決定されました。
 今年4月、欧州人権裁判所は「政府の不十分な気候変動対策が命を脅かしている」「人権侵害にあたる」とスイス政府を訴えた同国の「気候を守るシニア女性の会」の主張を支持する判決を出しました。

 心強いことに、日本でも若者によるこうした訴訟が起こされています。『毎日新聞』(24.8.14)から引用します。

社説 初の若者気候訴訟 大人も危機感共有する時
 地球温暖化は、経済活動を優先してきた現代社会の負の遺産だ。このままでは災害などの深刻化は避けられない。より影響を受けるのは将来世代である。
 各地の10~20代の16人が、国内の主要な火力発電事業者10社を相手取り、二酸化炭素(CO2)の排出削減を求める訴訟を名古屋地裁に起こした。若者による集団訴訟は国内で初めてという。
 原告の背中を押したのは、日々感じている危機感だ。「酷暑で部活動は制限され、勉強に集中できない」などと訴える。「好きなスキーを楽しむ機会も奪われた」とも語る。
 対策の強化を求めてデモや署名活動を行ってきたが、大人の反応は鈍かった。選挙権のない中学生もいることから、「司法に望みを託した」という。
 「産業革命前からの世界の平均気温の上昇を1・5度までに抑える」という国際目標を達成するためには、2030年までにCO2排出量を19年比で48%減らす必要がある。
 原告は、10社が掲げる温暖化対策では不十分と主張している。自分たちの権利や利益が侵害されているとして、国際目標に合致する排出削減を求めている。
 これまでの国内の裁判では、発電所からの排出と、温暖化によって原告が受ける被害との関係は「希薄」だと判断され、原告としての適格性も否定されてきた。
 海外では、15年のパリ協定採択後、訴訟が急増した。気候変動は人権侵害に当たるという環境団体や市民の訴えを認める判決も出始めている。
 日本の企業は提訴を重く受け止め、温暖化を招いた責任を自覚する必要がある。政府も化石燃料に依存してきたエネルギー政策を再考することが欠かせない。
 集中豪雨など温暖化との関連が指摘される自然災害が各地で発生している。連日の酷暑で、熱中症患者の搬送も後を絶たない。夏祭りなど地域の行事も相次いで中止に追い込まれている。
 異常が日常になっている現実を直視する時である。
 課題を先送りし、将来にツケを回すようなことがあってはならない。今こそ、大人は若者の声に耳を傾けるべきだ。

 この猛暑は来年もより苛烈になって来年の夏も続く可能性が高いでしょう。最悪の場合はこれからずっと… 自然災害、海面の上昇、農業への打撃、難民の激増、とてつもない災厄を次世代にもたらすかもしれません。いや、もうすでに起きています。われら現世代が、次世代を担う若者と協力・連帯して事態を直視して全力で課題の解決に取り組むべきです。そして気候危機の主犯は、企業と軍隊であることをあらためて銘肝しましょう。

 さあ、日本の司法が、若者たちの切実な訴えにどう応えるのか、応えないのか、注視しましょう。
 そして気候危機対策に日本政府がどう取り組むのかについても。さしあたって、岸田政権がこの対策にどう取り組んできたのか、あるいは真剣に取り組まなかったかについてのメディアの検証を求めます。そして新総裁候補者が、この喫緊の問題についてどう考えているかについても。そもそも自由民主党に、気候危機対策に本気で取り組み気があるのかについても報道していただきたい、次の衆議院・参議院選挙に投票する際の参考にしたいので。
 誰が自民党の新総裁になるかという「政局報道」はうんざりです。私たちが必要としているのは「政策報道」です。

by sabasaba13 | 2024-08-20 06:52 | 鶏肋 | Comments(0)
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