農家だって評価されたい
有機JAS認証取得畑のとうもろこし。有機なので一般的な農薬は使えません。
でもアワノメイガという害虫が入ると、人は嫌がります。さて何をするか。
アワノメイガが雄花に卵をうみつけるという性質を利用し、受粉させたら雄花を切り取ります。
農薬をまけば一網打尽なんだけど、雄花切りという人手と手間のかかる作業で乗り切ります。
以前勤務していた大地を守る会では、野菜や果物の価格は
農家との作付時に、固定価格で契約をしていました。
農家から値上げの希望が来たり、担当から値下げをお願いすることもありましたが、
基本的には双方の合意があって価格が決まっています。
固定価格のメリットは、農家の収入が市況によって左右されないこと、
安定した収入を得られること、販売側はいつも同じ価格で販売できること。
農薬や除草剤、土壌消毒剤を使用する一般的な農業よりもリスクが高く、
手間はかかり、収入が減ることもある有機農業ですから、
まずは翌年も安心して作物が栽培できるよう、価格の変動を無くしたのでした。
緑の淡いところは草。濃くなってるところが玉ねぎ。
有機の畑では除草剤を使用しませんので、草取りは人力。お金も手間もかかります。
慣行栽培では除草剤の使用は当たり前。この部分だけ取ってみても、経費の差は歴然としています。
大地を守る会の設立は35年前ですから、画期的なしくみだったと思います。
当時は低農薬や無農薬栽培、有機農業などに取り組むと、
地域からは村八分のような状況になり、農協への出荷も止められ、
人によっては農協と大ゲンカしてしまう…そんなことが多かったと聞きます。
有機農業推進法が施行され、国が有機農業を推進すると決まった現在から考えると、
開拓者の苦労はいかばかりだっただろうと思ったりもします。
ただ今でも一部の地域では、有機をやってるというだけで、
コミュニティに入れてもらえないところもあるようですけど…。
当たり前のように有機農業に取り組む人が評価され、そういう農家が増えていく…
そんな日がいつか来るのかなと思ったりもします。
有機農業に取り組んでいる北海道の今利一さん。
当時JAの職員に面と向かって「有機なんてされては迷惑」と言われたこともあるそうです。
でも今や地域で生き残っている農家は今さん以外には数軒。
有機農業を評価し理解している流通との取引が、安定した農業を可能にしています。
今さんの記事は過去ログから↓
http://hontabe.blog6.fc2.com/blog-entry-04.html
さて、現在の有機JAS認証取得作物の割合をご存じですか?
2009年の数字を見つけました。なんと農産物全体の0.19%(それでも微増)。
有機農業推進法が施行された2006年には確か0.17%でしたから、
有機JAS認証の数字が劇的に伸びているわけではありません。
その理由は何でしょう。
まず、認証の書類をそろえたり、履歴を取るのに手間がかかること、
さらに、認証を取得するための経費がかかること、使用できる農薬や資材が限られること、
病気や虫が大発生した場合、減収というリスクを負わなければならないこと。
有機JAS取得には大変で面倒なことがいっぱいです。
そしてそして。
有機農産物を作っても、現状では価格面での評価がはほとんどされていません。
普通に作るよりも手間も暇もお金もかかるのに同じ価格では、
無理に取得しなくていいと思ってしまってもしょうがありませんよね。
コナガの天敵を養成するため、あぜにわざわざ植えたクローバー。
天敵を利用するIPM・バンカープランツの利用など、知識も持ち合わせないと難しい有機農業。
もちろん土壌分析などの科学的アプローチも必要です。
こういった努力を評価するしくみがなければ、継続しないんじゃないかなあと思ったりします。
また、個人的には日本人の国民性も多少影響があると考えています。
山積みにされた野菜を見ると、全部触ってみないと気が済まない、
少しでもきれいなもの、気に入ったものを選びたいという性質。
「多少虫が食ってても有機だからいいや」というような寛容さは、我々にはあまりありません。
日本の有機農家がドイツに旅行した際に、市場で虫食いの野菜を売ってるのを見て
「こんな野菜を売ってるのか」とお店の人に聞いたところ
「有機なんだからこれぐらい当たり前」と言われ驚いたという話を聞いたことがありますが、
現在の日本では、ちょっと考えづらい状況です。
有機農業がなかなか広がらない理由は、価格面だけではなく、
消費者の受け入れ態勢が整っていないということも大きいのではないでしょうか。
先日、大地を守る会に出荷を始めた果樹農家と話す機会がありました。
彼は何年か前までは地元のJAに出荷していました。
「安心して食べられるものを作りたい」と農薬を一般の半分程度に減らし、
安全性には自信を持っていたのに、JAでは全く評価されませんでした。
かえって安く取引されて、悲しい思いをしていたそうです。
農薬を減らして栽培しても評価されない…これではモチベーションは上がりません。
そんな時に大地を守る会との取引が始まり、価格面での評価はもちろん、
消費者から「おいしい」という手紙が来ることに、ものすごく感動したと言っていました。
「僕の作ったものがおいしくてもおいしくなくても、ダイレクトに評価が戻ってくるのが楽しいんですよ!
自分の作物がお客様にどう思われているのか…市場出しでは全くわからないんですから」
山梨市の丹澤修さん。9月4日(土)に丹澤さんの畑に行きます。実際に話を聞いてみませんか?
詳しくは下記を。
やればやるほど評価してくれて、自分の作ったものをおいしいと言われる喜び。
サラリーマンで言うとボーナスの査定が上がるって感じでしょうか。
そして、同僚や上司から「GOOD JOB!」とか声をかけられるってな感じ?
直接顔が見えない現在の流通では、このようなしくみは作ることができません。
消費者と流通、国、そして農家…それぞれのステージで何かが少しずつ変われば、
大きな変化が起こるんじゃないかと思うんですけど。
…無理かな?
丹澤修さんの巨峰畑で収穫体験は、9月4日(土) 10:30頃~12:30頃まで。
詳しくは【ほんものの食べものくらぶ】WEBサイトから
http://www.hontabe.com/img/tour/tour_kyohou.pdf
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