人間が百歳まで生きられるかどうかについてはさておき、百年というと長いと思うかもしれないが、日数にしてみると36500日だ。少し現実的な数値に思える。
Excelの行は確か65536行まで追加可能だ。もちろんこれは理論値で、実際は文字数などによって追加がこれ以上できなくなるということもあるだろうが、それでも、1日を1行としたときに、100年分は余裕で入る。
試しに自分の生まれた日から今日までの日にちを並べてみた。圧巻である。
自分の人生の日程を、全てこの一つのファイルに収めることが出来る。
『嬉しい』と思うのは、どこかで過去の自分を振り返りたい、出来れば簡潔にそれをまとめたい、と思う自分がいるからだろう。
パソコンが無い時代、自分史を作ろうとすれば、それは膨大な紙との戦いになる。しかも、全体を俯瞰するだけでも、物凄く重労働だ。
だから大勢の人は、自分の過去の人生を、『記憶という雲に包まれた、巨大であいまいなもの』として抱えていたんじゃないだろうか。そしてその巨大な曖昧さを抱えたまま死んでいく。
そういった意味では、命や原理に対して、昔の人は諦観を抱きやすかったのではないだろうか。
今はパソコンで何でも管理できる。人間の一生の記録も。好きなときに開いて、自分が十七年前の三月九日九時二十三分に何をしていたかを検索して知ることが出来る。(記録していればの話だが)全体を軽く俯瞰してニヤニヤすることも出来る。
単純に良い時代になったと思う。僕も死が近づく年齢になったら、エクセルで自分史を作り始めたい。少しずつ、魚の骨が取れるように記憶を思い出していくだろう。パズルのように自分の人生を埋める。それは永遠に片付かないデータの整理みたいで、かなり無駄で、ちょっと楽しい。