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月の内部構造が判明。内核は硬く地球のように固体であることが確認される

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 月は私たちにとって馴染み深い天体だが、さまざまな謎に包まれている。月の中央にある内核が固体なのか、液体なのかについても熱い議論が交わされていた。

 だがついに決着がついた。月の内核(コア)は硬い塊であることが確認されたのだ。

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 『Nature』(2023年5月3日付)に掲載された研究では、月の内核が鉄に近い密度を持つ固体の球であることを明らかにしている。

 この結果は、かねてからの論争に終止符を打つもので、月の歴史を教えてくれるのみならず、太陽系の歴史を紐解く重要なヒントでもあるそうだ。

月の内核は固体なのか?液体なのか?

 惑星の内部がどうなっているのか知る手がかりの1つは地震だ。

 地震によって生じた地震波は、惑星の内部を伝わって広がる。だが、その伝わり方は内部の状況によって違う。だから、これを分析することで、中身がどうなっているのか推測することができる。

 つい最近も火星の地震(火震)のデータから、火星の核は液体であることが明らかになったばかりだ。

 これまで月で集められた地震のデータとしては、アポロ計画のものがある。ただし、これはあまり詳しいデータではないために、月の核の状態を断言することができなかった。

 核の外側(外核)が液体であるらしいことわかっているが、問題はその中身である内核だ。

 アポロ計画のデータに基づく限り、内核を固体としたモデルでも液体としたモデルでも、どちらももっともらしく見えるのだ。

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月の特徴を測定する機器のイメージ / image credit:Geoazur/Nicolas Sarter

月の内核は固体であることが判明

 今回、フランス国立科学研究センターの天文学者アルチュール・ブロー氏らが率いるチームは、地震とはまた違う手がかりから、月の内部の状態を分析している。

 その手がかりとは、宇宙で行われたミッションや月レーザー測距実験などで集められたデータだ。

 こうしたデータから、地球との重力の相互作用による月の変形、地球と月の距離の変化、月の密度といった特徴を割り出す。

 そのうえで、いろいろなタイプの月の核を想定したシミュレーションを行い、現実の月の特徴と一番よく一致する核を探したのだ。

 その結果わかったのは、一番現実のものに近い月モデルの内部では、せわしなく”転覆(てんぷく)”が起きているということだ。

 つまり月の内部では、密度の高い物質が中心に向かって落下しつつ、密度の低い物質が浮かび上がっているらしいのだ。

 こうした動きは、月の火山地帯に特定の元素が存在する理由を説明する方法として、以前より提唱されてきたものだ。

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photo by Unsplash

月の核は地球の核とよく似ている

 また月の核は、外側が液体で、内側が固体であることも明らかになっている。つまり地球の核とよく似た構造であるということだ。

 今回の研究によれば、月の外核は半径約362km、内核は半径約258km。月自体の半径の約15パーセントを占めている。

 また、内核の重さは1m3あたり約7822kg。密度的には鉄に非常に近いのだという。

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photo by Unsplash

月の歴史や太陽系の歴史を紐解くヒント

 ちなみに10年ほど前、NASAの研究者がアポロ計画のデータを当時最先端の分析法で調べたことがある。

 その2011年の研究では、月の内核は半径約240km、密度約8000kg/m3の固体と、今回のものとほぼ同じ結論を出している。

 つまり今回の研究は2011年の結論を裏付けるもので、月の核が地球のそれに似たような状態にあるという強力な科学的証拠なのである。

 なお、こうした発見は、月の進化を知るうえでも重要な手がかりとなる。

 現在の月に地球のような強力な磁場はない。それが誕生して間もない頃には頼もしい磁場があったようだが、32億年ほど前からだんだんと弱くなり始めたようだ。

 地球の磁場は、核の運動や対流によって生じているため、月の磁場が衰えてしまった原因も、その核の状況と深く関係してるだろうと考えられる。

 それを引き起こした原因を追求することは、月の歴史だけでなく、太陽系の歴史についても紐解く結果につながるのだそうだ。

References:The lunar solid inner core and the mantle overturn | Nature / Scientists Finally Confirm What’s Inside The Moon / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント、11件

コメントを書く

    1. >>1
      記事をちゃんと読んで理解すればわかるが、アポロ時代やいままで蓄積されたデータと最新の観測を合わせてほぼ確定となった話だよ
      予想や推測だけで満足する事は科学的でないし、ましてや第三者が立てた予想を知っていた程度でドヤ顔するのも科学的ではないと思う

      1. >>3
        だからそれも含めてって話だよ。論文だけなら当時から出てたし反論もなかったことを新事実みたいな記事で焼き直すのって楽しいか?ってこと
        勝手にエスパーしてドヤ顔するのも科学的ではないと思う

        1. >>8
          この記事の主旨は「鉄がそれに近い密度」の話ではなくて、月のコアが液体か固体化論争に決着がつきそうな話の記事なので、そもそもで内容を理解できていないですね

        2. >>8
          記事に過去の説を裏付けたって書いてあるじゃん
          あなたは専門家のようなので裏付けたという新しい部分について評価してあげたら?

      2. >>3
        あなたは根本的に前提がおかしい
        だから「記事をちゃんと読めば」と言われる

        >新事実みたいな記事で焼き直すのって楽しいか?
        ↑どこをどう見てこういう前提になるのか?
        タイトルだって「確認された」って記事であって新事実判明みたいに書いていない
        前の研究の裏付けと書いてある
        科学における「確認」の意義を理解していないのなら黙っていたほうが良い

  1. 地球って半熟卵のドロドロ状態だと思ってた
    かなりカチカチ?

  2. 月って岩石の塊だと思ってた
    外核が液体で動きがあることが驚きだ

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