ヘキサンに溶かしたTAG(トリアシルグリセロール)は、遮光して室温で放置しているとどんどん分解されてDAGになるのでしょうか?保存するとしたら-20度がいいのでしょうか?
化学 | 農学、バイオテクノロジー・50閲覧
化学 | 農学、バイオテクノロジー・50閲覧
この回答はいかがでしたか? リアクションしてみよう
ヘキサンに溶かしたトリアシルグリセロール(TAG)の保存において、懸念すべき主要な分解経路は、ジグリセロール(DAG)への加水分解ではなく、不飽和アシル鎖の酸化です。 脂質分解の主敵は「酸化」であり対策が重要。 TAGがDAGに分解する反応は加水分解であり水や酵素あるいはアルカリ性物質の存在下で進行します。 ヘキサンのような非プロトン性有機溶媒中では、水分の影響が極めて小さいため、アシル基の加水分解はほとんど進まず、室温で放置してもDAGがどんどん生成することはありません。 より深刻な問題となるのは、空気中の酸素が不飽和結合(二重結合)を持つアシル鎖を攻撃する自動酸化です。この酸化反応は、温度が高い、光が当たるほど酸素濃度が高いほど加速されます。この結果、過酸化物やアルデヒドなどが生成し試料の品質を著しく劣化させます。 TAG試料の完全性を保つためには、この酸化反応を徹底的に抑制することが必要です。実務的な保存戦略は、以下の要素を組み合わせた遮光・酸素除去・低温の多層防御となります。 ・低温保存による反応速度の抑制。 脂肪酸の酸化は温度に依存するため、反応速度を劇的に遅らせる低温保存が基本です。 標準的な保存:ほとんどの試料で−20∘Cでの保存が有効です。 高不飽和度試料:DHAやEPAなどの多価不飽和脂肪酸を多く含むTAGは、非常に酸化されやすいため、より厳格な管理として−80∘Cでの超低温保存を検討してください。 ・酸素の除去と遮光。 試料を保存容器に入れる際は、デッドスペースの空気を窒素ガス置換することで酸素を排除し密栓を徹底し、酸化反応の開始に触媒的な役割を果たす光(特に紫外線)を遮断するため、遮光瓶を用いるか、アルミホイルなどで包んで保管することが必須です。 ・実用的な管理と安定性の考慮。 小分け(アリコート)にすることで、頻繁な取り出しによる温度変化や空気への暴露を最小限に抑えられます。 試料の脂肪酸組成によって安定性は大きく異なります。 飽和脂肪酸が主体のTAGは比較的安定ですが、不飽和度の高いものは酸化防止剤(トコフェロールなど)の添加を考慮する価値があります。 ・短期保存と溶媒の管理。 もし短期(数日程度)の保存、遮光と密栓が守られていれば、飽和度の高い試料は室温でも大きな問題を生じにくい。ただしヘキサンは揮発性・引火性が高い溶媒であるため密栓と、防爆管理は、保存期間に関わらず必ず徹底してください。
化学
ログインボーナス0枚獲得!
1文字以上入力してください
※一度に投稿できるURLは5つまでです
※氏名やメールアドレスなどの個人情報は入力しないでください