ジョブチューンの“パンケーキ問題 ”。「ロイホ歴30年」の筆者が思ったこと
言葉以上に辛辣だったのは、表情やしぐさ
審査員の料理人はミシュランで星を獲得するほどの実力者ですから、そんな影響力を持った彼らが何度も顔をしかめる表情、愛を感じない冷静な指摘ぶりを重ねた映像は、不用意にマイナス方向に増幅されてしまう可能性があります。
そして極めつけは、ロイホ側の5秒超の絶句シーン。総料理長と企画・開発担当がコメントを控えてしまったシーンは、視聴者として目を覆いたくなる場面でもありました。私は疑問です。
ロイホの伝統や歴史を丁寧に温めてきた総料理長たちが不安そうにする顔、残念がる顔を見て、喜ぶ視聴者はいるのでしょうか?
今回の問題の本質は?ダメージは誰が負ったのか?
「おいしくない」を言うことは、覚悟が必要だ。これは、今回のような食に関する炎上問題における私の基本的な考え方です。今回のパンケーキ問題は、ジョブチューンの視聴者やロイホファンのみならず、外食を愛する多くの人々に“例えようのない不快感”を与えてしまった可能性があります。
ミシュランで星を獲得する実力は確かに素晴らしくはあるけれど、どんなに実力があったとしても、他店についてマスメディアを通してジャッジする権利・身分を獲得したわけではありません。それはプロの料理人も認識しているはずです。
にもかかわらず同じような悲劇はたびたび起こってしまうのはなぜなのか? テレビやSNSのパワーについて、今1度再確認できるきっかけになったことは事実ですが、本質はもっとシンプルなのかもしれません。
今回の問題は、ヒトが誰かのために作った料理に対して、どう感じて、どう表現すべきなのか? この根本的な視点について、もっと慎重に、もっと大切にしていくことを気づかせてくれているように思います。とにかくいかなる手段であっても、私たちの日々の食生活が不用意に脅かされないことを、心から祈っています。
<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>