2025-01

2012・2・25(土)ユベール・スダーン指揮東京交響楽団

   サントリーホール  6時

 オペラシティの読響の演奏会は4時に終演。サントリーホールの開演時刻には充分すぎるほどに間に合う。

 こちら東京交響楽団は、モーツァルトの「ヴァイオリン協奏曲第5番 トルコ風」とシェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」を組み合わせたプログラムの定期。

 ステージの東響の楽員たちの顔が何か打ち沈んだ表情で、カーテンコールでも異様に暗い雰囲気が感じられたので不思議に思っていたのだが、聞けば楽員の一人であるチェロ奏者の鷹栖光昭さんがガンのために53歳で今朝他界したということなのであった。事務局に訊くと、「腰が痛い」と言って1月に入院したが、それがガンと判明したあとは、既に手の施しようがなかったとのことである。個人的には存じ上げないが、ご冥福を祈る。

 終演後に楽屋で会ったスダーンも、演奏の話などそっちのけで「ショックだ、ショックだ」と繰り返していた。
 彼は「ペレアスとメリザンド」のあとのカーテンコールでの拍手を途中で制止して聴衆にそれを告げ、シェーンベルクの初期の美しい小品「ノットゥルノ」を最後に演奏した。ただ、マイクを使わずに話したため、私の座っていた2階正面からも話は半分しか聞き取れず、それゆえその演奏に対し2階席後方からブラヴォーの声が飛んでしまったのも仕方のないことだろう。

 そういうことのあった定期だったが、しかし「ペレアスとメリザンド」の演奏は、立派だった。
 いつぞやカンブルランと読響が聴かせた演奏も、この曲の官能性を引き出した快演だったが、今夜のスダーン=東響のそれは、むしろ作品の堅固な構築性を核としたアプローチで、その厳しい剛直な組み立てを通じて精神の内的構造を探り出すといったタイプの演奏である。スダーンがこれまで指揮した一連のシェーンベルクは、多かれ少なかれそのような特徴を備えていたが、この曲のような大編成で長大で大掛かりな作品では、それが最大限に発揮されるだろう。
 最初から最後まで、重苦しいほど隙のない形式感が演奏に満ちていて、聴き手はシェーンベルクの強面な個性を否応なしに受け入れざるを得ない――という気持にしてしまうスダーンの、相変わらず見事な指揮であった。

 最初の協奏曲の方は、スダーンの歯切れのいいリズム感が快い。
 ソロは韓国出身の若手美女パク・ヘユン。2009年にミュンヘン国際音楽コンクールに史上最年少優勝を飾ったヴァイオリニストだが、――今日の演奏を聴く限りでは、アンコールでのバッハを含め、まだ音楽が形だけに留まるといった感だ。大変な売れっ子のようだが、勉強する時間をたくさん持って貰いたいもの。

 なお前記の「ハープと弦楽器のためのノットゥルノ」の楽譜は、作曲者の子息から東響に贈与寄付されたものの由。

     モーストリークラシック5月号 公演Reviews
 

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