科学的な農業を学ぶ会―西出会総会に参加してきた
土壌三相を測るために土をちょいちょいと採取中の西出隆一さん。
ちっこい鞄にECメーターや三相の土を採るための缶カラなど三種の神器が入っています。
どこでもかしこでも、ちょいちょいと測れる。できそうでできない、これぞ農民の鑑。
今回の幹事、木内順さんと喜代美さん夫妻。2006年の土づくり会議後、即西出会に入会。
3年後には人参がびっくりするほど採れ、その後は夏の葉物も順調。3年で実績が上がる
という西出さんの指導を現実のものにしています。幹事お疲れ様でした。
算数の苦手なわたくしの頭に、「土壌分析診断」という言葉が
入力されたのは、2000年のことでした。
2000年あたりから「らでぃっしゅぼーや」の取引産地で始まった、
小祝政明さん(ジャパンバイオファーム)の「小祝塾」に参加したのがきっかけです。
当時らでぃっしゅは大地を守る会から野菜を仕入れていましたので、
共通の産地を抱えていたこともあり、大地を守る会の産地担当も、
小祝塾に参加すべし!ということで参加したのでした。
まあ当然ですが、小祝さんのおっしゃることはちんぷんかんぷんでしたよ。
広報という仕事から農家周りに異動したばかりで、頭はチョー文系、
農業って科学的なもんだと思ってなかったしで、
何を計算しているのか、何がどうなのか、さっぱり不明でした。
フライパンで採ってきた土を乾かす西出隆一さん。「三相が一番大事。
土づくりでは物理性が一番大事だから、測ってみないと」。隣にいた農家に聞いてみた。
「測ってる?」「うんにゃ」…なんつーか、簡単だけど測れないものなんすね。
トラック2台で積んできたモミガラ。「まだまだ足りない」と西出さん。
モミガラは生の資材で、分解する際にエネルギーを出すのでそれを有効に使えることから、
西出会会員は堆肥を使わず、カルスNCRとモミガラを利用する人が多いです。
モミガラには炭素分の供給と、エサがなくなった際の微生物が休眠できる場所になります。
らでぃっしゅぼーやでは、土壌バランスを整えることで
病害虫を減らせるはずだと主張しており、今では「そうだよね」と思うけど、
当時は「なんて傲慢なことを言うんだろう」と思っておりました。
ナナメから人の話を聞いていると、理解できるものも理解できませんよ。
今では当時の自分の振る舞いを反省しておりますわたくしです。
その後らでぃっしゅは大地からの仕入れをしなくなり、
代表の高見さんがキューサイにらでぃっしゅを売ったことから、
お付き合いは全く無くなり、土壌分析の重要性は理解すれど
とりあえず「土壌分析で何がわかるの?ふふん」という状態が何年か続いたです。
で、再び土壌分析という言葉に触れたのが、現在のわたくしの師匠、
西出隆一さんを講師に招き2006年3月に大地を守る会で開催した
生産者技術研修会「土づくり会議」でした。
「あんたの土は胃袋が小さいのに、こんなにたくさんチッソ入れたら無駄になる。
まずCECと腐植を上げてほしい。胃袋が大きいと肥料もたくさん貯めこめるから」
2006年の研修会の風景。胃袋=CECのこと。大変わかりやすい説明でございます。
それまで漠然と「病害虫の原因はチッソ肥料」と思ってはいたけど、
その科学的な理由はわからないのだと思っていたわたくし。
しかし、西出さんはその答えを持っていました。
「全ての病気・障害・虫害には原因がある。
原因をつぶせばそれはなくなる」
この一言は大きな衝撃でした。
なぜなら、理由があるなら対策が可能だからです。
では何を改善すればいいのか。どう対策を打てばいいのか。
西出さんは、その答えも持っていました。
穴のあいたバケツに水をくみいれてはこぼし続けていた有機農業の
穴をふさいできちんと水が溜まる技術が見つかったのです。
さらにそれには再現性がありました。
誰が取り組んでも一定程度の効果が得られる技術。
農業にそんなものはないと良く言われますが、そうではないのです。
今回の総会会場で見たカリフラワーの黒腐病は…。
「空気中にいる菌だから土では対応できないけど、健康に育ってれば感染しないもの。
生育が悪いとかかるよ」と西出さん。その某大な知識には感服するばかりでございます。
わたくしの驚きと喜びがいかばかりだったか。
全く理解できなかった土壌分析を、再度勉強しようと決意を固めたです。
その後西出さんは大地の研修の講師を何度が担当してくださり、
その都度参加して講演を聞き、作物を一緒に見ることを繰り返すうち、
とりあえず、西出さんが話していることが理解できるようになりました。
そして、現在に至るのでございます。
さて、そのような衝撃を受けた農家はたくさんおり、
西出さんの指導を受けたい人々が「西出会」という会を作っております。
この会は、年に一度総会を開き、さらなる技術の向上と、
会員の懇親を深めております。
今年は一昨日千葉県成田市で開催され、もちろん参加してきました。
初日は山梨に行っていたため講演は全く聞けず、宴会から参加。
帰って来て今思うのは「酒飲みに行ったんか自分」という
なんつーか、何しに行ったんだ感がそこはかとなく漂っておりますが、
参加者の方々と親睦を深め、年に一度会えるヨロコビを噛みしめましたです。
自家製ボカシを作るための微生物資材「ミクロエース」(加藤工業所製造)。
なぜかこの資材に食いつく参加者の人々。初めて見た人が多かったのかな。
西出会の会員は、ほとんどの人が西出さんに教わったボカシを手作りしています。
これが食味向上と病害虫予防の大きな要因なのですね~。
今回驚いたのは、会員が非常に若返っていたことでした。
2008年頃は20代の農家の参加者など2~3名いればいい方。
しかし今回はほぼ半分が若手のぴちぴちの農家だったです。
西出さんの技術は若くてやる気のある人に受け入れられやすい、
頭の柔らかい若者にこそ理解しやすい、そんな技術。
3年間徹底的に土を見直し土づくりをすれば、一定程度の収量が得られる。
その技術は、新たに有機農業にチャレンジしようという農家や、
新規就農者にこそ向いている技術でもあります。
実はわたくしの野望は
「全国の耕作放棄地が、新規就農者に耕され、
どんどん農産物が生み出されることで、食糧自給率が上がり、
皆が高品質多収になれば一つあたりの野菜の価格も下げられることから、
安心して食べられるおいしい野菜が安価で供給できる世界」。
大地を守る会時代の元同僚も新規就農して西出会会員になっております。
この播種器を見せてもらって喜んでおりました。先輩農家の資材や器具の話も聞ける
西出会総会は、情報交換の場にもなっているのでした。
反当たりの収量が上がれば、野菜の価格が下げられるってところは
どの農家も「やだ」と言いますが、これは西出さんの主張でもあります。
上記のような青臭い理想は、現実を知れば知るほどかなわぬ夢なのかもと、
最近とみに実感し、ぐらぐら揺れているわたくしですが、
とりあえず、情報は発信し続けて行こうと決意を新たにしたのでございます。
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