原発の危険性を伝えるために人生をかけた元裁判長。放射能被災から農業をよみがえらせる福島の人々。使命に生きる者たちの意思がスクリーンにみなぎる! 2014年。関西電力大飯原発の運転停止命令を下した樋口英明・福井地裁裁判長は、定年退官を機に日本の全原発に共通する危険性を社会に広める活動をはじめた。それは、原発が頻発する地震に耐えられないことを指摘する揺るぎなく誰もが理解できる"樋口理論"である。そして、日本中の原発差止訴訟の先頭に立つ弁護士・河合弘之は、この"樋口理論"をもって新たな裁判を開始した。逆襲弁護士の異名をとる河合と元裁判長・樋口が挑む訴訟の行方はいかに! 一方、福島では放射能汚染によって廃業した農業者・近藤恵が農地上で太陽光発電するソーラーシェアリングに農業復活の道を見出す。近藤は反骨の環境学者・飯田哲也の協力を得て東京ドームの面積を超える営農型太陽光発電を始動させる!福島で太陽光発電農業を営む人たちは口々に言う、「原発をとめるために!」と。 脱原発への確かな理論と実践、被災から立ち上がる不屈の魂、そして若き農業者たちのふるさとへの思い。原発事故11年目、真実と希望のドキュメンタリーが誕生した! 監督は小原浩靖氏、クラウドファンディングによってこの絶望と希望に満ちた映画をつくりあげました。まずは絶望。東日本大震災による津波と原発事故、凄まじい被害と避難する方々の映像に、心をかきむしられます。なお映画の中でふれられていましたが、この過酷事故では奇跡が起こったのですね。第2号機では水素と水蒸気がどこかから漏れて爆発せず、第4号機では使用済み核燃料を冷やす水がなくなりましたが、隣のプールの水が漏れ出して冷却しました。本来あってはならないこの奇跡がなかったら東日本は壊滅した可能性があります。そうした被害にもかかわらず、原発再稼働をもくろむ電力会社とそれを後押しする政府。 しかし希望はあります。原発をとめるために、再生可能エネルギーを使った農業をめざす若者たち。原発差止訴訟を起こす人たち。そして本作品の主人公である、原発差止の判決を出した樋口英明裁判長。原発の危険性を伝えるために、裁判官を辞めた後も講演活動を行ないますが、その精力的な姿を映画は追っていきます。彼の主張はシンプルかつ説得力があります。原発は強い地震に耐えられず、過酷事故が起きたら凄まじい被害をもたらすので、差し止めるべきである。その根拠となったのが「樋口理論グラフ」として紹介されました。プログラムにも載っていたので提示します。 「ガル」は、観測地点での振動の激しさ・加速度を表す単位で、建造物の耐震性能を表す単位としても使われます。このグラフから、原発の耐震設計基準が、頻発する地震よりも低いことがわかります。例えば、東日本大震災の揺れは2933ガル、対して福島第一原発の耐震設計基準は600ガル。驚いたのは住宅メーカーの耐震性能のほうが格段に優れているのですね。住友林業では3406ガル、三井ホームでは5115ガルだそうです。「原発はそれなりに耐震設計がされている」という私も無邪気に信じていた神話が木っ端微塵となり、蒙が啓かれました。これだけでも、この映画を観る価値があります。 なお心に残った樋口氏の、言葉を紹介します。「裁判官にとって一番大事なものは」と問われての答えが「独立の気概」。裁判官の独立を脅かすような勢力や構造があることを、暗に物語っているような気がします。あまりに国家権力に忖度をし、寄りそう判決が多い日本の司法。その闇を暴く映画もつくってください、小原監督。その際には、ぜひ樋口氏の出演を期待します。 なお嬉しいことに、上映後、小原浩靖監督の舞台挨拶があり、「クラウドファンディング300万円予定が、数十万円超えた」「映画では、登場人物たちの未来が気になる。続編をつくるつもり」「エネルギー自給、食糧自給の問題でもある」「プログラムは、お金がないので手作り」といったエピソードを話してくれました。ご苦労様でした。 最後に、映画プログラムに掲載されていた、樋口氏による判決文の一部を紹介します。凄惨な原発事故を絶対に繰り返してはならないという気概にあふれた素晴らしい判決です。国会で論議もせずに60年超運転や建て替え推進など、原発政策を大転換させた岸田文雄首相にぜひ読んでいただきたい。 大飯原発3,4号機運転差止訴求事件 主文 ひとたび深刻な事故が起これば多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす組織には、その被害の大きさ、程度に応じた安全性と高度の信頼性が求められて然るべきである。 被告は本件原発の稼働が電力供給の安全性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人々の生存そのものに関わる権利と、電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考える。 コストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土と、そこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。 また、被告は原子力発電所の稼働がCO2排出削減に資するもので環境面で優れている旨主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が怒った場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである。 福井地方裁判所民事第2部
by sabasaba13
| 2022-12-26 07:21
| 映画
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Comments(2)
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匿名
at 2024-08-24 11:04
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「適正,公平な社会のためには、虚偽は到底必要である」と判決を受けて敗訴しました。
どうやって生きれば良いですか 私は、虚偽事由で侮辱されて提訴され、敗訴し、様々なものを失いました。 これを提訴したところ、「適正,公平な裁判のためには、裁判では虚偽は必要である」として敗訴しました。(本人訴訟) 弁護士会と日弁連は、当弁護士に対し、「噓をつくことは正当な弁護士行為」と議決して懲戒処分せずに、直後に当弁護士を会長・日弁連役職に就任させており、原告が提訴した時には、「当行為を処分しないからといって、原告(国民)に損害を与えていない」と主張しては、再び争いました。 裁判官たちは、権利の濫用を許し、当理由で原告敗訴としました。 国家賠償訴訟(福井地方裁判所.平成24年ワ第159号)事件を提起したところ、 国は「争う」とし、「適正,公平な裁判のためには、裁判では虚偽は到底必要である」と判決して、原告敗訴としました。 裁判官に深々と頭を下げて喜ぶ国家公務員の方々の姿がありました。 (その控訴(名古屋高等裁判所.金沢支部.平成24年(ネ)第267号)で敗訴確定) その後に刑事告発したところ、詐欺罪として受理されました。(時効で不起訴) 近年、再審請求しました。 再審請求では当然に憲法違反を詳細に訴えたのですが、再び「憲法違反の記載がない」を理由に決定を受けました。(第一小法廷)(日弁連経歴者所属) 絶望と恐怖があるのみです。 日本は、法による支配(人権擁護)していますか? さて近年、元裁判官の樋口英明氏は、過去の立派な行動(?)を講演し、ドキュメンタリー映画をも作成したと聞きましたが、 当事件において、詐欺加害者に加担するかのように、「適正,公平な裁判のためには、裁判では虚偽は到底必要である」と法を無視して言い渡したのは、樋口英明 です。 あなたは、詐欺被害で苦しむ人々に対して、このような卑劣な判決を言い渡して来たのですか? この樋口英明を「正義の人」扱いするのは、妥当ですか。 この判決と原発訴訟の判決の関係を知っていますか。
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sabasaba13 at 2024-08-26 17:57
こんばんは、匿名さん。コメントありがとうございます。
私に対する問いかけにお答えします。 「日本は、法による支配(人権擁護)していますか?」 不十分だと思います。国連が求めている国内人権機関の設立すらしていないのですから。 「この樋口英明を「正義の人」扱いするのは、妥当ですか」 原発運転差止判決を評価しているだけで、「正義の人」扱いはしていません。 「この判決と原発訴訟の判決の関係を知っていますか」 “この判決”については知りませんでした。“関係”についてはどうお答えすればよいのかわかりません。 以上です。貴コメントが寄せられたことについては、記憶し記録しておきたいと思います。それでは。
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自己紹介
東京在住。旅行と本と音楽とテニスと古い学校と灯台と近代化遺産と棚田と鯖と猫と火の見櫓と巨木を愛す。俳号は邪想庵。
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