豪鬼メモ

MT車練習中

ブロンプトンのフリーハブなどなどの修理

購入9年目にしても長野と東京の間の往復などで酷使し続けているブロンプトンだが、あちこち壊れてきたので修理した。フリーハブとディレイラーとスプロケットとライトと荷台が壊れていたので一気に直した。


自転車の歴史の中で最大の発明と言われるのがフリーハブだ。ペダルを踏んでクランクを前に回した時はハブが車輪に動力を伝達するが、クランクを止めたり逆回転させてもハブが空転して車輪が惰性運動をしてくれるというものだ。これが壊れてしまうと、クランクを前に回してもハブが空転するようになってしまう。とある峠を走破している途中でそれが起こってかなり困った。家に帰ってから確認してみると、フリーハブの中のフリーボディの針金(ハブスプリング)が破断していた。こんな針金が切れるだけで自転車が使い物にならなくなってしまうとは面白いものだ。

フリーボディの構造は意外に単純だ。軸の周りに3つのフラップが配置されていて、それぞれのフラップは針金の輪っかで緩やかに押さえつけられて留められている。針金が健在であれば、その張力でフラップが立ち上がってフリーハブ内のラッチと噛み合う。針金が破断してしまうとフラップが立たなくなるのでラッチと噛み合わなくなって空転し続けてしまうというわけだ。なので、ハブスプリングを付け替えれば直る。しかし、普通の自転車屋ではそんなものは売っていない。そこでAmazon探した。「ハブスプリング」とか「ラチェットスプリング」で検索するといくつか購入できるものがある。ブロンプトン純正のホイールのフリーハブには直径20mmくらいのフリーボディが内蔵されているが、それを緩やかに押さえつけるには直径18mmくらいのハブスプリングが最適だ。かつ、ずれないようにフックが一つ付いているものが望ましい。しかし、該当するものが無かったので、私は直径20cmでフック2つのものを買った。こんな原価5円もしなさそうな針金が700円以上もするのは噴飯ものだが、他に選択肢がないのだから仕方がない。

マニアックな部品は中国系の部品メーカーのものが多く、到着にやたら時間がかかることには覚悟せねばならない。今回は2週間もかかり、その間にブロンプトンに乗れなかったのは辛かった。ロードバイクだと安全に停める場所に困る。自転車生活に慣れ過ぎてしまうと、電車やバスに乗るのは金と時間の無駄と思えてしまうし、長距離を歩くと内腿が擦れて痛くなってしまう。

後輪のフリーハブを開けるのはちょっと手こずった。フリーハブのメンテが必要なほど年季の入った自転車だと、そのボルトが固着していることが多く、私のもそうだった。やってみるとわかるが、固着したボルトを緩めようとするとシャフトが友回りしてしまい、シャフトを掴むだけでは十分な固定力が得られない。この問題に対しては、2つのボルトでワッシャーを挟んで締め込んで、その内の一つのボルトを支点にすることが対策になる。二つで不十分なら、三つで支えても良い。

フリーハブを開けられたら、あとは針金を入れ替えるだけだ。直径が大きめの針金を買った場合、ラジオペンチで全体を満遍なく内側に曲げて直径を小さくするとともに、余った分を切って、針金の長さが一周とちょっとになるように調整すべきだ。取り付ける際には、針金のフックがフリーボディのフック用の溝に位置するように計らう。また、フックの内側に他方の端が入り込んで押さえつけられるようにする。そうすると、針金の全周で内側に締め込む力が働き、3つのフラップが立つ状態になるはずだ。なお、フリーハブのラチェット音はフラップが立とうとしてラッチの凸凹にぶつかる際に発生するので、ラチェット音を大きくしたい場合には強力なバネを使い、小さくしたい場合には弱いバネを使うと良いだろう。今回買った針金は比較的弱めのバネで、ラチェット音がそんなに好きじゃない私には良い選択だった。

前輪と後輪の両方のハブはグリスアップした。前輪はカップアンドコーンなので清掃とグリス充填と普通にして、後輪はシールドベアリングなので清掃とラチェット部のグリスアップだけした。例によってベルハンマーメタルグリスを使ったので、少なくとも前輪の回転はかなり円滑になった。以前にグリスアップしてから10ヶ月ほど経っていたが、その状態だとかなりグリスの粘度が上がって抵抗が高そうだったので、前輪は半年に1回くらいはグリスアップしても良いかもしれない。
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次に、ディレイラーの話をする。前提として、私は外装2速モデルを改造して11Tと18Tという超ワイド設定にしていることを承知されたい。ギア比が1.2以上異なる変速は良くないとされるが、11Tから18Tへの変速の比率は18/11=1.63にもなるので、変速に手こずるのは当然だ。その上、ブロンプトンの外装2速モデルが採用するチェーンプッシャー方式のディレイラーはそもそも変速能力があまり高くない。また、純正だとディレイラーのプーリーとプッシャーが常に接触している状態になり、またプーリーがベアリングを備えずにブッシュの上で滑る方式であるため、機械抵抗が大きい。なので、LiteProのディレイラーに換装したのだが、変速性能はむしろ悪化した。かなり念入りに調整しても、ベアリング入りのプッシャーは横方向の摩擦が大きすぎてまともな変速性能は手に入らない。
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仕方ないので、ディレイラーアームは剛性の高いアルミ製のLiteProのものを使って、プーリーは純正のプッシャー式のものを使って運用していた。これなら、機械抵抗はベアリング入りプーリーには劣るにしても、ワイドレシオでも変速性能が悪くない。ただし、プッシャーとプーリーの間の摩擦は樹脂製のプーリーを削ってしまうので、1万キロも走るとプーリーが擦り減って外れてしまう。以下の写真は擦り減ったプーリーと新品を並べたものだ。擦り減った方は穴が大きくなっているのが分かるだろう。ここまで擦り減ると、プーリーを横に滑らせるとボルトの頭を越えてプーリーが外れてしまうようになるし、回転が渋くなってくる。

つまるところ、耐久性と機械抵抗の点では有利だが変速性能が悪いベアリング入りプーリーと、耐久性と機械抵抗の点では不利だが変速性能は良い純正のブッシュ式のプーリーのどちらかを選ばねばならない。今までは前者を選んでいたが、これからは後者にする。つまり、プーリーは消耗品と捉えた上で、純正のプーリーを使うということだ。機械抵抗の差は微々たるものなので、気にしないことにする。なお、純正プーリーはワイズロードで2個1550円くらい買えるので、1万キロごとに買い替えるくらいなら許容範囲だろう。送料がかかるのが嫌なら店舗受け取りにすればいい。

LiteProのディレイラーと純正のプーリーを組み合わせてみたが、やはりベアリング無しのプーリーだと変速性能がとても良い。プーリー自身が回転すれば横方向の摩擦が動的摩擦になるので、横方向が静止摩擦であるベアリング入りプーリーとの違いは圧倒的だ。11Tから18Tへの変速も全く問題なくできる。それでいて、機械抵抗の増大はほとんど体感できない程度だ。

以前にも書いたが、プッシャー式のディレイラーは、変速するかしないかのギリギリのところまで押す力を弱めるように調整するのが望ましい。押しすぎると、プッシャーの壁とプーリーの壁の摩擦が増えて、機械抵抗が増大するとともに、摩耗が早まるからだ。

次に、スプロケットの話をする。外装2速モデルのデフォルトでは12Tと16Tのスプロケットが付いているのだが、私はそれらを11Tと18Tに換装している。18Tはそのままだとフレームと干渉するので歯を削ってつけていて、11Tはそもそも唾付きしか売っていないので唾なしにするために唾を削る作業必要になる。
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この手作り11Tはうまく動作するのだが、やはり1万キロも走ると摩耗してきてしまう。最近また摩耗してきて強く踏み込むと歯飛びするようになってきたので、作り直した。11Tの唾付きはAli Expressなら250円くらいで手に入るので、それをいくつか買って、唾なしの11Tに改造した。

唾は強度を保つためにあるので、それを削れば強度が落ちるのは当然だ。以前旅先で11Tのスプロケットが突然破断した経験があるので、それ以来、予備のスプロケットを必ず携帯するようにしている。

自作しないと手に入らない11Tを敢えて使うのは、52T/11T=4.72の変速比が欲しいからだ。同じ変速比を12Tで実現しようとするとフロントを57Tにする必要があるが、それは大きすぎる。11Tを複数持っておくのが現状では最善策だ。 実際のところ、ある程度脚力が付いてきた現状では4.72は軽すぎるので、54T/11Tの4.90くらいにしたいと思っている。O.Symetricの54Tをオークションサイトで狙う日々だ。

これを機に3速化しようとも考えた。MiniMods Uinbody X2+1の11-16-20とかにできれば変速性能もいいしケイデンスも維持しやすいし峠の走破性も上がる。しかし、チェーンを10速用か11速用に細くすることになるため、耐久性が著しく落ちるのが気になって止めた。シマノの8速用チェーンは数万キロ持つ名品で東南アジアで酷使されても耐え続ける定評があるが、10速以上はレースや趣味のチェーンなので数千キロしか持たない。そしてスプロケットも摩耗するが、ユニボディスプロケットだと11Tが摩耗しただけで全体交換になって1万円近くかかるのが辛い。ロングライドは消耗との戦いなのだ。

ライトの話。ずっと使っていたCatEye AMPP800が壊れた。スイッチボタンの回りのシリコンが破けて、そこから水が侵入したっぽい。仕方ないので、昔使っていたCatEye Volt300を使っていたのだが、300ルーメンのハイモードだと1時間もせずにバッテリーが切れてしまうし、50ルーメンくらいのローモードでも3時間もせずにバッテリーが切れてしまう。古いので仕方ないが、秋の夜長にこいつは実用にならん。

検討した末、OLightのRN800を買った。こいつは200ルーメンのローモードでも8時間持つので、普通に使う限りには全く困ることがない。もっと早く買えばよかった。これからの季節でもちゃんとしたライトがあると日没時刻に焦らされずに存分に行動できる。今のところハンドルにつけているが、いずれライトステーをCatEyeマウントからGoProマウントに変えてRN800をつける予定だ。あと、RN800はモバイルバッテリーとしても使えるので、スマホのバッテリーが切れた時の緊急用にモバイルバッテリーを持つ必要が無くなり、荷物がちょっと減らせる。

フロントキャリアブロックの位置には自作の反射板兼荷台をつけている。荷台と言っても垂直についているので、単体では荷物は付けられない。ハンドルに吊り下げたバックパックの重みをこの荷台が受け止めることで、ハンドルポストの蝶番の出っ張りがバッグに刺さらなくなって荷物が安定するという機構だ。これがあると任意のバックパックを吊るせるようになるのでめちゃ便利だ。しかし、3000kmほど走ったら板が割れてしまったので、少し改良して作り直した。床板は2枚を瞬間接着剤で貼り合わせて頑丈にした。また、ネジは2.5mmトラス小ネジにして前方の引っかかりを無くした。さらに反射板は和気産業の「黒い反射テープ」を使って安く抑えた。

ハンドルの中央のRecマウントに付けているコンパスが壊れたので、同じSuuntoのクリップコンパスを買い直した。このコンパスは正確かつ文字盤が見やすく動きが滑らかで、クリップコンパスの中では最高の製品だ。以前のはどこかにぶつけてオイルが漏れて駄目になったが、今回は大切に使いたい。コンパスがあるといちいちナビを見なくても大体の道が分かるし、明らかに間違えた方角に向かうとすぐ気づけるので、旅の安心感がかなり増す。景色の中の山などを同定するのにも便利だ。

以上のメンテナンスを経て、ブロンプトンがまた普通に乗れる状態になった。メンテナンス中の2週間くらいは代わりにロードバイクRFX8に乗っていたのだが、筋トレのためにアウタートップ縛りにしていた。これがなかなか新鮮な体験で、急坂で引き足を全力動員してトルクを稼いだり、平地巡行でも主に引き足で推進力を得たりと、疲れないように努力するのがなかなか楽しかった。おかげで引き足に必要な腸腰筋やら大腰筋やらが意識できるようになり、長い距離を乗っても膝が笑うことがなくなった。

ロードバイク生活から満を持してブロンプトンに乗り換えると、その乗り味の奇妙さに笑ってしまった。一言で言えば、軽いが、遅い。ペダルの踏み込みもステアリングも軽いが、変速比を低くしても体重が乗せにくいので加速は鈍く、最高速度も低く、ホイールベースが長いので回転半径が小さいわけでもない。一方で、あまり力を入れないでじわじわ漕いでいればそれなりの速度に到達するし、重心を傾けるだけで勝手に曲がっていくので、速く走ろうとしなければ乗っていて楽しい自転車だ。癖のある乗り味を乗りこなし、特に曲がるのが楽しいので、やはり街乗り向きの自転車なのだと改めて思った。ロングライドには正直言って全く向いていないのだが、そこを敢えて取り組むのが一周回って面白くもある。

RFX8には真円チェーンリングを装備しているが、ブロンプトンには楕円チェーンリングを装備している。この違いも改めて感じた。楕円だとアウタートップ縛りがさらにやりやすい。52T/11T=4.72は結構重めの変速比だが、トウクリップによる引き足を最大限活用すると、斜度5%くらいの坂ならシッティングでスイスイ上っていける。引き足によるトルク向上は逆の足がパワーゾーンにあって踏み込んでいる時間帯だけだ。上死点と下死点に足がある時間帯には踏み足も引き足も利かず、前後方向の弱いペダリングしかできない。そうするとクランクの角速度が一気に落ちて、回転が止まりやすくなってしまう。上死点下死点が軽くなる楕円チェーンリングだとその欠点が緩和されて、角速度を維持しやすくなる。楕円チェーンリングで走ってみると、行程の中で下り坂が占める割合が多くなるように錯覚してしまうくらいだ。それは緩い上り坂なら平坦と変わらない意識で登ってしまえるからだろう。

ロードバイクほど高速には走れないが、街乗りからロングライドからヒルクライムまで対応できるブロンプトンの乗り味はやはり大好きだ。メンテナンスはそれなりに大変だが、ちゃんとメンテすれば9年経っても購入時と遜色ない性能で走れる。むしろカスタマイズした分だけ購入時よりもずっと快適に走ることができる。そして、出先で簡単に折り畳めて建物や電車などに持ち込めるので、行き先が制限されない自由がある。