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日常って、微妙な差異こそ大事かなと思います。


by KATEK
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「だましてください 言葉やさしく」

永瀬清子のことを,日本の女性詩の母,といったのは,
谷川俊太郎だっただろうか。
娘は,石垣りんと茨木のり子。
石垣りんがお姉さん。

わたしが永瀬清子のことを知ったのは,何がきっかけだったのか,
もう忘れてしまった。
伊藤信吉の詩集といっしょに,永瀬清子の詩集を買ったことだけ
覚えている。

『だましてください 言葉やさしく』 (童話屋)
  
この可愛いポケットサイズの詩集は,その見た目の可愛さに
くらべて,なんといったらいいのだろう・・・
重たく響いてくるものがぎっしり詰まっている。
かわいらしい女の詩でもありながら,強く激しい人間の言葉でもある。

女性が背負ってきた歴史。

    ぐれなければ     (彩の雲)

 女はぐれなければ詩は書けなかった=「放浪記」(林芙美子)
 女は後家になってはじめて詩を書いた=「笛吹き女」(深尾須磨子)
 女はあんぽんたんやうっかりひょんでなければ
 詩は書けなかった=わたし
 今はよくなった。
 自由と平等の靴が揃えてあり
 現代詩講座が街々にあり
 まともな娘や妻君もみなそこへ行けるようになった。
 スーパーと同じに―

                           永瀬清子

  (傍点,略)

でも,こんな戦闘的な詩ばかり書いていたのではなくて・・・

    悲しめる友よ    (流れる髪)

  悲しめる友よ
  女性は男性よりさきに死んではならない。
  男性より一日でもあとに残って,挫折する彼を見送り,又それを
 被わなければならない。
  男性がひとりあとへ残ったならば誰が十字架からおろし
 埋葬するであろうか。
  聖書にあるとおり女性はその時必要であり,それが女性の
 大きな仕事だから,あとへ残って悲しむ女性は,女性の本当の
 仕事をしているのだ。
  だから女性は男より弱い者であるとか,理性的でないとか,
 知らないとか,さまざまに考えられているが,女性自身はそれに
 つりこまれる事はない。
  これらの事はどこの田舎の老婆も知っている事であり,女子大学
 で教えないだけなのだ。


茨城のり子のほうがずっと自分の性から自由な詩を書いている。
やはり,永瀬清子は母なのだ。

性に縛られた女性の歴史,なぜかわたしには痛みを感じながら
読めてしまって・・・
永瀬清子のことばにうなずくわたしなのだ。
by KATEK | 2008-10-04 18:48