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葉緑素がないのに生きている?自然の法則に逆らう謎の白い植物「アルビノ・レッドウッド」

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 ほとんどの植物にとって葉緑素を作れないということは死を意味する。だが米カリフォルニア州ハンボルト・レッドウッズ国立・州立公園のアルビノ・レッドウッドについてはこの法則が当てはまらないようだ。レッドウッドは、セコイア属の常緑針葉樹である。

 ほぼ完全に真っ白なものもあれば、半分が緑で半分が白いものもある。共通しているのは、枯れてしまうはずなのに、そうなっていないということだ。

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Revisiting Albino Redwoods, Biological Mystery: Science on the SPOT:

その存在すら疑われる謎の白い植物「アルビノ・レッドウッド」

 100年以上も専門家を困惑させるアルビノ・レッドウッドは存在自体が馬鹿げており、直接見たことがない者の中には、実在を疑う者も大勢いる。

 その謎を研究する生物学者ゼーン・ムーアは確かに存在することを保証するが、好奇心旺盛なツーリストなどから守るために正確な位置までは明かしてくれない。

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image credit:Brian Caldwell

 ムーア氏がアルビノ・レッドウッドについて初めて知ったのはラジオだったという。興味を引かれて、国立・州立公園に見に行くことにした。

 レッドウッドの森を散策しながら、植物学者や公園のレンジャーなどと交流したことが彼の将来の進路を決定した。今、彼は弱冠22歳ながらアルビノ・レッドウッドの権威の1人である。

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image credit:Zane Moore/Facebook

 レッドウッドの100万エーカーの森ではアルビノ・レッドウッドが411本発見されている。ここは「幽霊の森」と呼ばれることあるが、それも頷ける。

 「あるはずがないんです。死んでいるべきなんです。なのにそうなっていない。まるで幽霊ですよ」とムーア氏。

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image credit:Jay Joslin

なぜ白いのか?その秘密は土壌にあった

 昔からその真っ白な枝は寄生虫のせいだと言われてきた。しかし、生産的な枝が取り除かれた木が何年も寄生虫に耐えることに、ムーア氏は得心いかなかった。

 単純な寄生虫との関係ではない秘密があるはずだった。そこで樹木の専門家トム・ステープルトンと手を結び、その謎を探ることにした。

 判明したことは非常に興味深い事実である。そのいずれもがハンボルト・レッドウッズ州立公園の外縁に分布していたのだ。

 特殊な土壌と環境条件のため、レッドウッズは特定の地点を越えて成長することがない。アルビノが生えているのは、その境界であった。

アルビノ・レッドウッドは重金属が多く含まれていた

 そこで土壌を調査したところ、また別の興味深い事実が明らかになった。ニッケル、銅、カドミウムといった重金属の濃度が高かったのだ。またアルビノ自体も通常のものより2倍も重金属を含んでいた。

 さらに面白いのは、通常のレッドウッドにとってこのレベルの重金属が致死量であることだ。重金属の毒性によって葉緑素が作れなくなり、光合成が行えなくなる。だが白いレッドウッドではこれが問題にならない。

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image credit:Zane Moore/Facebook

奇妙な共生関係

 ムーア氏の考えでは、アルビノと通常の木は共生関係にあるのだという。アルビノは有害な重金属を蓄え、緑の部分を健やかなままに保つ。代わりに緑の部分が生存に不可欠な葉緑素を作り、それを供給する。

 植物の視点に立ってみると、役立たずになった白い部分に糖を少々投資しているようなものだ。これによって白い部分が働き、自身の成長を早めることができる。これを何年も繰り返した結果が、巨大なアルビノの枝だ。

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image credit:Zane Moore/Facebook

異なるDNAを有するレッドウッドキメラ

 木が生きられる仕組みはまだ完全には理解されていないが、アルビノは健康なレッドウッドの十分近くにあれば、根を接ぎ木して栄養を得ることができる。

 ほとんどのアルビノが、特に完全に真っ白なものが元気が無く、栄養不足に見えるのは、少量の葉緑素しか受け取れないためだ。

 白と緑の部分を持つレッドウッドキメラはさらに驚きで、なんと異なるDNAを2つ有している。言わば、1つの体の中で2人の人間が生きているようなものだ。こうした標本はこれまで10本しか見つかっていない。

 アルビノと健康なレッドウッドの共生関係説は現段階では仮説にすぎず、今はこれを検証するための実験が行われているところだ。

 だが、仮に誤りであることが判明したとしても、いずれは謎の解明にいたる貴重な情報が得られることだろう。それまでハンボルト・レッドウッズ州立公園のこの場所は謎の幽霊の森であり続ける。

via:Zane Moore/Facebook / odditycentralなど/ translated hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント、43件

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  1. ギンリョウソウだって葉緑素なしでやっていけてるんだから、
    結構どうにかなるんじゃないの

    1. ※1
      ギンリョウソウは菌類との共生(というかほぼ寄生)で栄養を得てるから
      このレッドウッドとはまた話が違うと思う
      それにしても生物にはまだまだ驚くべき事実が多いなあ

    2. ※1
      だね
      あれは薄にだが、レッドウッドは同種の杉に寄生するんだろう。
      なら斑入りの樹木と変らない、柾だって真っ白な枝が出る。

      ただ、もともと杉は根が繋がるものなのだろうか?
      アメリカ杉は違うのだろうか?
      その辺りが不思議。

  2. 重金属を取り込むということですが、そのアルビノ・レッドウッドが本当に枯れたとき、取り込まれた重金属はどうなるのでしょうか。

  3. 土壌の毒を引き受ける代わりに葉緑素を得ている可能性があると言う事か。

    1. ※7 アントシアニンという色素が葉の表面に現れているのではないでしょうか?
      紫外線を浴びて秋になると紅葉する植物と初めから紫などの色が現れるタイプがありますね

    2. ※7
      紫蘇(青ジソじゃない普通の赤ジソ)なんかも、
      紫蘇ジュースにしようと思って煮出したら、
      水に赤紫色が溶け出した後は
      葉っぱは青ジソみたいな緑色になってるよ。

      葉緑素が無い訳じゃなくて、緑の上に
      さらに別の色素も混じって形成された外見なんだろう。

      アントシアニン含有の紫黒い葉の植物は
      強すぎる日光の紫外線から受ける葉緑体の損傷を
      保護する働きを持っていると言われている。

  4. 洞窟で栽培する白いウドもあるし、土あれば何とかなるんちゃうか。
    まあ、葉緑素がないって言うなら日の当たらない場所で栽培してみれば、結果でるんやないかな。

  5. たまーに遺伝子疾患として人間にもモザイクの個体が生まれるけど……
    これはなんか事情が違ってそうだ

  6. アルビノが役に立ってるんじゃなくて、有害な重金属の集積機能が進化した結果として白化したということだろ

  7. 通常の葉緑素はMgを核とするらしいが、重金属を核とする変性葉緑素を作ってるのではなかろうか。共生で重金属を引き受けるのなら葉っぱを作る必要がないと思う。

  8. んんん?植物って光合成は葉緑素がないとできないけど呼吸はできるのでは?

    1. ※13 呼吸は酸素と炭水化物からエネルギーを作る反応だけど、この炭水化物を植物は光合成で作っているので、普通に考えたら葉緑素は必要になると思う。
      記事にある様に他の木から炭水化物をもらっているのか、それとも紫外線か赤外線で光合成していて肉眼では色が無い様に見えるのかも?

  9. 私もギンリョウソウの様に真菌類を介して他の植物から栄養を受け取っているに一票

  10. お隣同士で役割分担してる訳か
    私が毒吸うから貴方はご飯作って食わせてって感じか?

  11. 毒を引き受ける代わりに栄養ももらってて、栄養を作ってるやつは毒を引き受けてもらう代わりに栄養も渡してるいわばごみ処理業者と顧客みたいな関係なのか……
    しかも一部はそれを自分の中だけでやってると、そりゃびっくりだ

  12. 木の形も萎縮してるし本当に変わってる。もし周りのノーマルな木と根で養分のやり取りしてるなら単独では生きれないんだろうね。気になるし続報が出るといいんだけど。

  13. ほえー植物すごい…
    アルビノは色違いのオーロットみたい。綺麗だな

  14. 重金属を吸収しても、葉が落ちたり枯れたりすればまた土壌に重金属が戻るってことですよね?

  15. 日本でも、古くから一枝マッシロなのが出るのを「おばけ」と呼ぶよ。
    めずらし~!と思って挿し木にしても育たない。
    このアルビノは根で基本種とつながってるの?

  16. 条件の悪い環境化で生き抜くための特殊な進化か
    インテリジェントデザインを信じてる訳じゃないけど、
    こういうのみると自然淘汰以外のなにかがあるんじゃないかと思いたくなる

  17. 寄生植物ならあり得るけど宿主が無いと栄養が・・・不思議だねー

  18. これ樹冠のほうはどうなってるんでしょうね。
    下の葉だけ白くて上の葉が普通に緑なら栄養はなんとかなりそうだけど……。

  19. 光合成細菌(葉緑体もその一つで酸素作るタイプ)自体は緑、赤、藍色だったかな。

    重金属で変色しちゃったとか?

  20. 銀竜草は15cmくらいでちっちゃいじゃん?だからもっとちっちゃい菌経由の栄養でなんとかなるかもしれないけど、このアルビノ木はけっこう大きいよね。。。まあ菌の力をなめたらいけないけど。

  21. 植物が毒を吸収して土壌を回復させてると考えると、まんまナウシカの世界みたいやな

  22. 植物は接ぎ木とかで簡単に後天的にキメラになれるし同じ種類の木が勝手にくっついて一本になることもあるから見えないところで健康な木と手を繋いで栄養もらうのは割と簡単なのかも

  23. アルビノレッドウッド、キメラ化ならなんとなく頷けるかも
    そもそもレッドウッドの実生自体、発生するのに必要な条件がけっこう厳しかったような気がする(落雷を浴びるのだったか)ので、代替わりよりも生存戦略としてこの変質を選んだってことはありそう。
    にしても、重金属を吸収ってすごいな……!これだから植物はわくわくする

  24. 葉緑素が無いなら寄生を疑うのは常識ではないのか…?
    植物学ってどうなってるのやら

    しかし、これはもっと研究が進んでから知りたかったなあ
    荒らされるリスクを第一に考えてもらいたかった

  25. おいおいこのおデブちゃん
    満足気にアルビノ・レッドウッドの上に寝転んでるけどいいのか?
    葉っぱ潰してるぞ

  26. これは面白いなー
    葉っぱは水を蒸発させて養分を吸い上げるためだけにあるんだね

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