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初冬… 茂来山麓から

まず写真は11月44日、節季は立冬の只中であることをご承知おきください。

場所は茂来山です。私がハンドルにその名を拝借している山です。
かつては隣町の山でしたが、2005年の町村合併でわが町の山となっています。

決してアクセスの良い山ではないにもかかわらず、今も入山者は絶えることなくあります。
合併前は麓の集落までバスもあったのですが、今は車での入山しか手段がありません。
私は運転をしないので、麓の集落まで片道12キロを自転車で、そこからの入山となります。


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集落から急坂を自転車を押し上げること数十m、標高888m地点。ここからスタートです。
小さな館物は簡易水道施設、茂来山は水源の山でもあります。

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民家はありませんが、この辺りまでは農地もあります。

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東方向には上州の山々、茂来山は秩父山系の西端に位置すると言われています。

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木々の間に覗くのは茂来山ではありません。山懐に入れば山頂は望めません。

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コナラの黄葉です。今年はドングリや栗はまずまずの実り…少し安堵する。

ここから少し飛ばします。この先には採石場があり、30数年の間の山体が一つ消えている。
同じ様に歩くなら目にしたくない光景だと思う。長い区間ではないがそんな林道歩きのあるルートです。
右手には沢が走るから沢詰めすればよいようですが、2019年の台風で荒れた渓は今も倒木に難儀します。
実際この林道自体のも土砂に埋まり、何年かは車が入れませんでした。

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その沢にある三段10mほどの滝です。沢の名は霧久保沢、詰めるにはそれなりの支度が必要となります。

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滝を過ぎたあたりから沢は右手に浅くなり…あくまでも林道との関係ですが…
沢を横目に気持ちのいい林道歩きになります。

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カエデの仲間の多い渓です。一番多く見られるオオモミジです。

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流れとの間の平坦な場所には植林と思われる落葉松が目立ちます。
昔、薪炭林として活用された後に植えられたのかもしれません。

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この山を代表する樹のひとつ、トチノキ。この先には巨樹百選に選ばれたトチノキがあります。
一時期それを目当ての登山者が大挙して… 残念なことに山はおおいに荒れてしまいました。

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どの木の色づきも年々遅くなっています。
風が吹くたびに落葉松が金の雨を降らしました。

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誰の手も借りずに、谷の深さだけでここの落葉松は真っ直ぐに天を衝く。

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北向きのこの谷は日照が限られる。一条の光が運ぶものが だから大きい。

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このオオモミジは早くにこの山で覚えた木のひとつです。
三十年を過ぎおおきくなったなあ…と感じるこの山での私のランドマークひとつです。

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夏の暑さが長引いたためかためか、いつになく枯れあがる葉が多いです。
日照の少ないこの谷でも、赤く染まったのはオオモミジくらいでした。

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だいたい標高1000m地点。最初のミズナラに出会います。

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最後まで落とさない葉と大きなドングリ…ミズナラは大好きな木です。

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三幹の大きなアカマツに、ミズナラ、オオモミジ、落葉松が寄り添います。
引きのない場所で納め切らないですが、必ず立ち止まる場所になっています。

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沢伝いに移動する動物たちは多い。昼なを暗い谷は彼らとの出会いの場所でもあります。
写真では一跨ぎに見えますが、このあたりでも川幅は二間以上あります。

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この谷の深さがお分かりいただけるでしょうか。

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林道脇に幅五間ほどの露岩を見る場所があります。

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この場所ではコウモリによく出くわします。見つけていただけるでしょうか?

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コウモリには不案内で確かにはわかりませんが、同じ場所を繰り返し飛ぶ様子、
体の大きさ〈大型の蝶くらい)からコキクガシラコウモリではないかと思っています。
写真データからは少なくとも30数分、この場にいた間一度も飛行を止めないのに驚きました。

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この露岩に一か所空いた洞があります。
落ち葉に隠れていますが、洞内だけでなく壁面の手前は通年同じ水量で満たされています。
この洞は幅1mくらいですが、コウモリは度々行き来し長いときは2分ほど戻りません。
茂来山には少し戻った場所にタタラ製鉄の遺構跡があります。
江戸末期の短い期間の様ですが、砂鉄ではなく鉄鉱石を用いた珍しものだそうです。
そうして見るとこの洞は、かつての坑道のようにも思えます。真相は謎ですが…

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タタラ遺跡の看板です。

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再び林道を外れて沢筋を歩きます。

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今日の目的は登山ではありません。倒木は2019年の台風の爪痕です。

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さてここらで珈琲タイムとしましょう。
私は夏場にこの渓で釣りをします。今年は5年ぶりに竿をだしました。
台風後、麓の集落の方々から岩魚…全てこの渓の居付きです…の絶滅の話を聞いていましたから。
なるほど下流域では魚影はなく、短く区切って何度か入渓を繰り返しました。
岩魚は残っていました。ずいぶん数も場所も減らしながらも。
あと数年も渓が荒れなければ戻るのかな… たぶんその頃には竿を下ろしているでしょうが。

この沢の水で珈琲を淹れる。今日はそれを楽しみのひとつにやって来ました。

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どんなに荒れても、山も渓もあるべき姿に帰っていくように思います。

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やがて穏やかな滑〈なめ)の続く場所が現れます。

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今日の終点が近づく頃、茂来山からの沢が合流します。
この沢の源頭は茂来山の標高1300m付近。霧久保沢は茂来山と隣山のつくる谷を流れます。

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ここが一般的な登山口、私の本日の終点となる標高1050m地点です。
ずいぶん広い駐車スペースとなっています。中型のバスが団体を運んだ時期もありました。


山はどこから始まるのだろうか。島や富士山のような山なら海抜0mからかもしれません。
さすがに長野県のように人住む標高の高い場所ではそうはいきませんが。
だんだん少なくなっていますが、私は麓の集落が起点になると思っています。
茂来山はそんな山のひとつです。
最初の入山時、近年まで炭焼きがされていた言わば里山が、こんなに豊かな山として残っていることに驚きました。
写真の起点が888mと書きましたが、実際自転車を押して歩き始めるのは780mくらいからです。
登山口まで僅か標高差270mほど。登山口から山頂まで670mほどです。
しかし茂来山の魅力の半分はこの麓の部分にこそあると思っています。

地の利があるとはいえ、私にとってこの山は生涯最も多く歩いたことになるだろう山です。
歩くたびにまた一つの木の所在を知り、花の咲く時期やその終の姿を知りました。
多くの動物や鳥たち、魚や虫たちに至るまでこの山で知りえたことはとても多いです。

そしてその何倍もの知らないことが山積みとなって今日に至っています。


 ※写真はクリックで拡大致します



2019年の台風後の茂来山の記事を封印しておりました。
まとめきれないままの記事となってますが、この記事との関連から公開いたします。
記事中の巨樹百選に選ばれたトチノキ『こぶ太郎』もご覧いただけます。記事はこちらから


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# by moraisan | 2024-11-30 16:17 | 茂来山 | Trackback | Comments(4)
いのちとの距離…

風に木の葉が舞う頃となりました。
色づく葉を残す木々は多いとはいえ、もうその幹と葉の連絡はない。
まだそこかしこに花も残っている。
でも多くはその種を宿して、私なんかは全身でそれを運んでいる。
虫たちもまだ飛んでいる。
すっかり少なくなった花には、必ず彼らが訪れて名残を惜しんでいるようだ。


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道脇のニラの花にテングチョウが寄っている。
冬越しをするこの蝶は、まだまだ元気な様子である。

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吸蜜に夢中なのに、すこし距離をつめていく…

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アザミを訪れてみごとなホバリングを見せたのはホソヒラタアブ。
このハナアブが後肢で巧みに飛行を操っているのを初めて知りました。
ヤツガタケアザミでいいかと思います)

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疲れて?止まったところに少しその距離をつめる。
口吻の短い彼らは花を選ぶ。花を咲かす日差しがあれば、彼らは真っ先に訪れる。
雪の中に咲く福寿草には必ず彼らの姿があります。


むせかえるような草花の匂いも、まとわりつくほど飛び交う虫たちの姿も今はありません。
ないものねだりなのだろうか… この季節は彼らとの距離が少し縮まる気がします。

私の目に映るいのちの姿。 彼らに私はどう映っているのだろうか…


※写真はクリックで拡大致します

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# by moraisan | 2024-11-01 22:14 | いのち | Trackback | Comments(0)
秋日散歩…

このところ急に秋が進みました。
以前に書いた通り、私には比較的近いところに訪ねる小さな森があります。
今は少し遠くなったそれらの森を歩くことに、多く時間を費やしますが、身近なところにも散歩道はあります。

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県道に出て少し歩いて踏切を渡り左折、段丘斜面につけられた農道を上ります。

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県道脇の休耕地に勝手に増えたコスモス。咲き残りです。
背景の浅い森を目指して歩きます。

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上る農道肩にフシグロセンノウが点々と残っていました。
10輪ほどのどれもが一枚花弁を落として…

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段丘上の狭い森に入る。ここはいつも暗い。
そのぶん光を拾い歩く楽しみがあります。

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最初に光を掴んでいたのは蜘蛛の糸。

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路肩のサラシナショウマ

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道中のチジミザサ

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谷側にツリフネソウ…
みんな僅かな光に応えて浮かぶ。

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短い距離で抜ける森だが、段丘斜面に連なる森。
大きな古木が何本かあり、通年フクロウが棲みついている森です。

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森を抜けると小さな畑地。やっと轍がわかる程度の農道は森から続いています。
コツブキンエノコロ? 自信ありません(*_*;

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道草するうな草道は、こんな田舎でもめっきり少なくなりました。
イヌタデ…アカマンマの方がいいですね。

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ハキダメギク…この名も何とかなりませんでしたか、牧野博士。
小さくても丁寧な造作が好きな花です。

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少し日陰になった場所に咲くハナタデ。
野草の良さを語り掛けてくるようなこの花です。

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すぐそばに咲き残っていたナンバンハコベ。
下向きの花も残っていたけど、顔を上げる実のころの方が好きかもしれない。

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段丘上の東電の発電用水源涵養池を久しぶりに覗く。
以前は春先だけだったカンムリカイツブリ。営巣しているらしく幼鳥の姿も数羽見えました。

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ススキのつくる青海波。
この段丘上からは八ヶ岳が一望できます。

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ユウガギクの一叢。大好きなこの野菊の少ない秋です。

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ツマグロキンバエ…その名をいつも忘れます。複眼の縞模様など、何度見てもSF世界に誘われます。

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傾いた陽の中に、一所だけ色づく葉を見ました。

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若いミズキでした。成長の早いミズキですから、二、三年生でしょうか…
まだ実を結んだ様子もなく、花を待つ楽しみができました。

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落日に歩みを合わせて段丘斜面を下ります。
時に夏草に隠れる小路は、斜面に点在する小さな墓所への墓参道… 縫うように上と下を繋いでいます。
このアザミ、倒れているわけではありません。

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この花が光を求めた姿です。


ある日の夕刻、ふと思い立って歩きはじめます。

おおよそどこにどんな花が咲き、木々の配置までを知る道を

ただそれを確認するために歩きます… 

そこに自身を確認するために。


※写真はクリックで拡大致します


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# by moraisan | 2024-10-19 12:57 | まばたきの記憶 | Trackback | Comments(2)
森の出来事…

少し間があいて尋ねた森は、思ったほど季節が進んでいませんでした。
この小さな森は隣村の入会林に接していて、いわゆる茸山なので入山禁止の看板が掲げられています。
原発事故の放射能ブルームはこの辺りまで届いたので、野生の茸の採取や販売は長く禁止されていました。
それがこの秋、松茸だけが解禁〈他の茸はダメなのに?)、看板の文字にも力がこもっているようです。

一方向に進む時間とその場所空間に身を置いた時、そこに出来事が生まれるように思います。
生きているから出来事があるのか、出来事が生きることへの憧れを生むのか… 
…おそらく私には区別なくですが。
時間の方向は夢の中以外では動かしがたく、選べるのは身を置く場所空間だけです。

それが私が森を歩く理由なのだと思います。


常にビジターでしかない私にとって、たいてい森での時間は穏やかに流れます。
でも時には驚くような出来事も目にします。その瞬間を写真に収める腕は私にはありません。
お話と当事者の片割れの写真から想像していただけたらと思います。

この森は狭い幅員の未舗装の林道が通っています。
軽トラックくらいがやっとなので、かつてこの場所で林業が行われていたとは不思議なくらいです。
その道を歩きながら斜面の獣道を行きつ戻りつしながら森をつめて行きます。
不意に目の前の林道を急ぎ横切る小さな影がありました。野ネズミかと思いました。
昼なを暗いこの森では、日中に彼らの姿を見ることも度々ありましたから。
とその後を追って、これまた素晴らしい速さで道を横切ったのはシマヘビでした。
高く鎌首をもたげたまましなやかに胴をS字に波打たせながら、右の斜面へと姿を消したかに見えました。
しかし決着はすぐにつきました。”キュウー、キューッ” 聞いたことない悲鳴が静かな森に響きます。
手の届く場所からの声に私はその顛末を目撃する覚悟をしました。

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これがそのシマヘビです。体調は1m20~30cm程でしょうか。
実は彼もしくは彼女ですが、なんと獲物を取り逃がしてしまいます。
来た方を跳んで逃げて行ったのは大きなヤマアカガエルでした。
失敗を目撃されて、少しバツの悪そうな顔をしているように見えました。


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頭こそ3cmに満たない小顔ながら、胴の太いところなら幼子の腕ほどにも見えます。
全力を尽くしたのでしょう、その腹は大きく膨縮を繰り返しています。
私もその場を立ち去りがたく、彼(彼女)の脇の斜面に背をあずけます。
蛇に睨まれた蛙の話は例えにも聞きますが、こんな追いかけっこ(狩りですね)は想像したこともありませんでした。

ほんの少し肘を伸ばせば触れられる距離で、異形がふたつ並んでいます。
この出来事は私にとっては目撃事件でした。

隣に寝そべる私はお前さんにとって何だい? 遭遇事故ということで…いいかな?



※写真はクリックで拡大いたします


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# by moraisan | 2024-10-12 11:27 | いのち | Trackback | Comments(0)
事実の中を歩きたい…

ようやく秋らしい気温の日がおとずれている。


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チカラシバ


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ノコンギク


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森には事実だけがある
千や万の真実などそこにはない

そんな事に気づくのに ずいぶん時をついやしたものだ

そこに明かされているものを ただ見よう ただ聴こう

そうやって最後まで 歩けたら いいな…


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# by moraisan | 2024-10-09 00:20 | 山野草・樹木 | Trackback | Comments(4)