散歩の途中で、宮殿発見
右は、すでに人住まぬ廃屋となった家の壁に描かれたヨーロッパ風宮殿。青い空と白い雲を背景にどっしりとしたその様子が、廃屋の窓と重なってなんともせつない。風雨に曝されて今はもうかなり色が褪せているけれど、とても丁寧に描いてある。しかし、この宮殿も家屋の取り壊しがあれば、その命脈はつきる運命にある。場所は、北区西ヶ原2丁目。
左は、もう夕闇が迫る頃に通りがかった古いふるいアパート。でも、3階建ての重々しいつくりは、まわりの最近できた豪華な新築マンションなんかよりずっと魅力的。玄関のアーチの向こうにぽつりと灯った電燈の明りも心なごませる。場所は、豊島区駒込5丁目。
人が住んでいるような、もう誰も住んでいないような廃墟寸前の建物には、かって賑やかだったろう頃の記憶が刻み込まれていて、見る者に懐かしさを感じさせないではおかない。現代の東京は都市の記憶をどんどん捨ててしまっているのが僕にはなんとも悲しい。