2025-01

2015・7・31(金)日下紗矢子「ヴァイオリンの地平2」

    トッパンホール  7時

 ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団第1コンサートマスターと読響コンサートマスターを兼任、ベルリン・コンツェルトハウス室内管弦楽団のリーダーをも務める日下紗矢子のリサイタル。

 協演のピアノはマーティン・ヘルムヘン。
 プログラムは、モーツァルトの「ソナタ ハ長調K303」、ベートーヴェンの「ソナタ第4番イ短調」、パガニーニの「カプリース」から「第9番」と「第24番」、モーツァルトの「ソナタ イ長調K526」、シューベルトの「ロンド ロ短調D895」、という、多彩で起伏の大きな、個性的なものだった。

 前半でも後半でも、古典派の作品からロマン派の作品へ移行するという曲目構成。それも面白いが、そこで聴かせる彼女の多彩な表現の変化、各作品における鮮やかな性格の対比も、また非常に凄いものがあった。同じモーツァルトのソナタでも、9年の間隔を置いて作曲された2曲の性格の違いを、見事に描き出す。

 特に第1部では、モーツァルトからベートーヴェンを経てパガニーニの魔性的な狂乱へと変化させるその表現の精緻さに圧倒される。そして第2部では、再びモーツァルトの世界(このK526のソナタでの演奏が不思議に艶めかしい)に戻ってから入ったシューベルトの「ロンド」の、悪魔的な暗黒の怒涛━━ヘルムヘンの激烈な轟々たるピアノと、それに一歩も引かず屹立し、身を翻すといった自在の演奏。目を閉じて聴いていると、巨大な闇が襲いかかって来るような幻想に引き込まれ、底知れぬ恐怖感に引き込まれたほどである。

 ほっそりした体躯のどこからあのような強靭な音楽が生まれるのか━━。しかも彼女は、いわゆるコンサートマスターにありがちな、アンサンブルのみを重視した模範的で整然とした演奏スタイルなどとは、全く違った弾き方をする人だ。凄い人である。

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