回答(4件)

(自由間接話法でやってみます) ワナビ少年の日常 深夜の公園でのこと。 ジアリは、先ほどから頻りに同じ動きを繰り返している。 軽妙なステップをさささっと刻み、ぱっと右腕をおし開き、とびっきりな決め顔のまま、斜め後方へと流れてく。 すぐさま、その動きを逆側でもやってのける。一連の動きが左右対称ぴったりになっているのを心がけて。 実はこの動作、とある男性アイドルグループの真似だった。しかも、完コピといってもいいくらい寸分の違いもなかった。 少なくとも、ジアリはそのつもりでいる。 中央に躍り出たところで回転を見せ、腕を振って、フィニッシュ。 「……決まった」 静止したまま呟くと、ジアリは視線を上へやった。 外灯にしょぼくれた光がともっており、多くの羽虫が飛び交っているのがわかる。それを見るにつけ、自然と笑みがこぼれてしまう。 「観客が虫なら、な」 あれが人間だったら、と思うと身震いしそうだ。 かれこれ小一時間はダンスをみっちりやった。これ以上やると、明日に響きかねない。 帰るとしよう。 そうすべく歩みかけたとき、ジアリは向こう側に人の姿を認めた。 三人の男性が談笑している。公園を通り過ぎるようだ。 互いの表情がわかる距離まで来てしまった。彼らはジアリより年長なようだ。とはいえ、初顔で、悪ぶった格好をしているので、詳しいことはわからない。 「……」 立ち去ることが出来ず、ジアリは無言で立ち尽くす。 鼓動は天井知らずに跳ねあがり、汗の吹き出しが収まらない。それでも息遣いだけは荒くならないよう、必死な思いで整える。 ジアリに対して、彼らは明らかに不審な目を向けている。こんな時間に、こんな所でぽつんとしていたのだから、そうするのは当然か。 ただ、何をしてくるでもなく、彼らはすたすたと、通り過ぎていく。 結局、恐れていたことが起きることはなかった。 向こうから、彼らの声が流れてくる。あいつってオタク? とか、筋トレしてたんじゃね? などと言い合っているようだ。 「ふぅ~」 大きく息を吐いて、ジアリは身体をほぐした。 「良かったぁ~、見られなくてぇ~」 さっきまでやっていたパフォーマンスを、だ。それが、茶化されるのはもちろんのこと、単に見られるだけでも死ぬほど怖いのだ。 ここでジアリがレッスンしていたのは、まさしく人目を避けてのこと。こんなに遅い時間なら、滅多に人が足を踏み入れて来なかったから。 稀に気配を察知すれば、今みたいにやり過ごしてきた。 でも。 「こんなことじゃ、いつまでたってもっ……くそっ」 明言せず、ジアリは強く首を振る。 そして、表情を消して家路につくのだった。 ジアリの夢。それは、アイドルとしてデビューすること。否、それのみならず、颯爽とトップへと駆け上がること。 心の奥底から、それを渇望してはいる。 でも……、ジアリは自問する。 そんな日が、果たして本当に来るのだろうか。

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執筆ありがとうございます これは好きなダンスを通じて自分をアピールし、世間に認めてもらいたいけど、人目が気になり、他人に見られることの恐怖から夜中の公園でしか練習できない。孤独と不安、そして夢はあるけど勇気が出ない、前に進めない、 という葛藤をリアルに描いていると思いました。 まさに引きこもりのジアリさんにぴったりです。 とは言え、ダンスに打ち込む姿は美しく、決して嫌味や皮肉ではないところがジアリさんへのエールにもなってると思いました。

1893年、パリの裏通り。 石畳の隙間には雨水がたまり、浮浪者の靴底を濡らしていた。ジアリはまだ二十歳そこそこ、古びた靴磨き台を前に、朝から通行人の足元を見つめていた。客は少なく、靴を差し出す紳士の視線は冷たい。空腹を紛らわすために、水で薄めたスープをすすりながら、彼はいつか抜け出したいと願っていた。 転機は、偶然に訪れた。 ある日、常連の画家が靴を磨きながらこう言った。 「お前さんの手は器用だな。画材を入れる革のケースが壊れてしまってね。こいつを直せないか?」 ジアリの手にかかれば朝飯前。修理に一晩もかかったうえ、革のケースは再起不能にバラバラになってしまった。最初の仕事はひどい出来だったが、ジアリは革細工のコツを掴んでいた。 試行錯誤するうちに構造を理解し、これなら自分にも作れると思った。 次があればもっとうまくやれる。その確信に背を押され、ジアリは夜な夜な工房に通った。捨てられた革を拾い、財布やベルトをこしらえては、翌朝の市場で売りさばいた。やがて評判は広がり、1895年には自分の小さな店を構えるまでになった。 生活は一変した。 安アパルトマンから中庭付きの部屋へ。カフェではコーヒーとクロワッサンを注文でき、モンマルトルのキャバレーに足を運ぶ余裕もあった。なにより誇らしかったのは、客が「ジアリの仕立て」と口にして財布を買い求めることだった。彼は貧困を脱し、夢に描いた「成功者」の姿を手に入れたのだ。 しかし、1898年。 欲が過ぎた。大量注文を狙って安物の革を仕入れたのだ。華やかな見栄えだけを重視し、品質を落とした品を売った。最初のうちは好調に見えたが、すぐに「ほつれる」「壊れる」と苦情が殺到する。信用は失墜し、店は閑古鳥が鳴いた。さらにドレフュス事件をめぐる社会不安で経済は冷え込み、彼の事業は一気に傾いた。 1899年の冬、店を畳んだジアリは、再び靴磨き台の前に座っていた。凍える風に肩をすくめながら、通行人の革靴を磨く日々が戻ってきたのだ。かつての華やぎは、遠い夢のように消え去った。 けれども彼は、不思議と微笑んでいた。 「一度は夢を見られただけでも、幸福だったのかもしれない」 革の匂い、客の笑顔、暖かいカフェの灯り。失ったものは多いが、記憶は胸に残っている。 そして彼は、また一歩ずつ靴を磨く。 最初と同じ場所で、最初と同じ仕事を。だがもう、貧困は単なる苦しみではなく、夢を一周した者だけが知る、懐かしい帰り道に思えた。 夜のパリは、いつもと変わらず息をしていた。石畳に落ちるガス灯の光が、モンマルトルの古い屋根をぼんやりと撫でる。そこでジアリは、夜通し戻ってきた洗濯物を畳みながら、静かに笑ったり、時に目を伏せたりした。彼の指先はかさつき、手の甲には何百本もの小さな傷があった。だがその手で生きていくことを、彼は学んでいた。

執筆ありがとうございます。 パリを舞台に視覚・感覚に訴える具体的な描写が魅力的ですね。ドレフュス事件の時代背景を取り入れ深みも増しています。 短い話の中にも人生の成功と失敗を描いて、飽きさせない展開がいいと思います。成功も失敗も含めて人生には無駄はない、貧困や挫折も、経験した者には新たな意味を持つ教訓があります。 悲劇で終わらず、人生を肯定する余韻が美しく、ラストの「彼の指先はかさつき、手の甲には何百本もの小さな傷があった。だがその手で生きていくことを、彼は学んでいた」は、人生を総括する表現は秀逸です。 完成度が高い、文学的な短編で、靴磨きは決して底辺ではないという、低学歴、低収入のジアリさんの胸にも熱く響いたはずです。

お友達ができて、良かったですね。 「同類 相 憐れむ」の実例で、判りやすかったです。 https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12320290932

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