「
安倍政権の遺産1」でも述べましたが、安倍元首相の死を悼むとともに、安倍政治を冷静に評価して、受け継ぐものと受け継いではいけないものを峻別すべきだと思います。
今回は、安倍政権に対して舌鋒鋭い論陣を張ってきた『週刊金曜日』のバックナンバーから、安倍政権の負の遺産(レガシー)についての記事をピックアップして紹介します。
№1158 17.10.27
「争点から抜け落ちた福島原発事故への対応」 白石草
森友学園と加計学園という二つの疑惑から逃れるために、安倍晋三首相が突然の解散を決断したのは、自民を追及する立場である野党・民進党の傾きに乗じてだった。傾きを生んだのは、代表であった蓮舫さんの「二重国籍問題」と山尾志桜里さんの「不倫疑惑」という政治家の資質とはまったく関係ない問題だった。特に前者は、追及そのものが人権を侵害するものだが、民進党内部からも問題視する声が吹き出し、世論もこれに追従した。伝統的な「家系」や「婚姻」システムから逸脱したことを理由に「スキャンダル」が仕立て上げられ、2人の女性議員が血祭りにあげられるという前近代的な社会的な歪みが、「大義なき選挙」を生み出したことを、改めて確認する必要があるだろう。そして、こうしたシステムの維持こそが、安倍政権や自民党が推し進めようとしている憲法改正の本質であることも忘れてはならない。(p.25)
№1159 17.11.3
「議会制民主主義はもう機能していない」という印象の刷り込み 内田樹
今の有権者たちは国会とは選良たちがその見識と雄弁を披歴して国家の大事を議する「国権の最高機関」であるとはもう信じていない。そこには口汚い罵倒や詭弁や嘘や暴力の場であり、官邸が用意した法案を「審議するふりをする」アリバイ作りの場であるという印象を私たちはメディアを通じて日々刷り込まれている。
この「立法府は機能していない」という印象の刷り込みに安倍内閣ほど熱心に取り組んだ政権は過去にない。総理自身積極的に国会でヤジを飛ばし、詭弁を弄し、答弁をはぐらかし、ことが面倒になると強行採決をし、解散し、召集を先送りして、国会が「役に立たない」機関であるという印象を広め続けた。(p.11)
№1166 17.12.22/18.1.5
森友・加計・準強姦・スパコン・リニア "アベ友五大疑惑"の追求続 横田一
他の"アベ友疑惑"でも野党は攻勢を強めている。安倍首相を紹介した『総理』(幻冬舎)の著者・山口敬之氏(元TBSワシントン支局長)をめぐる疑惑については、超党派の「『準強姦事件逮捕状執行停止問題』を検証する会」(11月21日設立)が伊藤詩織さんからヒアリングをするなど会合を重ねて、1日の法務委員会では柚木道義衆院議員(希望の党)らが野党連携で波状攻撃的な追及をした。
特別国会会期末の5日には東京地検特捜部がスーパーコンピュータ開発ベンチャーのPEZY Computing(ペジー社)の齋藤元章社長ら2名を逮捕。経産省管轄の「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」から補助金約4億3100万円を不正受給した容疑だが、準強姦(準強制性交等)事件の山口氏がペジー社の顧問を務め、官邸近くの高級事務所の賃料も負担してもらっていた。そのため、すぐに"アベ友疑惑"と位置づけられ、6日には希望の党、翌7日には立憲民主党が経産省などの担当者からヒアリングをした。
さらにJR東海が発注したリニア中央新幹線関連工事で、東京地検特捜部が大林組を家宅捜索。容疑は、不正な入札をした偽計業務妨害だった。「JR東海の葛西敬之名誉会長は安倍首相と懇意で、5年間で30兆円の財政投融資の経済対策を安倍政権が発表した時には『両者の蜜月関係の産物ではないか』との見方が流れました」(永田町ウォッチャー)。(p.4)
№1172 18.2.16
立憲民主党の川内博史衆議院議員に聞く 籠池夫妻を釈放し佐川長官を罷免せよ
-今年になって、森友学園問題で新証拠が相次いで出ていますね。
まず指摘しておきたいのは、「森友学園問題」と報じられていますが、私はこれは、「森友学園事件」という呼び方がふさわしいと思います。財政法・会計法に違反し、国民の財産である国有地が不当に値引きされて売却されたのですから、明らかに「問題」というより「事件」でしょう。しかも、籠池泰典氏という「教育勅語」好きのオジさんが、同じような思想傾向の安倍晋三首相とその妻の昭恵氏が関与してくれたことで安くタダ同然で国有地を譲り受けた-というだけの事件ではありません。もっと、構造的に考えるべきです。
-構造的というと。
強大な人事権を持つ権力者が、官僚の「出世したい」という上昇志向を利用し、自分の私的利害であるにもかかわらず、「よろしく頼む」という一言で行政をねじ曲げる。おそらく安倍首相や昭恵氏は、「瑕疵担保責任免除特約を付けて値引きせよ」といったような具体的指示をしていないでしょうし、またできるはずもないのでしょうが、官僚は一を聞いて十を知る優秀な集団ですから、一斉に走り出す。権力者に気に入られようと、知恵をしぼる。そして「法律違反」と言われないように、ウソとゴマカシ、隠蔽を常套手段とする組織体になってしまっている。これが「構造的」という意味です。(p.36)
№1181 18.4.20
宇宙物理学者 池内了さんと考える-五輪の政治利用と自治の精神 聞き手 中村富美子
-まず「東京オリンピックの政治利用」の要は何でしょう。
原発事故の実態隠しです。安倍首相の「アンダーコントロール」というフェイク発言を繕うためにも、帰還政策を強引にやり、オリンピックをやり、世界に何事もなかったかのように見せたい、と。
それと、テロ対策。これまで日本は「平和産業」で敵を作らず、世界の国々と仲良くやって経済関係も上向く相乗効果で成功してきたのに、経済が落ち目になって軍事産業に頼ろうとし始めた。武器輸出禁止三原則を2014年に閣議決定で防衛装備移転三原則に変え、テロを呼び込もうとしている。自ら火をつけ煽ったあげくに軍事力で消すという、マッチポンプの戦略です。そして、「オリンピックでテロが起きたら困る」という名目で、国民が文句を言わず従うように追い込んでいく。
東京都もオリンピックを格好の口実に「迷惑防止条例」を改定し、デモの実施もどんどん難しくなっている。「デモが存在しない社会こそ美しい」という論理ですよね。
-では、オリンピックの「思想的利用」とは?
日本人を一つに束ねることです。天皇の下、「日の丸」が象徴する国として。今年は明治150年、来年は天皇の代替わり、再来年がオリンピック。みんな結びつけて進められている。歴史に名を残したい安倍首相が仕組んだ、日本という国を変質させていく仕掛けですよね。立憲主義をなくし、欽定憲法にして上からの統治にする。自民党の憲法改正草案にある緊急事態条項なんて、まさに内閣が思いのままに国を統治できるものでしょ。(p.28)
№1181 18.4.20
豪雨被災地視察切り上げ"広島自民亭"で岸田氏と会食の首相 横田一
羽田空港を(※2018年8月5日)午前11時に自衛隊機で出発。「自衛隊機で点滴を受けながら休養していたのでは?」という健康不安説も頭を過る中、13時前に広島空港に到着した安倍首相はバスで被災地を回ったが、まだ日差しが強い17時5分、「空と海に囲まれたアーバンリゾート」が売りの「グランドプリンスホテル広島」に到着。視察日程表には18時半到着とあったため、1時間25分も予定を前倒しにしたことが判明。結局、視察時間は約4時間、バスの移動時間を差し引くと、約2時間に過ぎなかったが、泊まったのは「一泊20万円のスイートルーム」(従業員)。そして19時半に安倍首相は、ホテルに駆け付けた岸田文雄政調会長と22階にある「ステーキ&シーフード ボストン」で会食。ここで総裁選などに関する意見交換をしたというのだ。(p.5)
№1225 19.3.22
「働き方改革」の名のもとに貧困化を加速させる安倍政権の責任を追及するジャーナリスト・竹信三恵子さんに聞く
こうして見てくると、問題は消費税増税自体にあるというより、これを取り巻く一連の「企業ファースト化」政策にあるとも言える。すなわち、①低所得層から逆進的に集めた税を社会保障などの再分配に回さず、防衛費や大手企業の補助金・減税に回す手法、②「同一労働同一賃金」を看板に掲げながら基本給の同一には及ばない「働き方改革」、③生産年齢人口の減少で賃上げが可能な条件が生まれそうなこの時期に、低賃金の外国人労働力を注入して消費税増税分を人件費で吸収させようとする労働政策、などだ。(p.13)
№1233 19.5.24
「権利」としての法制化を日弁連が提起 生活保護から「生活保障」へ 片岡伸行
生活保護利用者は現在、約210万人(約163万5000世帯)いるが、それは本来受け取る権利のある人の15%か16%。多く見積もって2割程度だとされる。欧米ではその捕捉率が50%あり、ドイツは70%以上、英国は80%を超えているという。その名称も「連帯所得」(フランス)、「基礎生活保障」(韓国)などで、国から恩恵や施しを受けているような印象を与える「保護」の語を使用している国はないとされる。
しかも、安倍政権になって生活保護費の切り下げが続く。2013年、14年、15年に続き、18年10月から3年間かけて生活保護費が段階的に引き下げられる。「人間の尊厳と命を削るものだ」として全国で訴訟が提起されている。(p.9)
№1237 19.6.21
風速計 中島岳志
今回の参議院議員選挙の最大の争点は「格差」である。安倍内閣で行なわれたのは、大企業優遇の法人税減税、逆進性の強い消費税の増税、年金資金を使った株価のつり上げなど、不公正の拡大である。アベノミクスは富裕層が得をし、貧しい人が損をする政策の連続だ。さらに一部の「友達」の利益のために、ルールを曲げ、証拠を隠蔽し、記録を改竄する。安倍政権の金持ち・お友達優遇政策を終わらせ、公正な所得の再分配を行なわなければならない。(p.3)
№1270 20.2.28
肯わぬ者からの手紙 安倍一人で二度の大破局 連立救民政府樹立を即刻 山口泉
何度でも記すと、そもそも東京電力・福島第一原発事故の直接の誘因は2006年の第1次政権時、安倍晋三が原発の津波冠水等への予備電源の必要性を平然と否定したことだ。(p.58)
№1279 20.5.1/5.8
緊急事態宣言と集会「自粛」考 高田健
4月7日、安倍晋三政権によって7都道府県に、16日、全都道府県に緊急事態宣言が発令された。
日本における新型コロナウイルス感染の拡大は、安倍政権のこの間の多くの失政に原因がある。事態の緊急性の強調によっても、責任は免罪されない。初期の水際対策は習近平・中国主席の来日などへの政治的配慮で立ち遅れ、ダイヤモンド・プリンセス船内の隔離化の失敗、本格的なしたことで立ち遅れるなど、さまざまに決定的な判断ミスが重ねられた。小中高の一斉休校、マスク二枚の配布、首相自身のネット配信「うちで踊ろう」、一部世帯への30万円給付など、失政は枚挙に暇がない。(p.16)
№1291 20.8.7/14
約9年で大臣ら16人辞任、3人逮捕 片岡伸行
このように第1次から4次までの安倍内閣では閣僚ら16人が辞任し、3人が逮捕されている。16人中10人の辞任理由がカネがらみで、逮捕された3人も同様だ。
要するに、自民党の大臣クラスに抜擢されるお歴々にとって民主主義とか法治主義とか、公正な選挙などといったものはお題目にすぎず、いかがわしいカネを懐に入れようが、カネやモノで票を買おうが、発覚しない限りは素知らぬ顔をして「国民の代表」を務め、バレると判で押したように"雲隠れ"し、仕事(国会)を休んでも高給だけは受け取る厚顔無恥の連中ぞろいということになる。そもそも、彼・彼女らを任命した安倍首相からして、「桜を見る会」をめぐっては自らが疑惑の当事者として政治資金規正法や公職選挙法違反などの疑いで複数の刑事告発を受けている身だ。「モリカケ疑惑」も多くの人が納得する説明を受けた覚えがないだろう。安倍首相自身が総理大臣として最も「不適材」ではないか。(p.22)
№1291 20.8.7/14
「閣議決定政治」の虚妄 片岡伸行
侵略の定義としては1974年の国連総会での「決議3314」が知られており、2010年に国際刑事裁判所が定義をさらに明確にした。その国際合意のどちらにも日本政府は参加している。「定義は困難」という安倍首相の答弁と閣議決定は虚偽ではないか。(p.24~5)
さらには、安倍首相はポツダム宣言を「当然、読んでいる」(15年6月2日)、島尻安伊子内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策・当時)は「『歯舞』の読み方を知らないという事実はない」(16年2月19日)、小泉進次郎環境大臣の国連気候行動サミットでも発言「セクシー」という語の正確な訳出は困難(19年10月15日)…。これはコント集ではなく、日本の行政権最高の合議体による閣議決定である。恥ずかしいと思わないのだろうか。(p.25)
№1291 20.8.7/14
東電福島第一原発事故の被災者切り捨て 電通「復興キャンペーン」に7年間で240億円を投入 白石草
国は原発事故後、年間20ミリシーベルトという避難基準を決めた。しかし、事故前の公衆の被曝上限は年間1ミリシーベルトだったことから、子どもがいる家庭を中心に多くの住民が避難を選択してきた。民主党政権時代は、これらの避難者に対しても一定程度、理解を示してきたが、安倍政権になり一変。それどころか避難指示地域の解除を強行してきた。
故郷への帰還を望む住民の声だと政府は強調するが、それは表面的なポーズに過ぎない。避難指示が解除されると、その地域の住民は「避難者」から除外され、損害賠償の対象外となるのである。つまり、解除が早ければ早いほど住民への支援策や賠償がかからなくなるのだ。(p.44)
№1294 22.9.4
「実現しないこと」によって成功したのが安倍政権 中島岳志
では、安倍内閣は何もしなかったのかというと、そうではない。未来の日本に大きな禍根を残す法律を多く通している。
その代表が「秘密保護法」と「共謀罪(テロ等準備罪)」だ。この両者は、間違いなく今後の言論の萎縮を招き、自主規制を加速させる。
秘密保護法は、防衛、外交、スパイ活動、テロに関する事項を秘密指定できるとしているが、「秘密」とされる範囲が明確ではない。何が秘密なのかが秘密なのだ。共謀罪も同様で、「計画」「準備行為」「組織的犯罪集団」などの定義が明確ではなく、恣意的な処罰への懸念が払しょくされていない。
もし政府への抗議行動をする中で、上記の法律が適用され、逮捕者が出たとしよう。一方、容疑の核心部分が「秘密」とされ、いかなる行為が違法とされたのかが不明であれば、間違いなく行動の自主規制が起こる。「デモに行くと逮捕されるんじゃないか」「政府批判をツイッターに書いたら、不利益が生じるんじゃないか」「政府は国民の言論や行動を監視しているんじゃないか」。そんな忖度が蔓延すると、人は確実に萎縮する。フランスの思想家ミシェル・フーコーが指摘するように、権力のまなざしの内面化によってこそ、監視権力は最大化する。監視されているという思いを植え付けることによって、政府は国民を効率的で効果的に服従させることができるのだ。
安倍内閣が掲げた目玉政策の多くは実現しなかった。しかし、何もしなかったのではない。近い未来の日本に大きな影響を与える基盤を着々と整えてきた。将来、言論活動の自由が抑制されることが起きたとき、後世の歴史家たちは、安倍内閣をその起点と指摘するだろう。私たちは、そのような基盤構築に国民として加わってしまった。その責を未来の国民から厳しく問われることになるだろう。(p.19)
№1295 22.9.11
暗雲漂う「戦争ができる国」 古賀茂明
テレビ朝日の「報道ステーション」がアベノミクスについて報じた内容について、不公平だとする文書を「自民党報道局長」名で送りつけてきたことがありました。こんなことは歴代自民党政権でもなかったことです。私自身も、番組で安倍批判をしたら番組中に菅官房長官秘書官がテレ朝幹部に圧力電話をかけてくるというような経験をしたこともあります。(p.12)
№1339 21.7.30
安倍晋三前首相は都議選でかく語りき 7年8カ月の実績を自画自賛 でも数字がまちがっていませんか 佐藤和雄
6月30日、JR国立駅前での自民党の本橋巧候補の応援演説
「正社員になりたいという方がどれくらい正社員になれるか。有効求人倍率という数字があります。それはわれわれが政権を取る前は、0・53。100人、正社員になりたいという方に対して正社員の仕事は53人しかなかったんです。
それをわれわれは8年間で0・53から1・57まで上げました。100人、正社員になりたいという方に対して157人分の仕事がある。つまり、若いみなさんにとって(仕事が)選べるようになった。(中略) 子どもたちが未来に向かって進むことができる。そういう時代を私たちはつくり始めているんです」
明らかに間違っているのは「8年間で0・53から1・57まで上げました」という下りである。
第二次安倍政権で最も正社員有効求人倍率が高かったのは、19年6月の1・18であり、以来、コロナ禍の前から下がり始めていたのだ。
安倍氏が退陣した20年9月には0・79となっている。安倍氏の言葉を借りれば、「100人、正社員になりたいという方に対して正社員の仕事は79人分しかなかったのです」。
なぜこのような間違った数字を有権者の前で堂々と話すのか、さっぱりわからない。(p.30)
№1347 21.10.1
菅義偉政権による歴史教科書への政治介入 消える「従軍慰安婦」「強制連行」 佐藤和雄
文部科学省は9月8日、日本軍「慰安婦」や戦時労働の「強制連行」について、教科書会社5社から中学社会、高校地理歴史など29点の訂正申請を承認したことを明らかにした。これらの教科書の多くから「いわゆる従軍慰安婦」という用語が削除されたり、「慰安婦」に代えられたりし、「強制連行」は「強制的な動員」や「配置」という言葉に代えられた。
市民団体「子どもと教科書全国ネット21」は9月17日、鈴木敏夫事務局長らが記者会見をし、「ある歴史用語を、歴史研究とか教育的配慮抜きに政府が問題にするのは前代未聞の出来事。学問研究や出版の自由を踏みにじる」と批判した。
なぜ、このようなことが起きたのか。
直接の発端は、日本維新の会の馬場伸幸幹事長の二つの質問主意書に対して菅義偉内閣が4月27日に閣議決定した答弁書から始まっている。菅内閣は日本軍「慰安婦」については「『従軍慰安婦』は誤解を招くおそれがあるから(中略)単に『慰安婦』という用語を用いることが適切である」。「強制連行」については「『強制連行』又は『連行』ではなく『徴用』を用いることが適切である」という答弁書をそれぞれ閣議決定した 「今回の閣議決定によって、強制性のある慰安婦等については今後その記述が亡くなっていくんだろうと言う「今回の閣議決定によって、強制性のある慰安婦等については今後その記述が亡くなっていくんだろうと言うつまり「慰安婦の存在は認めるが、強制的に動員・連行された女性たちではない」という認識を社会に広げるための閣議決定だ。
教科書への反映を可能にしたのは2014年1月の「政府の統一的見解または最高裁の判例がある場合はそれらに基づいた記述にする」という教科書検定基準の改悪だ。安倍晋三政権が政治介入を可能とする仕組みを整え、菅政権によって実行されたのである。
菅政権は10月4日に終わる。この政権の所業はさまざまに記憶されるだろうが、「教科書の歴史記述に露骨に政治介入した政権」であることを忘れてはならない。(p.8)
№1384 22.7.8
日本の産業を恥ずかしいレベルにまで落とした自民と経産省 産業政策の欠陥を古賀茂明さんに聞く
-そのアベノミクスの3本の矢は、①金融緩和、②財政出動、③成長戦略(経済、産業政策)でした。どうみていますか。
1990年のバブル経済崩壊から約30年間、日本の産業政策は一貫して失敗してきました。主なプレーヤーは経済産業省と自民党ですが、経済にとどめを刺したのがアベノミクスです。
-具体的に教えてください。
産業政策の基本は生産性を上げることで給与上昇につなげることですが、むしろ生産性を上げない方向の政策ばかりやってきたのです。
-どういうことでしょうか。
周辺諸国の追い上げを受け、本来は商品開発やイノベーションを企業に頑張らせるべきでした。ところが力がなくなっていた企業は単純なコスト削減に走ったのです。賃金もコストだと考え、自民党は賃金を下げる政策を一貫して取ってきました。
その一つが派遣請負労働者の拡大です。さらに「留学生30万人計画」。珍しく達成しましたが、留学生の内訳は中国からの語学留学生が中心で、のちにベトナム人も加わります。同時に留学生の資格外活動(アルバイト)時間を緩和し、学業よりもアルバイトを優先する方向に誘導しました。
もう一つは外国人技能実習制度です。「人材育成」との美しい建前に反し、実態は最低賃金すら払わず、こき使う奴隷制と批判されています。
低賃金労働者の導入は一時的なカンフル剤にはなりましたが、本来の稼ぐ力は取り戻せません。負けるのを先延ばしにしているだけなので、また追いつかれるわけです。経団連に泣きつかれて出した究極がアベノミクスの超円安政策だったのです。
-驚くべき円安水準です。
円の最高値は、民主党連立政権当時の2011年10月31日。1ドル75・32円でしたが、いま(22年6月)は135円前後になっています。
かりに時給が800円だとすると、最高値時代には10ドル以上もらっていた労働者が、1ドル120円になると6・67ドルしかもらえない。米国人から見ると、かわいそうだね、となります。時給1000円になったとしても、1ドル135円なら約7・4ドルにしかすぎません。国際的な水準自体を大幅に下げたことになります。
一方、輸出産業からすれば利益が何倍にもなりました。「史上最高の利益」などとはしゃぐ企業が多いのですが、なにもしなくても儲かるため、無能な経営者が居残っているのです。(p.23)
やれやれ、いずれも絶対に受け継いではならない負の遺産だと思います。そして受け継ぐべき正の遺産は? 国民の一人として判断しますと…あの記事以来ずっと考えているのですが、思いつきません。どなたか三つでいいから教えていただけませんか。