豪鬼メモ

MT車練習中

11Tスプロケットの鍔なしを発見したのでブロンプトンに装着

11Tのスプロケットは鍔付きしか巷に存在しないかと思っていたが、AliExpressで11Tの鍔なしが売られていた。これでブロンプトンに無改造の11Tをつけられる。(追記:しかし、200kmほど乗ったら破断した)


11Tのスプロケットは小さすぎるため、強度を保つのに鍔付きのものしか売られていないと思っていた。カセットスプロケットのトップにつけるには鍔ありの方が都合がよいわけだが、ブロンプトンの純正ホイールのシャフトには鍔なしのスプロケットじゃないと付かない。なので、鍔ありのを削って無理やりつけて運用していた。
mikio.hatenablog.com

うまいこと削ればちゃんと動作するスプロケットになるのだが、先日東日本一周の長旅をしていた際に、旅先(弘前)で急にスプロケットが破断するという事故に見舞われた。幸いにして都市部であったので、近隣の自転車屋さんに駆け込んだ。事情を話したら12Tの鍔なしスプロケットを中古だからと無料で譲ってもらえて、なんとか旅を続行することができた。ありがたや。削って無理やり付けたスプロケが破断したことを店主に話した際に、「そりゃ当然ですよ」と呆れ顔になっていたのを今も思い出す。

鍔を削ると耐久性が落ちるし、そもそも鍔を削る作業はめちゃくちゃ面倒くさいので、市販品でなんとか済ませられないかと考えた。上述のように11Tの鍔なしは日本では売られていないのだが、何の気なしにGoogleで「11T チタン スプロケット」で検索したところ、AliExpressそれっぽいのが売られているではないか。写真で見る限り、11個の歯があって、板状なのでスペーサで厚さを調整できるようになっている。実際の耐久性のほどは分からないが、強度が鉄の2倍あるTC4チタン合金製であるというのを信用するなら、ある程度の期待はできそうだ。少なくとも私が無理やり削った鉄製のものよりはマシだろう。値段が20ドルというのはちと高いが、スプロケを電動で削る作業は3時間では済まないので、最低賃金で換算してもペイするかな。

製品が到着した。手に持ってみると非常に軽く、いかにもチタンという感じだ。重さを測ったら3.9gしかなかった。このギアはスペーサ一体型ではないので、自分でスペーサを用意する必要がある。シマノのカセットスプロケについていた2㎜の樹脂製のものを流用したいところだが、分厚いのでそのままだとチェーンと干渉してしまう。

11Tは半径が限界の小ささなので、チェーンと車輪のシャフトが接触しそうなほど近づく。チェーンとシャフトの間に位置するスペーサに許される厚さは1mmもない。0.5mmくらいだろうか。そうなるまで削らねばならない。樹脂をそこまで薄くしたら強度に不安があるが、スプロケットを横方向にずらす力は非常に弱いので問題ない。また、2mmのスペーサだとちょっと高さが足りなかった。8速用チェーンは頑丈だが太いので、スプロケット同士の感覚が狭いと、チェーンの壁が隣のスプロケットを擦ってしまうのだ。よって、文房具の下敷きを適当に切ったものをスペーサの下に敷いて高さを調整した。

つけてみるとこんな感じだ。上から見て歯の隙間にスペーサが見えるようではチェーンと干渉してしまうので、この写真のようにスペーサが全く見えない状態でないといけない。場合によってはロックリングも削る必要があるかもしれない。

走ってみたところ、歯飛びもチェーン擦れもなく、ちゃんと動作している。スペーサがちゃんと設定できていれば、当然ながら音鳴り等の問題もない。それなりに脚力がついてくると12Tでは物足りなくなるので、11Tにまた乗れるというのは、それだけで嬉しい。実際のところ、12Tだとケイデンスが上がりすぎて尻が痛くなってしまうのだ。

耐摩耗性がどの程度なのかは長期間運用しないとわからない。数日程度の運用では全く削れる素振りはなかった。ちなみにシマノのHG51の11Tのスプロケは5000kmくらい乗ると歯が痩せてきて歯飛びするようになる。チタンだとどうなるかが見ものだ。焼き入れしたTC4のモース硬度は7.5らしく、鋼鉄の5.5より顕著に高いのでチェーンには負けないことが期待される。とはいえ、実際どんな風に作られているのかは分からないので、経過を見るしかない。

ところで、ギアを重くする方法には、リアスプロケットを小さくする他に、フロントスプロケットを大きくするという手もある。私はフロント楕円52T/リア11T=変速比4.72が最高だと思っているが、似たような変速比はフロント57T/リア12T=4.75でも実現できる。しかし、56Tより大きいチェーンリングはなかなか手に入らないし、楕円だとなおさらだ。なお、56T12Tだと変速比4.66で、54T/12Tだと4.5で、52T/12Tだと4.33となる。いずれも平地巡行で快適に飛ばすには軽すぎて、ケイデンスが上がりすぎてしまう。ブロンプトンでケイデンスを上げると尻が痛くなりやすいので、その点でも巡行用のギアはある程度重い方が良い。もっと重くして54T/11T=4.96や56T/11T=5.09にするのも面白い。そこまで重いと今の私の脚力では踏み切れないかもしれないが、低ケイデンストレーニングとして日常的に使っていれば踏めるようになるだろう。

ディレイラーテンショナーにはLiteproのアームに純正のプーリーを組み合わせて使っていた。東日本の旅の後に調べてみたら、プーリーを支えるシャフト(アルミ製)は摩耗して細くなって、純正プーリー(樹脂製)の穴は摩耗して大きくなってしまっていた。ブロンプトンの純正プーリーはベアリングがついていなくてシャフトに直に触れて擦れながら回転する方式なので、双方が摩耗してしまうのは仕方ない。

一方でLiteproのプーリーはベアリング内蔵なので、摩耗はしづらい。しかし、横方向の移動に静止摩擦力がかかるので、ギアチェンジがうまくいかないという問題がある。すぐ摩耗する純正プーリーはこれ以上使いたくないので、LIteproのプーリーに付け替えて何とか調整した。

ベアリング内蔵プーリーでシフトがうまくいかない原因をもう少し深く考察する。直接の原因は、シフターによって駆動されたプッシャーがディレイラープーリーを左右に押した際に、ディレイラープーリーが十分に動かないことである。その原因は二つある。ディレイラープーリーの横方向の摩擦力が強い事と、テンショナープーリーの横方向の摩擦力が強い事だ。後者の方が根が深い。テンショナープーリーはプッシャーが直接押すわけではなく、ディレイラープーリーが横にずれたのに伴ってチェーンラインが歪になると、それによって増大したチェーンの抵抗が伝わってテンショナープーリーが横にずれるのだ。シフトがうまくいかない時は、たいてい、テンショナープーリーが横に全く動かないことで、それに引きずられてディレイラープーリーの動きが阻害されている。これに気づくと、対策が見えてくる。対策の一つは、チェーンの長さをギリギリまで短くすることでディレイラープーリーとテンショナープーリーの距離を近づけて、双方が連動して動きやすくすることだ。しかし、スプロケがワイドレシオだと最大のギア径に合わせてチェーンの長さを決める必要があるため、あまり短くはできない。対策のもう一つは、逆にチェーンを長くすることでディレイラープーリーとテンショナープーリーの距離を大きく開けて、テンショナープーリーが動かなくてもディレイラープーリーの動きが阻害されにくくすることだ。これは私の車体でもできるが、チェーンが長いと折り畳みの際にチェーンが垂れ下がって車体と干渉するという問題がある。二つめの対策の変形として、チェーンはある程度長くしつつ、乗る前にテンショナープーリーの位置を手で調整する作戦がある。テンショナープーリーの位置が1速の際の理想的な位置と2速の際の理想的な位置の中間あたりにあれば、どちらにシフトする際にもディレイラープーリーに大きな抵抗がかからない。私はこの作戦を採用したところ、ワイドレシオでもシフトがかなりうまくいくようになった。特に難しいことはなく、どうもシフトの調子が悪いと思った時だけ、テンショナープーリーの位置を手で押して調整するだけだ。

余談だが、AliExpressには中華性の安いスプロケットがいろいろ売られていて、その中に鍔なしっぽく見える11Tもある。めちゃくちゃ安いし、8s用、9s用、10s用などの厚さも選べるので。これも買ってみた。

しかし、よく見ると、溝がない部分の鍔が凹んでいて、溝はしっかり鍔で蓋をされている構造であった。これの鍔を削るのはシマノのHG51の鍔を削るのよりも楽そうではあるが、やはり削った結果としての強度が懸念されるところだ。なので、チタン製のが機能する限りはこいつらは予備としてお蔵入りだ。

さらに余談だが、この話をfacebookのBrompton Hacksコミュニティでしたところ、Ti Partsという会社からも11Tのスプロケが出ていると教えられた。しかし、400HKD = 7500円もする。だったら私が買ったやつの方がよいかな。耐久性がどうなのかはわからないけども。11Tはすぐすり減るので、コスパを考えると高いものはその分だけ耐久してくれないと意味がない。あと、レーザーカッターでチタンシートを切断して自分でスプロケを作っているという人もいた。何個も作るならその方がコスパが良さそうだ。というか、それ売ったら儲からないかな。

後で知ったのだが、MiniMODsという会社からUnibodyというブロンプトン用のカセットスプロケットが出ていて、それに11-16-21というのがある。これ使えば簡単に3速化もできそうなので、いずれ試してみよう。

まとめ。ブロンプトンに11Tのスプロケットをつけたいなら、AliExpressでチタン製のを買うとよい。スペーサは別途自分で用意する必要がある。鍔あり11Tを削ってつける方法だと強度に問題があるが、元々鍔なしのものならその問題はない。

追記:二子玉川と環八の間の坂を52T/11Tで気合いで登っていたら、11Tが破断した。強い力には耐えられなかったらしい。うぬぬ。自作のより弱いとは、期待はずれも良いところだ。