お地蔵様と閻魔大王、小野篁
お地蔵さまは、とりわけ子供たちを様々な苦難から守ってくれる仏として、
民間の間でも親しく信仰の対象になってきたが、
末法思想と並行して流布した「十王信仰」では、
冥界において亡くなった人々の「審判」を行う閻魔大王と同一視され、
『江談抄』『今昔物語集』『元亨釈書』などの古典にも、
閻魔大王にまつわる物語が採録されている。
その中でも特に目を惹く記述が九世紀の宮廷人小野篁(802~853)にまつわるもので、
藤原高藤が急死した時、篁によって冥土から生還した
病死した藤原良相が、篁が閻魔王に嘆願して蘇生することができた
などと言う奇怪な「伝承」が残されている。
元来、仏教などで地蔵菩薩は、釈迦が入滅した後、弥勒菩薩が現われるまでの間、
釈迦に「代わって」、「六道」すべての衆生を救うとされる存在だから、
「地獄」に落ちた者でも救ってくれる(だろう)という思いから、
鬼より怖い閻魔様と「同一」と看做されるように昇華したのかも知れない。
小野篁は、例の美人・小野小町とも縁のある人物だとされてきたが、
秀才と言われる一方で「野狂」とも揶揄された彼が、何故、
地獄の閻魔と一緒に仕事をしたのか。理由は不明だ。
楽しく歴史や文学に親しみましょう
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