シャシャンボナガタマムシ

使用機材:https://ita.hatenadiary.jp/entry/20180816/p2
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前日譚 2024-05-18 富士山麓

まだ出現しているカミキリ・タマムシが少ないこの時期、材での採集を試み各所に赴きました。
その中で一つ狙っていたのが「アサヒナルリナガタマムシ」。なんとなく北海道の虫だと思っていて、図鑑には静岡の個体が載っていて、へーそんなとこにもいるんだ、くらいに思っていました。しかし月刊むしの過去記事を読んでみると、タイプ産地は京都で、最近は静岡の低山で偶然発見され、その後に北海道でも多く見つかったとのことだった。
ホスト植物はスイカズラの仲間の「ツクバネウツギ」。なんとなく富士山麓にありそうだと思い、この時期なら花が咲いてて分かりやすいんではないかと探しに行きました。結論から言うと標高1000mあたりではまだ咲いてなくて見つけにくい。南麓にはぼちぼちあったけど、むしろ北麓で以前「バイカウツギ」を探して見つけたエリアで、「バイカじゃないほう」とだけ認識してた低木がツクバネで、たくさんありました。感じとしてはタンナっぽい白っぽい低木だけど、タンナほど白くはない、て感じですね。花はツボミでもガクの形で分かります。羽脱した穴がないかと調べましたが見つからず。静岡の記録といっても数百キロは離れている地点なので難しいですね。

タンナサワフタギ

探索中に見つけた物件。うまそうな「フォルモサ茸」です。
6末にもなればフルモサとヘリグロホソハナのご神木になっているでしょう。

ヤマハンノキ

中型のタマムシ羽脱穴のある倒木。合計1mほど持ち帰りましたが冬まで待ってもゾウムシが若干出た程度。
ただし大型のカミキリがまだ入っている感じなので来年に期待です。

ヒメシャラ立ち枯れ

探索中によく目についたのがヒメシャラ。幹が明るい茶色なので遠くからでも目立ちます。
ヒメシャラといえば「シャシャンボナガタマムシ」。これまで何度かヒメシャラやナツツバキの倒木を見つけて、シーズン中に楽しみに再訪して空振りだったことがあり、見つけたいという思いが募っていました。思いが募るあまり、去年は初めて掬ったサワシバからダイミョウナガタマが多く得られ、なんとなく赤味が強いのを「これはシャシャンボでは!?」とtwitterにアップしてタマムシ識者諸兄から「うーん、」という反応を頂きました。
しかしこの物件はナガタマの食痕っぽいのが縦横に走っており、もしかしたら!?と期待を抱かせるものでした。
ちなみにシャシャンボとはブルーベリーに似た植物で実も食べられるそうで。一度そちらも見てみたいですね。小種名shashamboeもそこからですが、ヒメシャラやナツツバキでも見つかり、そちらから見つかるの方が機会が多いようです。近年では植栽のナツツバキからも記録されているそうで、機会があれば富士北麓にいくつかあるブルーベリー農園でも探してみたいですね。シャシャンボ、シャシャンボ、ヘイヘヘイヘヘイ!

前哨戦 2024-06-30 同地

この週末はどこも天気が悪く。土曜は局地的に晴れてた長野某所でアカムネハナを何年振りかで撮影したり。日曜には表富士のヒメシャラ立ち枯れを見に行きましたが霧雨でどうしようもなく。まだ穴もあいてなさそう。

富士山麓

ヒメシャラ立ち枯れ


転戦

間を置かず裏富士に転線。こちらは午前だけ晴れ間がありました。前回見つけたツクバネウツギを掬ってみるも、アサヒナルリは入らず。バイカウツギのツヤナガもまだのようです。そのうちこちらも霧雨に。草本のタマムシにターゲットチェンジ。道脇のナワシロイチゴを見て回ります。目当ては自己初のホソナカボソタマムシ。甲信と九州の限られた場所で記録があり、タイプ産地はここからほど近い三つ峠山。しかし見つかりません。ヒラタチビタマムシは掬いで見つけた後に目視でも発見。

ヒラタチビタマムシ


午後は結構な本降り。こうなるとピドニアしか狙えません。ゴトウヅルの花などを掬うと普通種はゴマンと入ります。フジヒメハナがいれば、と思いましたが親戚のオヤマのみ。図巻によると時期が遅いとフジからオヤマに入れ替わるとのこと。この日はこれで終了

決戦 2024-07-21 同地

時期的にも天気も文句なし。今日こそはシャシャンボ祭りじゃー!と勇んでヒメシャラ立ち枯れへ。

シャシャンボナガタマムシ


ん?なんか小さいのいる。いきなりいました!

確保して撮影。前足の脛節先端に突起が見えます。間違いなくシャシャンボのオスです!

隣のヒメシャラの葉を掬えば、さぞ沢山入るかと思いきや、全く入りません。たまに立ち枯れを見に帰ると、ひょっこり別の個体がいます。およそ30分に一度、見つかる感じで合計3exs確保しました。すべてオス。幹の上で翅を広げる動作がよく見られ、おそらく羽化してきたばかりの個体のようです。産卵に飛来する個体は見当たらず。
図鑑ではもう少し赤味の強い写真が載っており、そちらを見たいところですが3exsともに茶色い感じ。地域変異なのかなーとXで呟いたら、羽化直後は茶色いということを材採集で記録された方から教えてもらいました。うーむ、時期的にも少し早い感じなので、メスも狙うためにもう一度来なければ。


転んだ

そんなこんなで立ち枯れと生木を往復していたところ、右に傾斜した斜面ですべって転んでしまいました。長竿とカメラを持っていたため、体をかばうよりそっちをかばってしまい、運悪くコブ状の木の根にわき腹を強打してしまいました。
1日は普通に生活していましたが、体を曲げた時に「コキッ」という感じがするようになり、次第に上半身を曲げたり捻ったりした時の痛みが強くなり、咳も痛くなってきました。二日後にレントゲン撮ってもらったら、やはり肋骨が折れてました。あまり腕白ではなかった少年だったので、実は人生初の骨折です。まあそうは言っても放置するしか治療法はない。診察で、変な運動したら治りが遅いとかありますか?と聞いたら「変な運動てなに(笑」と。痛くなければ特に支障はないとのこと。

ツヤナガタマムシ

で、話は戻りますがシャシャンンボを撮影した後はまた裏富士へ。バイカウツギでこちらの発生を確認しリリース。ツクバネウツギとナワシロイチゴは今回も成果なし。

クリイロシラホシカミキリ

サトウナガ狙いのミズナラ掬いで。サトウはまだでした。

続く

後に「2024怒涛の富士タマムシ連戦」として回顧される一連の遠征はこうして幕を開けたのでした。