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物理的にありえない。超貪欲な大食いブラックホールが発見される

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周囲の物質を飲み込み、明るく輝く大食いブラックホールのイメージこの画像を大きなサイズで見る
image credit: NOIRLab/NSF/AURA/J. da Silva/M. Zamani

 初期の宇宙で、観測史上もっとも大食いな超大質量ブラックホールが発見されたそうだ。

 ビッグバンからわずか15億年後の「LID-568銀河」の中心にあるそのブラックホールは、ブラックホールが吸収できる理論上の最大値「エディントン限界」を40倍も上回る勢いで周囲の物質を飲み込んでいる。

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 この前代未聞の怪物ブラックホールは、宇宙誕生からほんの短期間でなぜ巨大なブラックホールが形成されるのかという、天文学上の難問を解明する重要なヒントになるという。

ブラックホールの大食いに限界がある理由

 問題の超大質量ブラックホールは、ビッグバンから15億年しか経過していない初期宇宙にある「LID-568銀河」で発見された。

 それを分析したジェミニ天文台の研究チームは、この怪物が周囲の物質を飲み込むスピードは、ブラックホールが物質を吸収できる理論上の最大値をはるかに超えていたことに驚いた。

 ブラックホールはその強力な重力で周囲の物質を引き寄せるが、そうした物質はいきなりそこに落下するわけではない。

 それらはブラックホールの周囲に「降着円盤」と呼ばれる円盤状の構造となって集まり、渦巻きを描いて排水口に流れる水のように、円盤の内側から吸い込まれていく。

 こうして形成された降着円盤内では、そこにある物質がすさまじい摩擦と重力によって激しく加熱され、光を放つようになる。

 重要なのは、この光には圧力があることだ。

  たった1つの光子ならほとんど影響はないが、ブラックホールの降着円盤が放つ光は膨大なものだ。

 するとその外向きの圧力も無視できないものとなり、内向きの重力に対抗するようになる。

 ブラックホールが大量の物質を飲み込もうとするほどに、そうした圧力は強まる。やがては重力と圧力が釣り合い、それ以上物質を飲み込めなくなる。

 これが「エディントン限界」や「エディントン光度」と呼ばれるブラックホールが飲み込める速度の理論上の限界値だ。

 だが今回の超大質量ブラックホールはその限界値を40倍も上回るスピードで、物質を貪っているようなのだ。

 じつのところエディントン限界を超える大食いはあり得る。

 それを「超エディントン降着」という。この状況では、光の圧力に逆らえなくなる前に、ブラックホールができるだけたくさんの物質を飲み込んでいるとされる。

 この現象は、宇宙が誕生して間もない時期に超大質量ブラックホールがすでに存在する理由を説明してくれると考えられている。

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中心に超大質量ブラックホールがある初期宇宙の矮小銀河のイメージ/NOIRLab/NSF/AURA/J. da Silva/M. Zamani

限界を上回る超大食い状態の実例

 LID-568銀河は最初、チャンドラ宇宙望遠鏡によって発見された。

 ジェミニ天文台のチームがこのほど発表したのは、この銀河をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で追跡調査した結果だ。

 それによると、最初はLID-568銀河の距離を割り出すのに苦労したという。

 非常に遠方にあり、かすかにしか見えなかったからだ。だがジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に搭載された近赤外線分光器を用いたところ、どうにか銀河の正確な距離を測定することができた。

 すると、それはかすかにしか見えないが、その距離を踏まえるなら実際にはかなり明るいだろうことがわかったのだ。

 さらに詳しく観測すると、その中心に超大質量ブラックホールがあり、そこに落下する物質の一部が強力なアウトフローとなって宇宙に放出されているらしいことがわかった。

 その質量は太陽の質量の720万倍程度で、超大質量ブラックホールとしては比較的小さなものだ(この宇宙には太陽質量の327億倍という怪物がいる)。

 ところが、そこから放たれる光は、その規模のブラックホールのものをはるかに超えていた。

 このブラックホールが超大飯食らいであることがわかるのは、この光のおかげだ。

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Photo by:iStock

宇宙初期のプロセスを知る貴重なヒントを与えてくれる

 このような超エディントン降着は長くは続かないだろうと考えられている。まさに決定的瞬間と言えるもので、研究チームは今回それを目撃できたのは非常に幸運だったと述べている。

 今後LID-568銀河は、超エディントン降着を観察できる貴重なサンプルとして天文学者たちの間で人気が出るだろう。そしてそれは初期宇宙に何が起きたのかを解明するための重要なヒントだと考えられている。

 初期の超大質量ブラックホールが、星の崩壊によって誕生したのではなく、重力によって巨大な星や巨大なガスが直接崩壊して形成されたことを示唆する証拠がある。

 今回観測された超エディントン降着もこうしたプロセスを解明するパズルの1ピースだと考えられるそうだ。

 この研究は『Nature Astronomy』(2024年11月4日付)に発表された。

References: This Black Hole Is Eating Stuff at Over 40 Times The Theoretical Limit : ScienceAlert

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この記事へのコメント 10件

コメントを書く

  1. スケールがデカすぎて、明日の夕食の方が重要にさえ思えてくる。

  2. 宇宙の話は桁外れのが多くて
    お、おおう…
    としか言えない物が多いな

    1. 太陽の何億倍、とか平気で出てくるしね。
      人間からしたら太陽だって想像を絶するほど巨大なのに。

  3. 物理的にありえないものが観測されたってことは物理が間違ってるってことでは?

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