豪鬼メモ

Baby steps to Giant strides

ブロンプトン外装3速化に伴う変速調整

ブロンプトン外装2速の2017年モデル以降を外装3速化する手順をまとめる。汎用シフターを使うところが2016年以前の方法と違う。2016年以前のモデルでもここで述べる方法を使う方が楽だし、変速性能も良くなる。


私のブロンプトン2016年外装2速モデルのブロンプトンを外装3速化する話は以前書いた。少なくとも、後輪のハブを3速対応のものに換装するのと、そこに3枚のスプロケットと5枚くらいスペーサを入れるのと、11速用の細いチェーンに換装するのと、ディレイラーテンショナーにつけるプーリー用のネジを長いものに換装することが必要だ。
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2016年以前のモデルは、シフターと変速機がブロンプトン専用とも言える特殊な構造になっていて、汎用のシフターが使えない。どう特殊かというと、シフター側でワイヤーの引っ張り具合を調整する構造になっている。一方、2017年以降のモデルでは、変速機の手前にあるスプリングセットでワイヤーの引っ張り具合を調整するため、汎用のシフターが使える。言い換えると、2016年以前の方法ではワイヤー留めのタイコが変速機側にあり、2017年以降の方法ではワイヤー留めの太鼓がシフター側にある。概念図を以下に示す。

以前の手順だと純正シフターを加工して3速に対応していたが、プッシャーの移動幅を調整するのに苦労したし、結果としての変速性能も満足いくものではなかった。そこで、汎用のシフターを導入することにした。ワイヤーの引き幅が大きめにとられているシフターを選べば、チェーンがローのスプロケットに上がりにくかったりトップのスプロケットに落ちにくかったりする問題が起きにくい。

汎用シフターを使うには2017年以降用のスプリングセットが必要になるので、買ってきた。2016年以前のモデルでもスプリングセットを換装すれば2017年以降と同じ方法が使えるということだ。古いスプリングセットは在庫にないことが多いのだが、新しいスプリングセットならブロンプトンを扱っている店には大抵ある。現在の定価は2200円らしい。また、2016年以前のシフターケーブルを流用するなら、ケーブルとワイヤーの長さを調整するため、ワイヤーカッターも必要だ。

ブロンプトンの3速用シフターと言えばSturmey-ArcherのSL-S30と、そのクローンであるSunRaceのSLM96が有名だ。それらは内装3速用のインデックスシフターとして使われることが多いが、外装3速化の場合でもワイヤーの引き幅があまり変わらないので使えるらしい。私もSL-S30を買おうとしたのだが、なんか高かったので躊躇して、シマノの安い3速用フリクションシフターを買った。実質無段階で動くフリクション方式なら設置時の変速設定が簡単だ。

スプリングセットの設置方法については、以下の公式動画を見ればわかる。
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ワイヤーの長さを調整する必要もあるのだが、その方法については以前の記事で述べた。
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折り畳みの都合でシフターの位置を左前から右後ろに移した結果、こんな感じになった。正直言って操作しづらいが、ロードバイクと違って変速操作をそれほど頻繁にするわけじゃないので、この位置で問題ない。普通に走っている時にシフターのレバーが気にならないようにむしろかなり内側に詰めているくらいだ。

シマノのシフターの使用感だが、一言で言えば安っぽい。レバーを動かすとバキバキとでかい音が鳴り、上品さがない。とはいえ、機能的には全く問題なく、変速もスパッと決まる。フリクション方式だと使用時にレバーの微妙な押し引きが必要になって面倒と言われるが、ローとトップは稼働限界まで押し引きすればインデックスがあるのと同じなので、微妙な押し引きの調整が必要なのはミドルだけだ。ミドルだけなら丁度良いレバーの目盛り位置を覚えるのは簡単だし、慣れれば手の感触だけで行ける。

走行時にプッシャーとプーリーが触れていると摩擦抵抗が発生するので、そうならないように設定することが望ましい。特に3速化した場合には、プッシャーの可動範囲が3枚のスプロケットの幅を収めるのにギリギリなので、調整作業が難航しがちだ。私は最近リアフレームを換装したのだが、その際にプッシャーの可動範囲が変化して、それに対応するのが大変だった。変速できるようにするだけなら簡単だったが、プッシャーとプーリーが触れないようにするのが大変だった。変速調整にあたり、プッシャーの可動範囲は微調整しかできないので、スプロケットの配置を工夫する必要がある。

まずやるべきは、スプロケット間のスペーサを削って。3枚のスプロケットの幅をできるだけ抑えることだ。スペーサは荒目(100番とか)の紙やすりで削るのが楽だ。平行に削るには、削る面を紙やすりに押し付けて、大根おろしの要領で円状に回転させると良い。20周ごとくらいで持ち手をずらすと偏りがより少なくなるだろう。シマノの11速のチェーンを使っている場合、スペーサの厚みは2.14mmであることになっている。おそらく、2.05mmくらいまでにしても大丈夫だろうが、実際のところ試しながらじゃないとわからない。削りすぎるとチェーンの壁とスプロケットの壁が触れてしまうので注意が必要だ。2mmの既存のスペーサを試してみてもいいかもしれない。逆に微妙に厚くしたい場合は、何かの会員証やポイントカードなどのラミネートのシートをスペーサの形に切り抜いて使うと良い。

上記の努力をしても変速がうまくいかない場合、プッシャーの可動範囲が合っていない可能性がある。おそらくチェーンがローに上がらないか、トップに落ちないかのどちらかだ。

ロックリング式のハブを使っている場合、スプロケットの位置は、トップ側(外側)にだけずらせる。ローでのプーリーの位置に余裕を持たせたいなら、ローの下のスペーサを厚めにすれば良い。そうすると全体がトップ側にずれて、チェーンがミドルからローに上がりやすくなる。一方、トップでのプーリーの位置に余裕を持たせたいとしても、スプロケットをロー側(内側)にずらしてプッシャーの可動範囲に合わせることはできない。トップスプロケットの位置は、スプロケットについている鍔によって制限されるからだ(12Tなら鍔なしもあるけど)。その場合、プッシャーの可動範囲の方をずらす必要がある。1mm程度の調整であれば、プッシャーのガイドを傾けることでそれが可能になる。概念図は以下のものだ。

ガイドを傾けるには、台座に紙で詰め物をするのが簡単だ。特に力がかかる部分でもないので、レシートとかの適当な紙切れを折り畳んで詰めてから、ネジを締めて圧縮すれば良い。調整が完了してから瞬間接着剤を染み込ませて耐久性を上げても良い。

プッシャーの台座の二つのボルトでロー側とトップ側の可動範囲を狭める調整ができる。以下の公式動画を見るべし。しかし、おそらく3速化した場合には狭める方向の調整の余地はないだろう。なお、その他の部品の調整をしている場合には調整ボルトは緩めておくことが望ましい。
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プッシャーの可動範囲がどうやって決まっているのかも考察した。二つ要因がある。一つは、プッシャーの台座の下にあるウイングプレートと呼ばれる部品だ。これに、プッシャーの台座またはその調整ボルトが触れることで可動範囲を制限する。もう一つは、スプリングセットの心棒とそれを包むソケットだ。この中でスプリングセットの心棒が動ける深さが可動範囲を制限する。電動ルータがあればウイングプレートを削るのは簡単だし、心棒を削るのも簡単だ。しかし、ソケットを深くするのは難しい。心棒を短くした分だけソケットを伸ばさないと、心棒が外れてしまう。3Dプリンタならソケットを作れるかもしれないが、おいそれとはできない。よって、現実的にはプッシャーの可動範囲は固定だと思った方が良い。改めて考えてみると、2速用の可動範囲に3速のスプロケットを詰め込むなんて裏技は、全くもってメーカーの推奨外の方法なのだ。



ここまでの努力で、ロー側もトップ側も変速ができ、かつプッシャーとプーリーが触れるか触れないか程度の位置に調整できるだろう。もしできないとしたら、どこかの部品が劣化していると考えられる。まず、シフターを操作した時にプッシャーが可動範囲の限界まで円滑に動くかどうかを確認すべきだ。もたついている場合には対策する。スプリングセットのアジャスタを調整して、繋がったワイヤー系の全体を適切な長さにする。シフターケーブルのアウターケーブルかインナーワイヤーが劣化していると動きが悪くなるので、そうであれば換装する。シフターケーブルの長さが短すぎたり長すぎたりしてもワイヤーの引きが甘くなるので、そうであれば長さを調整する。それでもトップ側にチェーンが落ちない場合、スプリングセットのバネが弱っている可能性がある。その場合、スプリングセットを換装する。バネの終端とそれを止めるボルトの間に紙か何かを詰めて反発力を強めてもいいかも。

フリクション式のシフターの場合、ワイヤーの引き具合の微調整はほとんど必要ない。プッシャーの可動範囲とスプロケットの位置が合っていれば、結果的にトップとローの位置が最適化されるからだ。ミドルに変速した場合のプッシャーの位置は操作時に微調整することになる。トップからミドルに変速する場合、ミドルにチェーンが上がって変速が完了したら、ほんの少しだけレバーをトップ側に戻すと、プッシャーとプーリーが触れない状態になる。ローからミドルに変速する場合、ミドルにチェーンが落ちたところでレバーを止めればよい。この辺りの微妙な加減が必要なのは正直面倒だが、慣れれば特に難しいことはない。古式ゆかしい操作感覚と好意的に捉えることもできるだろう。

インデックス式のシフターの場合、ミドルの位置が最適になるようにワイヤーの引き具合を調整する必要がある。ミドルの状態でプッシャーとプーリーが触れないようにするのだ。ローとトップでプッシャーの押しが強すぎる場合、プッシャーのボルトで稼働範囲を制限する。私はインデックス式の方が使いやすいと思っているので、SL-S30やSLM96の手頃な中古品がオークションに出るのを監視しているところだ。

スプロケットの位置をずらした場合、チェーンラインが変わることを念頭に入れるべきだ。チェーンラインが傾いているほどに摩擦抵抗が増えるので、チェーンラインはギアの回転面と平行に近いことが望ましい。しかし、全てのギアの組み合わせで平行にすることは不可能だ。よって、自分がよく使うギアの組み合わせで平行になるようにする。私の場合、フロントダブル化しているが、平地巡行で使うアウタートップの使用頻度が圧倒的に高いので、チェーンラインをそこに最適化した。スプロケットの位置は変速の都合で決めざるを得ないので、それに合わせてアウターのチェーンリングにスペーサを噛ませた。図らずもインナーローもほぼ平行になっていて、登坂でも調子が良い。チェーンリングの位置の調整にはBBやクランクの換装が必要になる場合があるので、ちょっと面倒だ。純正のBBとクランクを使っている場合、おそらくトップとミドルの間くらいにチェーンリングの回転面が来るので、ほとんどの人にとってはそのまま使えば快適だろう。

ブロンプトンは外装2速でも十分実用になるし、何なら割り切って1速化して乗るのも独自の楽しさがある。しかし、長い距離乗ったり様々な場所で乗ったりするなら、やはり外装3速は便利だ。平地巡行のトップ、疲れた時や逆風の時やちょっとした登坂で使うミドル、急坂を超えるためのロー。変速がスパッと決まるというのは、当たり前のことではあるが、自分で調整できると何か嬉しい。内装3速に比べて外装だとトップとローの機械抵抗が低く、ちゃんと設定すればスポーツバイクと遜色ない走りをしてくれるのも良い。また、5速とか7速とかに比べると、3速はどのギアの組み合わせでもチェーンリングがだいたい平行になるのが良い。

まとめ。ブロンプトン2017年モデル以降のスプリングセットと汎用シフターを3速化の変速調整の方法を説明した。変速がうまくいかない場合、スプロケットの幅調整と、プッシャーの可動範囲の調整と、ケーブル周りの調整を順に行えば良い。