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Luupの電動三輪車、高齢者が利用時の事故リスクは?同社に聞いた…「免許返納後の足として期待」

2025.08.10 2025.08.09 13:15 企業
Luupの公式YouTubeチャンネルより
Luupの公式YouTubeチャンネルより

●この記事のポイント
・Luupは小型の電動三輪車「Unimo」を発表
・「社会課題の解決に資するマイクロモビリティは、高齢者も含めてさらに幅広い方々が使えるものでなければなりません」と説明
・「幅広い世代が取り扱える走行時・静止時の安定性」「身体的負担が少なく移動可能」が特徴

 電動キックボード・電動アシスト自転車シェアリング事業を運営するLuupは5日、小型の電動三輪車「Unimo」を発表した。Luupは「LUUPの車両は、20~50代まで多くの方々に使っていただいておりますが、社会課題の解決に資するマイクロモビリティは、高齢者も含めてさらに幅広い方々が使えるものでなければなりません」「(特定小型原付は)免許返納後の足や幅広い方々の短距離移動手段として、交通空白を埋める役割を担うことが期待されます」としており、60代以上の高齢者の利用も想定したものとみられる。Luupは、公共交通網の衰退が進む地方で住民の移動手段として利用する実証実験が進み、また、7月には鉄道網が弱い沖縄県で観光客の移動ニーズを満たすために提供が開始されるなど、社会的課題を解決する手段として注目されている。一方、16歳以上であれば免許が不要で乗車可能な電動キックボード(特定小型原動機付自転車)の事故の急増が問題視されており、サービス運営事業者は対策を迫られている。Unimoの利用に伴う事故発生リスクへの対応、そして今後のサービス提供開始に向けたロードマップについて、Luupに取材した。

●目次

交通空白を埋める役割を担う

 21都道府県、合計62市区町村で展開されているLuupは、ポート数は1万4500カ所以上、アプリダウンロード数は450万以上。基本料金50円(税込)に1分あたり15~20円の時間料金で利用できる(一部地域を除く)。月額980円のサブスクプラン(ライド料金として30分ごとに200円)や、3時間・12時間乗り放題プランもある。専用アプリをダウンロードして氏名、クレジットカード情報、運転免許証などの登録、交通ルールテストへの合格などが必要で、アプリで近くにあるポートを探して二輪車に乗り、目的地のポートで返却するというシンプルな流れ。電動キックボードと電動アシスト自転車の2タイプがあり、今年秋以降には電動シートボードの導入も予定されている。

 そのLuupの新たなラインナップとして小型の電動三輪車・Unimoが加わる。Unimoを開発・発売するに至った背景について、Luupは次のように説明する。

「Luupは、創業当初から、年齢や性別等の違いにかかわらず、できるだけ多くの方々が利用できるユニバーサルな車両こそが、マイクロモビリティが公共交通サービスとして普及し、社会課題の解決に貢献するために必要だと考えてまいりました。2018年の創業以来、開発の機会を模索しておりましたが、技術パートナーである株式会社アイシン様、デザインパートナーである株式会社GKダイナミックス様との出会いを経て、実現に至りました」

 機能としては、どのような特徴を持つのか。

「Unimoは、運転技術を問わずあらゆる方にご利用いただけることを目指した三輪・小型のユニバーサルカーです。『特定小型原動機付自転車』に区分され、地方部はもちろん高齢者の地域の足の問題が見過ごされがちな都市部においても、免許返納後の足や幅広い方々の移動手段として、交通空白を埋める役割を担うことが期待されます。

 主な特徴は以下の通りです。詳細はプレスリリースをご覧ください。

(1)幅広い世代が取り扱える走行時・静止時の安定性
 三輪・座席付きにすることで、高い安定性を実現しました。

(2)身体的負担が少なく移動可能
 株式会社アイシンが開発した、『リーンアシスト制御』を搭載しています。車速とハンドル角等の情報に基づき、車体の傾斜角を制御することで、二輪車並の幅の狭い車両においても高い走行安定性を実現できる技術です。走行状況のデータをリアルタイムにキャッチし、それに応じて制御・アシストを行うことで、車両の姿勢を安定させます。そうすることで、年齢を問わず、安心して運転することが可能です。

(3)若者から高齢者まで分け隔てなく乗りたいと思っていただけるユニバーサルなデザイン
 年齢・性別・体格などにかかわらず乗りたいと感じていただけるように、ユニバーサルカーを体現するスタイリッシュなデザインを目指しました。

(4)アプリと連動し、利用者に合わせて最高速度や走行補助機能をパーソナライズ可能
 ソフトウェアアプリと連動しているため、常にアップデートさせ、利用者に合わせて乗り心地や安全制御機能などをパーソナライズすることができます」(Luup)

日本の社会課題を解決する

 8月5日の会見でLuupの岡井大輝CEOは「現在の主な利用者は20代から50代」「創業時から、若者から高齢者まで、すべての人の移動課題を解決することを目指してきました」と語っていることもあり、Unimo投入は60代以上の高齢者ユーザー獲得のための施策だという見方もある。

「Luupとしては、『ユーザー獲得の施策』というようなマーケティングや事業拡大のための製品やプロジェクトではなく、幅広い世代の方の移動に関する課題や交通空白という日本の社会課題を解決するためにUnimoを開発いたしました。また、前提として、あくまで今回発表させていただいたのはコンセプトモデルであり、今すぐサービスに導入するものではございません」(Luup)

 会見ではシニア男性が登壇して実際にUnimoに乗る様子も披露されたが、気になるのは、その安全性だ。

「ご高齢の方の運転においては、若年層とは異なる傾向やリスクがあるのは当然だと考えているため、今後実証実験や想定利用者の方々の試乗会等を通じて、安全性や利便性等に関するデータを収集し、交通ルール啓発やサポート体制のあり方についても検討を重ね、安全・快適に利用いただけるサービスにしていきたいと考えております」(Luup)

 現時点でUnimoの導入台数の目標や料金プランなどは未定。まずは試乗会などを通じて多くの人にUnimoを体験してもらう機会を設けていく考えだという。

「2026年度中を目途に複数地域で実証実験を行い、シェアリングサービスへの本格導入を目指します。将来的にはできるだけ多くの、移動課題を抱える地域に届けていきたいと考えております」(Luup)

 マーケティング支援会社のプロデューサーはいう。

「Luupとしては現段階では、高齢層にも利用拡大していく可能性を模索し始めたというかたちであり、企業としてより広いユーザ層にリーチしていこうと考えるのは当然です。今後の実証実験などを通じて、実際にUnimoを提供できるかどうかを探っていくのでしょうが、電動キックボードの事故件数は増えているので、かなり慎重に進めていくことになるでしょう。今後Luupがどこまで地方にまで提供エリアを広げていくのかは分からないが、特に地方では電車・バス路線数の削減などで高齢者が移動の足を確保しにくくなっており、移動の選択肢が増えるというのは社会的にメリットがあるといえるでしょう」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)