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50年前の副業率は今と同じくらいの7%!昔と今の副業にはどんな違いがある?

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50年前の副業率は今と同じくらいの7%!昔と今の副業にはどんな違いがある?

近年、生活費や将来の不安に備えるため、副業を希望する人が増加しています。また、収入を補うだけでなく、新たなスキルを身につけたり、趣味を活かしたりする場としても注目されているようです。

そんな副業に関するさまざまな情報を紹介してきました。今回は「最近、副業が盛り上がっている」という話は本当に最近だけなのか、逆に言えば副業は昔、存在しなかったのか、その辺を振り返ってみました。

50年前の副業率は7%弱

bizSPA!では過去に、現代ビジネスマンの副業に対する関心が高いというデータを、繰り返し紹介してきました。

副業を実際にしている人の割合も、調査結果によって数値こそ異なるものの8%くらいから、もっと高い数字が出ているケースもあります。しかも、その割合は年々増加しているのですから、「盛り上がっている」との言葉は間違いではなさそう。

ただ、本当に、最近だけの話なのでしょうか。調べてみると昔にも、それなりに副業が珍しくない時代はあったみたいです。

例えば、総務省の「就業構造基本調査」をまとめた商工金融の資料によると、今から50年前の1974年、有業者(本業がある人)の副業率は全体で7%弱とされています。

現在が8%だとすれば、大差はありません。

その後、副業率は、2000年代に向けて下がり続けて、2012年には4%を下回るくらいまで落ち込むものの、「最近、副業が盛り上がっている」のではなく「定期的に、副業は盛り上がる」といったほうが正しいのかもしれませんね。

兼業の自由度が高い人が50年前は多かった

50年前に、今と同じくらいの副業率が高かったのは、どうしてでしょうか。

その背景には、就業構造の違いが存在したといわれています。50年前は、有業者(本業のある人)のうち雇用者の割合が7割弱でした。言い換えると、どこかに雇われて働いている人たちが7割弱だったのです。

それよりも前(1960年)は、雇用者の割合が6割弱でした。要するに今より、自営業者や家族経営のお店で働く人(家族従業者)が多い世の中が存在していたといえます。

当然、自営業者や家族経営の事業所で働く人のほうが、雇用者よりも兼業の自由度は高いケースが一般的です。

50年前は、家業をやりつつ副業(兼業)もやってと、今より柔軟な働き方をしていた人たちが珍しくなかったのですね。

長引く不況、物価高で副業者が増えている

では、勤め人が、圧倒的な多数のボリュームを占める現代で、また、どうして副業が盛り上がってきたのでしょうか。現在の雇用者の割合(会社勤めなど)は、2023年のデータで9割に達しています。

ただ、雇用者が増えたといっても、そのうち4割弱が非正規従業員(パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など)です。正規従業員と非正規従業員を合わせた雇用者の割合は(過去10年ほど変わっていないものの)、1990年代以前と比べるとかなり多くなっています。

正規従業員と非正規従業員では、兼業の自由度が異なります。当然、非正規従業員のほうが兼業の自由度が一般的に高く、その非正規従業員の多さが、現代の副業率を押し上げる一因になっていると労働政策研究・研修機構が指摘しています。

また、長引く経済成長の停滞、最近の物価高の影響で、生活が苦しいという実情も今は重なっています。

兼業の自由度が一般に高くない正規従業員の中でも、副業への関心が高まり、全体の副業率を押し上げる強い要因になっているとも考えられています。

先日の総選挙の結果を受けて、政治の変化も期待したいですが、時代の流れを考えると、正規従業員であってもいよいよ、副業がひとごとではない状況になってきました。

その意味で、一獲千金というタイプの副業ではなく、月数万円など、堅実な副業をリサーチするくらいはやっておいたほうが、安心かもしれませんね。

[文・坂本正敬]

[参考]
※ 有業者の副業保有率 – 商工金融
※ 働く場(職場)の変化 – 厚生労働省
マイナビライフキャリア実態調査2024年(ライフ編) – マイナビ
※ 副業・兼業に係る実態把握の内容等について – 厚生労働省
副業の実態調査【最新版】 – doda
※ 労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)平均結果の概要 – 総務省
※ 「非正規雇用」の現状と課題 – 厚生労働省
※ 副業者の就労に関する調査」 – 労働政策研究・研修機構

〈bizSPA!〉元編集長。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉創刊編集長。国内外の媒体に日本語と英語で寄稿し、翻訳家としては訳書もある。技能五輪国際大会における日本代表選手の通訳を直近で務める。東証プライム上場企業の社内報や教育機関の広報誌でも編集長を兼務しており、広報誌の全国大会では受賞経験もあり。

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