歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

科学者ほど騙されやすい

今回は、「反オカルト論」(2021年)を読みました。

 

私はスピリチュアル系の本も大好きなのですが、本書はそれを叩き潰すために書かれたかのような(笑)、事実と科学的思考に基づいて書かれた本です。特に、科学者や医者がオカルト論やスピリチュアルにまんまとのめり込んでしまうことを指摘し、私たちの目を覚まさせてくれる(?)内容になっています。

私個人としては、死後の世界はある、アニータさんの言っていることは本当だったと未だ信じていますが、過去記事「怪しい水を見破る科学リテラシー」と同様、明らかになっている事実を見極め、何でもかんでも信じて騙されないよう、学んだことをまとめたいと思います。

 

ddh-book.hatenablog.com

 

 

フォックス姉妹

 

1847年の暮れ、フォックス一家が引っ越してきた家で奇妙なことが起こります。当時14歳のマーガレットと11歳のケイトがベッドに入ると、どこからともなくコツコツと木を叩くような音がするのです。両親は、幽霊屋敷に引っ越したかと思ったそうですが、しばらくすると、姉妹がその音と交信できると言い始めます。

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姉妹が「私たちの言うことがわかったら返事してね。イエスなら1回、ノーなら2回音を立てて」と言うと、コツンと1回音が鳴り、「あなたは生きているの?」と言うと2回、「死んでいるの?」と言うと1回返事があったというのです。 フォックス姉妹は、「死者の霊と交信できる霊能者」として評判になり、これはスピリチュアリズムの起源と言われています。ところが、40年後の1888年になって、マーガレットが「人々を騙して後悔している」と告白し謝罪しているのだそうです。(詳細は是非本書を読んで!)

足の指を鳴らして、音を出していたというのを実演して見せたのにも関わらず、日本ではこの事実を知らずにいまだに信じている人がいるということでした。

 

 

超能力・心理現象研究

 

超能力に関する研究も数々行われてきましたが、知識人ほどこの手の手品に騙されやすい傾向があるようです。「理性的」で名高い名探偵シャーロック・ホームズを生み出した作家であり医師でもあるコナン・ドイル、原子タリウムを発見したウィリアム・クルックス、ノーベル生理学・医学賞を受賞したシャルル・リシェのような、当時のいわゆる「理系」の「一流知識人」が、現代から考えたらバカげているとしか思えないようなトリックに、あっけなく騙されてしまった例が詳しく書かれています。

デューク大学の心理学者ジョセフ・ラインは、最初に統計的な超能力実験を行い、1934年に「第六感」の存在を主張する『超感覚的知覚』(ESP)を著し、ブームとなりました。統計的な偶然性を排除するためには、大量のサンプルが必要ですが、それは難しく、被験者の「集中力」の度合いによって実験結果が変化してしまいます。 これは「目撃抑制」とか「恥ずかしがり効果」と呼ばれ、ESP現象に肯定的な被験者であるほど実験結果は肯定的になり、否定的な被験者では否定的な実験結果になるそうです。

1979年にはマクドネル・ダグラス航空株式会社の会長ジェイムズ・マクドネルがワシントン大学に「マクドネル超心理学研究所」を設立し、超能力の研究を行います。ところが、この研究は奇術師ランディの弟子による潜入作戦「プロジェクト・アルファ」にまんまと騙されていたという結果だったそうです。

 

 

 

著者さんは、小保方晴子氏が最初の記者会見で「夢の若返りの可能性があります」と言ったときから、怪しいなと感じていたそうですが、今やSTAP事件は「世界三大研究不正」の一つにまで数えられています。

彼女は記者会見で瞬きもせずに一点を凝視して「STAP細胞はあります」と断定し、「200回以上」作製したと平気で断言しています。これは、心霊家や奇術師たちが使うのと同じ手法であり、彼女の周りにはお花畑思考に染められたオジさんたちが未だに疑いを持たない状態を揶揄しています。

 

 

矢作直樹氏

 

また、矢作直樹氏の「人は死なない」や東京大学医学部での未来医療研究会における活動も、もっと社会的影響を十分配慮すべきだとメスを入れます。

 

 

私は大好きなのですが、池田クリニック院長の池川明氏が2008年に出した「胎内記憶」やその後映画になった「かみさまとのやくそくー胎内記憶を語る子どもたち」(上映会が矢作氏が顧問を務める未来医療研究会主催で行われた)も、奇妙な主張や霊感商法の類と変わらないのではないかと懐疑的な意見でした。

 

 

 

まとめ

 

本書を読んで分かったことは、「本物は断定はしない・できない」ということです。歯科の領域でもそうですが、知れば知るほど物事というのは複雑であり、例えば、「姿勢が悪いから歯並びが悪くなる」とは断定できないのです。私も歯科衛生士として専門的なことを聞かれた時、どうしても断定はできないので、正直、歯切れが悪いな~と思いながら答えるしかなく、もどかしさも感じていました。しかし、これを断定してしまうようになり、そのことで周囲に注目されてしまうと詐欺師に一歩足を踏み入れるということになってしまうのだということがよく分かりました。

今後は、断定し過ぎる専門家には懐疑心を持ち、安易に断定しない専門家の話をよく聞くようにしようと思いました。

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