おいしいさくらんぼをつくるひと 東根市 奥山博さん

これは紅秀峰という名のさくらんぼ。果実が硬くて糖度の高いさくらんぼになります。
佐藤錦よりも遅い品種で、山形県の主力ではないけれど、今一番注目されています。
写真提供・市川泰仙
宝石のようなきらきらとしたかわいらしい姿…、
さくらんぼは私たちにとって特別なくだもの。
おいしいさくらんぼを食べると、本当にしあわせな気持ちになります。
さて、さくらんぼ産地と言えば山形県。
山形県は日本全体で7割程度の生産量を、
そのなかでも東根市では全国の約2割の生産量を誇っています。
駅名に「さくらんぼ東根」とわざわざ「さくらんぼ」を冠する東根市。
さくらんぼに対する意気込みを感じますね。

5月下旬の東根は雨よけハウスのビニル張りで大忙し。
さくらんぼは裂果しやすいので、雨に濡らすのはご法度。雨よけは必須の作物です。
自分ちで張れない人は1m1000円で張ってもらうのだとか。経費がかかりますねえ。
病気に弱く、またショウジョウバエが果実に入ると商品にならないさくらんぼは
山形県の防除暦では、28回程度(収穫後農薬含)の農薬の使用が推奨されています。
ショウジョウバエ対策で収穫前日まで農薬が散布できるので、
一般のさくらんぼを洗わずに食べるのはよした方がよさそうですね。
防除暦どおりに農薬散布をしていればそれほど苦労もないのですが、
低農薬栽培をするには大変な技術がいる果樹栽培。
とくにさくらんぼは流通途中に病気が発生することもあるため、
低農薬のリスクは相当高いのです。

お日様をいっぱいに浴びるよう、上についている葉っぱは取らずに、
下側の葉を摘みます。食味を維持し色づきをよくするための工夫です。
中には色づきだけ考えて葉っぱをどんどん摘んじゃう人もいるとか…味は言わずもがなって気がします。
さて、東根市でさくらんぼを栽培している奥山博さんは、
慣行栽培の約1/3という農薬散布でさくらんぼを栽培しています。
たんに回数が少ないだけではありません。
選択している農薬は、有機リン系など環境負荷も毒性も強いものなどは避け、
安全性に配慮したものになっています。
ひとことで言うと「そんな農薬でできるなんてスゴイ!!」という内容。
相当の技術と自信がないとできないことです。

息子の奥山博文さん。さくらんぼと桃を栽培している奥山さん家では、お父さんがさくらんぼ、
桃は博文さんと役割分担をしています。桃栽培はお父さんの友人に教わっているという博文さん。
「桃は剪定も管理も全部僕がやってます。お父さんにも触らせないんですよ!」
奥山さんの栽培の特徴は、「栄養周期」という農業技術と、独自に編み出した剪定方法。
当初はどちらの技術も近所の農家に「何してるんだ」と笑われたと言います。
「サラリーマンを10年ほど経験してからさくらんぼ農家を継いだので、
農業に対する先入観が全くなくて、自分がいいと思うことはすぐに試せた。
それが良かったんでしょうね。いまでは誰も笑わなくなって、教えてくれって言われます(笑)」

「人生の節目節目にまるで導かれたように出会いがあった」という奥山博さん。
謙虚な人柄も魅力的な方です。
奥山さんの剪定方法は、通常は切ってしまう徒長枝に実をつけるというもの。
よそのさくらんぼ畑で木を見てみると、姿形が明らかに違うことがわかります。
「この剪定方法だと一粒が大玉になり、着果しないものは勝手に花ぶるいしてくれます。
さくらんぼの作業で一番大変なのが摘果。
人を頼むと経費もかかるし、作業の負荷も大変なもの。
でも、木が勝手に花ぶるいしてくれるから省力化が図れるんですよ」

この小さな実が勝手に生理落果してくれるので、省力化が図れるのです。
この時点で大きな実は、全部赤くておいしいさくらんぼになります。
栄養周期については少し難しいので、具体的な技術を説明するのは控えますが、
この技術が食味を向上させているのは間違いありません。
一般のさくらんぼと比較して、プリッとした食感、そして20度にもなる糖度の高さ。
それは奥山さんの技術と手間のたまもの。
ぎりぎりまで木において完熟直前で収穫して直送するからさらにおいしく、
一度食べるとほかのさくらんぼは食べられなくなります。

さくらんぼの受粉はミツバチではなくマメコバチというハチにお願いします。
春先に忙しく働いて蜜を集め、カヤの茎の中に子孫を残して死んでしまうマメコバチ。
動きが早いので写真を撮るのが難しいハチでもあります。
カヤの茎に泥がつまっているのが見えますか? ここに来年出てくるマメコバチが眠っています。
今年は霜の影響も少なく平年並みの収量がありそうという奥山さん。
5月下旬は葉摘みをしていましたが、もうすぐ摘果に入ります。
そして6月20日過ぎには収穫作業が始まり、朝は4時起き。
目が回るようなさくらんぼシーズンのスタートです。
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