2025-01

2021・11・21(日)みちのくオーケストラ巡礼記第4日 山形交響楽団

     山形テルサホール  3時

 みちのくオケ巡礼最終日の今日は、1972年に創立された山形交響楽団。常任指揮者に阪哲朗を擁している。
 なお、この楽団を全国区のオケに躍進させた功労者の飯森範親は、現在は芸術総監督というポストにあるが、創立50周年に当たる来年4月からは桂冠指揮者となることが発表されている。かりに村川千秋・黒岩英臣の時代を第1期、飯森の時代を第2期と数えるなら、山響はいよいよ阪哲朗を中心とする第3期の時代に突入することになる。

 今日はその阪哲朗の指揮するプログラムだ。芥川也寸志の「弦楽のための《トリプティーク》」、シベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」、ブラームスの「交響曲第4番」。協奏曲のソリストは辻彩奈。コンサートマスターは高橋和貴。

 阪と山響の演奏を聴くのは今年の2月以来だ。もちろん、それ以前からも何度か聴いているのだが、特に最近は、両者がつくる演奏に━━曲により多少の例外はあるにはしてもだが━━密度が目覚ましく濃くなって来ているように感じる。
 今日の3曲においても、緻密なアンサンブル、厳しく確固とした造形力、瑞々しい息づきなどの特徴が際立っていて、山響も今やこういう演奏をするようになったのか、と些か驚かされた。
 阪の指揮も素晴らしく思い切りのいい、スパッとした鮮やかな手捌きによる音楽構築といった感で、実は私は彼がこういう指揮をしたのを初めて聴いたような気がするのだが。

 「トリプティーク」などはその最たる例で、極めて見事なリズム感にあふれ、躍動感一杯の演奏となっていた。
 ブラームスの「4番」も同様、ロマン的な憂愁美よりは古典的な造型感に近い演奏にも感じられたが、オーケストラのしなやかな表情は少しも失われていないので、この曲の深々とした叙情美と強靭な情熱とが、充分に堪能できたと思う。

 だがそれ以上に今日の白眉は、辻彩奈をソリストに迎えたシベリウスのコンチェルトだったのではないか。
 彼女の演奏は、この2年ばかりの間にたびたび聴いているけれども、今日ほどその凄さを感じたことはなかった。これが24歳の女性の演奏かと驚かされるほど強靭な集中力で、この曲を堅固な構造体に組み立てて行く。しかも作品の各フレーズを生き生きと自然に、かつ多彩な艶のある表情と壮大なスケール感を以て歌って行くのだから、こちら聴き手は息を呑んで聞き惚れるばかりだ。
 とりわけ第2楽章と第3楽章は、見事な緊迫のソロだった。

 それに加え、彼女の演奏に呼応する阪哲朗と山響の気合が、これまた何とも凄まじかったのである。今日はこのシベリウスのコンチェルトに、私は圧倒された。

 すべて好天に恵まれた4日間、4つのオーケストラは全て晴れやかな印象を恵んでくれた。7時31分の「つばさ」で帰京。夜の東京は強い雨になっていた。タクシーに乗ろうと八重洲口の乗り場へ向かったら、恐ろしい長蛇の列。それではと反対側の丸の内口の乗り場に行くと、こちらは何と待ち客が1人も居らず、タクシー群が人待ち顔。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中