2025-01

2024・12・10(火)イザベル・ファウストのモーツァルト(1)

       東京オペラシティ コンサートホール  7時

 ヒラリー・ハーンは来られなかったけれど、イザベル・ファウストは予定通り来日し、ジョヴァンニ・アントニーニ指揮するイル・ジャルディーノ・アルモニコとともに、モーツァルトの「ヴァイオリン協奏曲全曲演奏会」を開始してくれた。今日は第1回で、演奏されたのは協奏曲の「第1番」と「第3番」、休憩を挟んで「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」と、協奏曲の「第4番」。

 聴いた席が2階正面だったせいか、それともイザベル・ファウストが抑制気味に弾いていたのか(そんなことはないだろうが)、前半は彼女の音がオーケストラの中に少し埋もれ気味なのが気になったが、休憩後の「4番」では均衡が取り戻され、演奏にも強いエネルギーが漲っているのが感じられるに至った。だが、この問題は、明日の演奏会を聴いてから判断した方がよさそうだ。

 とにかく「1番」にしろ「3番」にしろ、9年前に彼女が同じ指揮者、同じオケと録音したCD(ハルモニア・ムンディKKC-5691)と比較すると、何かひとつ音楽の芯が定まらぬような印象を拭えなかったが━━これは聴いた位置の関係だろう。アンドレアス・シュタイアーが彼女のために書いたカデンツァにしても、CDで聴いた時にはもっと切り裂くように鋭い曲想という印象だったが。

 イル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏の方は、ピリオド楽器特有の音のけば立ちがナマで迫って来て、そのCDで聴くよりも遥かに凄い。「1番」では、イザベル・ファウストのソロ・ヴァイオリンが可憐(!)に聞こえたほどである。
 「3番」では、ホルンを筆頭に管楽器群のアクセントが強烈で、モーツァルトの音楽が牙をむいたような感の個所もあり、非常にスリリングでさえあった。こういう演奏を聴くと、このヴァイオリン協奏曲集が「ギャラント・スタイル」であるという既存の解説は、単に歴史的な意味しか持たなくなるだろう。

 アンコールでは、何と彼女も一緒に「ディヴェルティメントK136」の第3楽章を演奏、そのあとで「ヴァイオリン協奏曲第1番」の第3楽章を演奏したが、特にこの後者の演奏における意志力の強烈さと来たら、さっき一度演奏した曲とは別の曲にさえ感じられるほどだった。

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