2025-01

2021・11・16(火)DOTオペラ公演 ヴェルディ:「アイーダ」

     ミューザ川崎シンフォニーホール  5時30分

 「DOT」とは、この公演のプロデューサー3人━━今日アイーダを歌った百々(ドド)あずさ、コレペティトゥールの小埜寺美樹、アムネリスを歌った鳥木弥生の3人からなるチームのことのようである。

 つまりこれは、熱心な音楽家たちによる自主制作オペラともいうべきもので、その意気は称賛されていい。ミューザ川崎のような大きな会場でそれをやるというのは、集客力からみても些か冒険ではないかと思われるのだが、それにもかかわらず衣装付きのセミステージ形式上演で中央突破を図るからには、それなりの裏付けがあってのことなのだろう。

 指揮は佐藤光、演出と振付が山口将太朗。小編成の管弦楽は「アイーダ凱旋オーケストラ」(コンサートマスター後藤龍伸)、合唱はCoro trionfo。
 キャストは、百々あずさ(アイーダ)、村上敏明(ラダメス)、鳥木弥生(アムネリス)、高橋洋介(アモナズロ)、松中哲平(エジプト国王)、伊藤貴之(ランフィス)、やまもとかよ(巫女)、所谷直生(伝令)という顔ぶれ。またダンサーは5人がクレジットされていて、原作のバレエ場面のほかに、ラストシーンの地下墓場の場面での幻想的な動きをも受け持っている。

 アイーダ・トランペットは2階席両側に各2本ずつ配置されて、これは立派な演奏をしてくれた。
 本隊のオーケストラはステージ中央に位置し、小編成の弦と、他にティンパニとピアノとシンセサイザーという編成。つまり管楽器パートが概してピアノで演奏されるという編曲が施されているわけで━━苦心してリダクションしたであろう編曲者には失礼ながら、これはピアノ・リハーサルならそれなりに割り切って聴けようが、弦とピアノが同時に鳴るというのは、少しでも原曲を知っている聴き手にとってはいかにも不自然な音色で、違和感満載というところだ。

 バックステージでのバンダはシンセサイザーで代用され、これはまあアイディアだろう。合唱はオルガン下の客席とその両翼客席に分かれて配置されていて、東響コーラスのメンバーがメインだそうだが、かなり多い人数の割には、音量は小さい。

 ソロ歌手陣は、一部を除いて技術的にも安定した歌唱を聴かせてくれた。特に村上敏明が力強い直線的な声で若き勇士の性格を率直に描き、また鳥木弥生も聴かせどころの第4幕「苦悩するアムネリス」を滋味豊かに表現していた。伊藤貴之の威圧感にあふれたランフィスも見事な存在感であったろう。高橋洋介のアモナズロ王もいい。題名役の百々あずさは、声のパワーはなかなかのものだが、力任せに歌うという印象は拭えず、もう少し丁寧な歌い方を望みたいところだ。

 なお、演技空間はオーケストラの周囲に設定されていたが、かんじんの演出の方は旧態依然のスタイルで、演技も全くの類型的な身振りというレベルにとどまっていた。8時半終演。

 「アイーダ」のナマは3年ぶり。久しぶりに聴くと、やはりいいオペラだ。やはり素晴らしい音楽である。聴きながら、このオペラの音楽に身も心も浸りこんだ第3回イタリアオペラ来日時の、落成して間もない東京文化会館でマリオ・デル・モナコとジュリエッタ・シミオナートが繰り広げた息詰まる対決の熱唱を思い出した。あれは、ちょうど60年前。

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