今さらだけど、硝酸態チッソの話
硝酸態チッソの残留に注意しなくてはならないのは基本的には、
生育期間が短い菜っ葉です。大根や白菜を気にする必要はありません。
また春から秋にかけての葉ものに残留値が高いことがわかっています。
冬、地べたにへばりつくように育つ菜っ葉の残留値を気にする必要はありません。
「有機農業の方がキケンだ!」と言われる硝酸態チッソ。
地下水を汚染し、牛は死に、赤ちゃんはブルーベビーになるという
恐怖の物質、硝酸態チッソ。
ひょっとしたら農薬よりもコワイと皆が言う、硝酸態チッソ。
で、硝酸態チッソって何?と尋ねられて明確に答えられる人、
何がどう悪いのかきちんとわかっている人が何人いるか。
わたくし思うに、10人のうち、1人いればいい方かなと思います。
ざっくり言うと、硝酸態チッソとは、チッソ分が植物に吸収される際の物質。
前段階はアンモニア態チッソ。と、ここまで書いて、夫ちゃんに
「全然わからん」と言われました。そうか…もっとわかりやすく書けと。
うーん。あとひとつだけ、理屈を書きたい。
河原の草だけを積んだ上里の須賀さんの堆肥。こんな感じの粗大有機物のみの堆肥なら
「有機農業の方が危ない」とか言われることはありません。チッソ分の高い鶏糞堆肥を
何トンも畑に入れてると硝酸態チッソの残留値が高くなり地下水の汚染にもつながります。
っていうか、堆肥の成分分析しなくちゃダメでしょう。1万円位でできるんだから。
土壌中ではアンモニア態チッソが硝酸化性菌という微生物に分解され、
硝酸態チッソという物質に変化します。
非常に水に溶けやすい物質なので、雨などで地下に流れます。
それで、地下水を汚染していると言われるのですね。
では、チッソについての基礎知識です。
その①植物は硝酸態チッソという物質でチッソ分を吸収する。
その②土壌中にチッソ分があると、植物はどんどん吸ってしまう。
その③吸収後、植物は光合成でチッソをたんぱく質に変える。
その際、C(炭素)、O(酸素)、H(水)が必要。
で、植物体内に硝酸態チッソが残る理由は
①お日様が出てなくて光合成がじゅうぶんにできなかった。
②炭素(C)が足りなくて、余分なチッソ分が体内に残った。
③そもそも大量に入っていたので何をしても消化できない。
つまり、硝酸態チッソの残留や地下水汚染の条件は、
土づくりのできてない畑にチッソ肥料が大量にあるってことですね。
お茶のうまみってアミノ酸。なので、チッソが大量にないとうまいお茶ができません。
ってので、10aあたり100kgもチッソを入れてた時代がありました。地下水汚染が問題になり、
現在は60kg位に減ってます。普通の菜っ葉は15kg入ってれば普通に生育できますから、
お茶栽培にどんだけチッソ肥料が使われてるかってことですね。
ではどうするか。
チッソ肥料は収量増のもと。ですから、農家としては、
ちょっと余分に入れたくなる肥料でもあります。
土壌分析をして入れられる分のチッソを入れればいいのですが、
それがなかなかできません。
現状では土壌分析をしない農家がほとんどなので、
それぞれが経験とカン、そしてJAの指導通りに肥料を入れてます。
硝酸態チッソの残留や地下水の汚染がなかなか減らない理由です。
とか言っても、現在日本の法律では硝酸態チッソの残留値は
定められていませんのですね。
したがって、消費者も「あまり気にしてない」って感じです。
煽られると不安になるけど、ふだんは気にしない。
最近全く話題にならないのは、放射能の方がコワイから。
しかしチッソの流亡は続いているし、地下水の汚染も続きますから、
よくないことはよくないのです。
ほんたべ農園の菜っ葉類。緑色が薄いのでそれほどチッソは多くないと思いますが、
あったかかったので徒長しています。2000ppm位の残留値でしょうか。
でもま、ゆで汁はうすい緑だったしおいしかったしで、大したことない感じです。
ほんたべ的には、硝酸態チッソの残留が多い菜っ葉はおいしくない
そういった切り口で硝酸態チッソについては一家言あります。
チッソ残留と糖度には相関関係があるため、残留値の高いものは
苦い・味がしない・甘くないという三重苦のものが多く
全く食べる気がしませんです。
しかし面白いのは、残留値が低けりゃいいかというと
決してそうではないってこと。
以前チッソの残留値を調査してた結果を見たら、100ppmという
べらぼうに低い数値のほうれん草がありました。
食べたら全く味がしないのです。
チッソは毒にもなるけど、光合成のもと=うまみのもとでもあるため、
全くなくてもダメだということがわかったのでした。
害虫が栄養過多と栄養不足の葉にやってくるのは
これと同じ理由。つまり健康に育ってないものに寄ってくるのですね。
成分もわからず鶏糞堆肥を大量に投入し、土壌分析もしないで施肥設計していれば
「有機農業の方がキケン」と言われても返す言葉がありませんのです。
その言葉はどうかと思うし、なぜそんなことを言うんだとも思うけど、ある意味正しくもある。
自分のやっていることを数値で見せる努力も必要かなあとよく思うわたくしです。
野菜に虫が大量にいたり、べったりと横に寝る樹形をしてたりしたら
チッソが多い証拠ですから、施肥設計を考え直す必要があるのです。
さて、11月に入り朝晩冷え込んで来ました。
これからは葉ものの季節です。
どう作ってもこれからはチッソの残留は少なくなります。
寒いので急激に生育できない=大量のチッソを吸えない&
野菜が自分の体を守るために体内の糖度を上げるからです。
ってことは、甘い、おいしい菜っ葉が食べられるってことですよ。
菜っ葉の旬は秋から春まで。自然が準備してくれたおいしい季節に
たくさんの菜っ葉を食べて、健康になりましょう。
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